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推理SSの途中ですが、こっちが先に完成したのでUPします。
それではどうぞ。







「ああーーーーーーッ!!!!!」
 突然、素っ頓狂な声が部屋に響く。日頃の復習に余念のない縁寿は机に向かっていたが、突然の大声に驚き声のしたほうを振り向く。そこには冷蔵庫を茫然と見つめながら、固まっている詩音の姿があった。
「どうしたの?」
 縁寿は不思議そうに尋ねる。その問いに対し、詩音はポツリと呟いた。
「………………ない」
「え?」
「よくばりモンブランがないんです!!」
 そう言う詩音の顔は、なんとも言えない情けない顔をしていた。
「そんな! 夕食のデザートに食べようと思っていたのに……」
 この世の終わりのような顔をして、詩音はその場に崩れ落ちた。
「よくばりモンブランねえ……」
 縁寿はそう言って昨日の記憶を辿ってみた。

『いっただっきま~す♪』
『詩音、またケーキ食べるの? ここのところ毎日じゃない』
『ノンノンノン。ケーキじゃなくて、よくばりモンブランです』
『よくばりモンブラン?』
『ローゼン(学園内にある喫茶店)のモンブランはシュランクベルタのよくばりモンブランと比べても遜色ないですからね。そう名付けました』
『本当は違う名前があるでしょう……』
『いいんです、それで。私が決めました!』
『まあ、別に構わないけど。でも、毎日食べたら太るわよ』
『平気です。食べた分運動すればいいんですから。縁寿はどうですか?』
『私はいいわ。太りたくないもの』
『ふ~ん、おいしい物を食べておかないと後悔しますよ? ま、縁寿の分まで私が食べてあげます! モグモグ』
『太ったら、もっと後悔するわよ……』


「……っていう感じだったわね」
「しまったぁあああーーーー!!! 昨日のが最後でした!!」
「別にいいじゃない、一日ぐらい」
「嫌です! デザートがなきゃ晩御飯なんて食べません!!」
(何言ってるのかしら、この子は……?)
 子どものようなことを言っている詩音に、縁寿は半ば呆れてしまう。我の強い詩音であるが、ここまでとなると単なる我が儘だ。
「そんなこと言ったって、無いものはしょうがないでしょ。まさか本気で晩御飯食べないつもり?」
「今から買ってきます」
「今から!?」
 詩音の発言に縁寿は目を丸くする。
「何言ってるのよ、後いくらもしないうちに門限よ。間に合う訳ないじゃない」
「大丈夫ですよ、近道を使えばまだ間に合います」
 確かにいつも通る道ではなく、近道を使えば間に合わないことはない。しかし、それでも帰ってくるのは門限ギリギリだろう。今から外出などしない方が無難だろうが……。
「急げば大丈夫ですよ」
 詩音は早くも出かける準備をしている。今さら止めたところで無駄だろう。なにより、詩音は一度決めたことは頑として譲らない。縁寿はやれやれとため息をついた。
「仕方ないわね、夕飯までには帰ってくるのよ。寄り道なんかしたら駄目よ?」
「は~い、行ってきます♪」
 本当に門限までに帰って来れるのだろうか? 子どもの様な詩音を見送る縁寿は、何となく母親のようなおかしな気分だったとか。










そらのむこう 第5話

『対する二人』











「ありがとうございました~」
 店員の元気の良い挨拶を聞きながら、詩音は店の扉を潜った。カランカランと、心地良いベルの音が鳴り響く。いつもはこんな音、気にも留めないが今日はとても心地良く聞こえる。
 お目当てのモンブランが手に入り、詩音は上機嫌だった。ローゼンのケーキはいつも人気があり、買いに行っても品切れということが珍しくない。まして、今日のような休日ではなおさらだ。品切れと言うことも半ば覚悟していたが、幸い3つほど残っていた。おかげで今日も大好きなデザートにありつける。
「あ~、良かった♪ 運が良かったです、3つも残っているなんて。これも日頃の行いが良いからですね」
 シスターが聞いたら卒倒しそうな台詞を詩音は真顔で言う。シスターから見れば、詩音は学園始まって以来の問題児だが、当の本人にはその自覚は全くない。本来ならとっくに生徒指導室に連れて行かれてもおかしくないのだが、そうなる前に学園長から待ったが掛かる。何故、学園長が詩音のことを大目に見るのか教員の間では謎だったが、真相は本人たち以外知ることはないだろう。
「せっかく買ったんだから、今日は縁寿と一緒に食べますか」
 縁寿は体重を気にしているのか、最近はあまり甘いものを食べようとはしない。しかし、今日のケーキは苦労して手に入れたのだ、嫌とは言うまい。
「さあ、それじゃあ急ぎますか。門限に遅れたら縁寿にも迷惑が掛かりますからね」
 縁寿へのお土産を片手に、詩音は寮への道を小早に戻って行った。



 学生寮と学園敷地内の街への道は森に沿って舗装されている。そのため、街への道は一直線ではない。森に沿って迂回するように続いている。
 近道がないわけではないが、森の中を突っ切る道は舗装もされておらず、大抵の生徒は急いでいる時以外は使いたがらない。今日、詩音は急いでいる為たまたま使ったが、やはり人の気配は感じられない。
 時刻は夕暮れ。日も傾き始め、森の中は何とも言えない薄気味悪さをかもし出していた。
「……何だか不気味ですね、早く帰りますか」
 普段は周囲に豪胆に振舞っている詩音だが、やはり女の子。薄暗い森の中を一人で歩くのは怖かった。自分で買いに行くと決めた詩音だったが、今はほんの少し後悔していた。早く森の中を抜けられるよう、詩音は足早に進んでいった。

 薄暗い森の中、ザク、ザク、ザクと、詩音の足音が木霊する。自分が地面を踏みしめる音以外は何も聞こえない。森の中は静寂に包まれていた。耳をすませば、自分の心臓の音まで聞こえてきそうだった。夏の気配が残っているにも関わらず、森の中はひどく肌寒い感じがする。
「……気持ち悪いですね、早く抜けられないかな……」
 そうして、しばらく森の中を歩いていた詩音だったが、やがて何かに気づいた。
「ん? あれは…………?」
 詩音は歩みを止め、その先に目をやる。詩音が歩いている道はこの先で、森の奥へと続くもう一本の道と合流している。そして、そのもう一本の道を森の奥から、こちらの道へ向かって誰かが歩いている。



 整えられた顔立ち。流れるような白銀の髪。美しく長く伸びたその髪は、ゆうに腰まで届いている。



 森の奥から姿を現したのは詩音と犬猿の仲の人物、須磨寺雫だった。
「須磨寺じゃないですか。アイツ、何でこんな所に?」
 詩音は須磨寺が出てきた森の方に目を向ける。今、詩音が歩いている道でさえ、普段はほとんど人が通らない寂しい所だ。須磨寺がやってきた道は、さらに人気のない森の奥へと続いている。こんな所で彼女は一体何をしていたのだろうか?
「……このままだと鉢合わせになっちゃいますね……」
 詩音は何となく、須磨寺と顔を合わせづらかった。何故なら、先日詩音は須磨寺の部屋に無断で入ろうとしたからだ。その現場を当の本人に見られ、須磨寺の逆鱗に触れたのだ。
 以来、詩音は後ろめたさのせいもあり、どこか須磨寺を避けてきた。そして、今もこのままやり過ごそうか考えている。
「……う~ん、どうしますかね?」
 詩音はどうするべきか、その場でウロウロする。
「顔合わせたくないし、アイツがいなくなるのを待って―――――」
 そこまで言いかけて、詩音は思考を中断する。

 待て待て、なんで私が隠れるような真似しなくちゃいけないわけ?別にやましいことをしているわけじゃないし、こないだの事だってもう済んだことだし。私がコソコソする必要なんてない。隠れる必要なんてないんだから、堂々としてりゃいいじゃん。

 そう考えなおし、詩音は須磨寺の方へ歩いていった。
「何しているんですか、こんな所で?」
「―――――!!!」
 声を掛けられ、須磨寺はようやく詩音に気が付いた。
「さっき森の奥から出てきましたよね? あんな所で何をしていたんですか?」
 詩音は親しげに話しかける。普段は須磨寺に対しこんな話し方はしないのだが、まだあの時の事を気にしているのかもしれない。自分でも気がつかないうちに、詩音は須磨寺に気を使っていた。しかし―――――
「あなたには関係ないでしょう」
 露骨に不愉快そうな顔をして詩音を睨むと、須磨寺はそのまま去って行った。
「……………………」
 須磨寺の後ろ姿を詩音は黙ったまま見つめていた。しかし―――――



























「ム・カ・ツ・ク~!!」





 先程のしおらしい感じとは打って変わり、詩音は不満を隠しもせず不機嫌極まりない顔をしていた。
「せっかく人が友好的にしているのに何? あの態度!!? 腹立つううぅ~~~~~~!!!! 人が下手に出てりゃあ、偉そうにッ!!!! 名家の出身だか何だが知らないけどお高く止まりやがってッ!!!!」
 今まで大人しくしていた反動か、詩音の怒りボルテージはMAXだった! そこら辺にある草やら木の枝やらをぶち折って八つ当たりを始める始末。溜飲が下がるまでしばらくの間、詩音はその場で暴れまわっていた。
哀れな木々たちは為す術なく、詩音の怒りが収まるのを待つしかない。しかし、そんな中でもケーキだけはしっかりと死守する詩音だった。






「へえ、そんなことがあったの」
 食事を終え、デザートのケーキをつつきながら縁寿は詩音に聞いた。
「ええ、今思い出しても腹が立ちます! ホント、アッタマ来る!!」
 まだ怒りが収まらない詩音は、やけ食いのようにケーキを口に放りこんでいる。あれで味が分かるのか疑問だが、本人は気にしていないようだった。
「でも、そんな所で何をしていたのかしら? あんな所、何もないはずなのに……」
 縁寿は腑に落ちない顔をしてケーキを食べる手を止めた。確かに、森の奥など生徒はおろか業者の人間すら立ち入らない。一体彼女は何をしていたのだろうか?
「知りませんよ、そんなこと!」
 詩音は未だにぶつぶつ言いながらケーキを食べている。その様子を見ながら、縁寿は詩音に言う。
「少しは落ち着いたら? それ2つ目でしょ?」
「落ち着いていられますか! 食べなきゃやってられないです!」
 そう言って、詩音は2つ目のケーキを消費していく。
「……仕方ないわね」
 詩音の様子にため息をつきながらも、縁寿は止めはしない。本人が好きで食べているのだから、後のことは自己責任だ。縁寿は詩音とは対照的に、自分のペースでゆっくり食べている。その時、詩音が縁寿に声を掛けてきた。
「縁寿」
「何?」
 詩音は2つ目のケーキを食べ終わり、皿を置いて縁寿に尋ねる。
「それ、いらないなら食べてもいいですか?」
「……………まだ食べる気?」






 チュン、チュン、チュン。

 朝の静寂の中、心地良く小鳥たちのさえずりが聞こえる。
 まだまだ暑い夏の日々も、この時間だけは心地よく冷えており、昼間の暑さを忘れさせてくれる。やがて、心地よく冷えた朝の空気を切り裂くように、小鳥たちが木々から飛んでいく。
 窓の外で小鳥たちが元気に動き始めている中、詩音はまだベッドの中で幸せそうに眠っていた。カーテンの隙間から、柔らかな朝の光が部屋の中へ差し込んでくる。その光は、気持ちよく寝ている詩音の顔を優しく包み込む。
「んん……」
 朝の光に照らされた詩音は、わずかに身をよじり朝日から顔を逸らす。あとほんの少しでもいいから、眠っていたいと言っているようだ。
 しかし、ずっとこうしているわけにはいかない。いつまでたっても目を覚まさない同居人を起こすため、縁寿は詩音を起こしに来た。
「ほら詩音、いつまでも寝ているのよ。早く起きて」
「う~ん、まだいいじゃないですか……」
 縁寿が声を掛けるが、詩音は不快そうに顔を歪め再び眠りに就こうとする。
「何言ってるのよ、遅刻したいの?」
「ちゃんと起きますよ~……」
「そんなこと言っていつも寝てるじゃない。いいから起きなさいよ」
「お姉ぇ……、あと5分……」
「誰がお姉よ!! いい加減起きないと朝食片付けるわよ!!」
 いつまでもたっても起きない詩音に対し、とうとう縁寿は堪忍袋の緒が切れる。
「ふえ!? お、起きます、起きます! 片付けないで!」
 眠そうな目をこすりながら、ようやく詩音は目を覚ました。

「いただきま~す!」
 手早く着替えを済ませた詩音は、どうにか残してもらえた朝食にありつく。
 今朝の朝食はトーストに、ベーコンを乗せた目玉焼き、それにサラダと牛乳というシンプルなものだった。しかし、朝は手の込んだものよりこう言ったシンプルな食事の方が食は進む。もとより作ってもらった手前、文句などあるはずもなかった。
「すみません、縁寿。今日は私の当番なのに朝食作ってもらって。明日はちゃんと作りますから」
「はいはい、その台詞は聞き飽きたわ」
 縁寿は食後のコーヒーを飲みながら、適当に詩音に返事をする。今朝の食事当番は詩音だったが、彼女が寝坊をしたため今日は縁寿が作ることになった。ちなみ前回の当番の時も縁寿が朝食を作った。その前もだ。
「大丈夫ですよ、明日はちゃんと目覚ましセットしますから。ちゃんと起きれます!」
「目覚ましはこの間、詩音が寝ぼけて叩き壊したでしょ」
「……あれ? そうでしたっけ? あははははは……」
 縁寿に痛い所を突かれ、詩音は苦笑いをする。そんな詩音の態度にも縁寿は慣れたもの。こんなことはいつものことだ。いちいちこれくらいで目くじらを立てていたら、詩音の同居人は務まらない。
「あはははは……。あ、この目玉焼きおいしいです」
「それはどうも」
 縁寿は詩音の見え透いたお世辞も軽く受け流す。もう短くない時間を一緒に過ごしたのだ。彼女の扱い方はすでに分かっている。
 苦笑いをしながら朝食をとる詩音を横目で見ながら、先に食事を済ませた縁寿は優雅に食後のコーヒーを味わっていた。



「詩音に付き合っていたら、もうこんな時間じゃない。もっと早く起きないと」
「すみませ~ん、明日からちゃんと早起きしますから」
 なんだかんだ言いながらも、詩音に付き合っていた縁寿は一緒に部屋を出た。そのせいで二人はいつもより遅い登校となった。いつもならもっと多くの生徒が学校に向かっているが、流石にこの時間では歩いている生徒もまばらだ。
「あ~、今日は朝から数学か、たるいな~」
「仕方ないわよ。学生なんだから」
「それはそうですけど、数学なんて実社会でどう役に立つんですか?」
「役には立たないかもしれないけど、何かに向かって努力する姿勢は評価されると思うけど?」
「私には無理ですね~。どうせなら役に立つこと学びたいです」
 そうして二人はお喋りをしながら歩いている。そうこうしている内に、二人は教室の近くまで来ていた。
「それじゃあ詩音、また後で」
「はい、昼休みに」
 そうして縁寿は自分の教室に歩いていく。縁寿の姿を見送った後、詩音は教室に入った。



 扉を開け教室の中を見渡すと、すでにほとんどの生徒が揃っている。間に合ったとはいえ、かなり遅く来たのだから当然だった。しかし……。
「なんだ、私が最期じゃないんですね。余裕~~♪」
 などと、詩音はお気楽だ。彼女の辞書には反省という言葉はないらしい。余裕で教室に着いた詩音はのんびりと自分の席に腰掛ける。そこに、黒髪ショートの良く似合う女子が声を掛けてきた。詩音のクラスメートだ。
「おっはよ~、詩音!」
「おはようです。美咲は早いですね」
「詩音が遅すぎなのよ! アンタそんなんじゃ、そのうちシスターに生徒指導室に連れて行かれるよ?」
「大丈夫ですよ、早く来ようとギリギリに来ようと、遅刻じゃなきゃいいですから」
「はあ、コイツは……。まあ言っても無駄か」
「そうです。私に説教しようなんて100年早いです!」
「威張るな! ホントにアンタは自由人なんだから……」
 そう言い、美咲は詩音のフリーダムな生き方に頭を悩ませる。
「ああ、そうそう。美咲に聞きたいことがあるんですけど」
「ん? 何?」
「寮から街への近道で森を通るじゃないですか。あの森って、何かあるんですか?」
「何かって、何?」
「それが分からないから聞いてるんですけど……」
 詩音に尋ねられ、美咲はしばらくの間考え込む。
「う~ん、あの森に何か面白いものがあるなんて聞いたことないけど……。何でまた?」
「いや、昨日あの森に須磨寺がいたのを見かけたから、何でかな~って思って」
「ああ、あの人か」
「知っているんですか?」
 美咲は小さく頷く。
「まあね。この学園じゃ、あの人有名人だから。いっつも取り巻きを連れて歩いて、何か偉そうだし」
「そうそう、そんな感じです。いちいち人を見下すんですよ、あの女。あ~、思いだしたらだんだん腹立ってきた!」
「右代宮さんもあの人から陰湿なイジメ受けてたからね。結構エグイことしてたから、そう言う意味でも有名かも。でも、怖くて誰もそのこと口にできなかったし。知ってる? あの人の親、この学園に多額の寄付をしているらしくて、学園長も須磨寺さんには頭が上がらないんだって」
「へえ~、初めて知りました。でも、なんかそんな感じですよね」
 自分の知らない情報を美咲から聞き、詩音は納得したように頷く。
「まあ、それを快く思わない人も結構いるけどね。でも、何であの人右代宮さんのこと目の敵にするんだろ? 右代宮さんが学園に来る前からイジメっ子だったなんて聞かないけど……」
「ふん、知りませんよ。どうせ、縁寿をイジメて憂さ晴らししているだけでしょ」
 詩音は不愉快そうに呟く。
「でも私驚いたよ。学園長でも、おいそれと頭を上げることができない学園の女王に、初対面でいきなり喧嘩売ったなんて。最初聞いた時は耳を疑ったわ」
「まあ、私にかかれば学園の女王もそんなもんですよ。そのうち、この学園で天下取ります!」
「もっともアンタの場合、天下取る前に生徒指導室に連行されるだろうけど。なんせ、学園始まって以来の問題児だからね」
「う……、ここの教師たちの頭が固いだけですよ。私は普通に過ごしているだけですよ?」
「アンタの普通は世間一般じゃ非常識って言うのよ。知ってた?」
「あ~、うるさい。どうせ私は劣等生ですよ」
 そう言い、詩音は口を尖らせる。そんな詩音を見ながら、美咲はにやにや笑っていた。こうやって、お互い軽口を叩き合うのが二人の日常の風景。学園の生徒の中では、かなりフランクな美咲の性格もあって、二人はよく気が合っていた。
 何かと問題の多い詩音だったが、持ち前の明るさと行動力で、今ではすっかりクラスに溶け込んでいた。シスターの来るまでのわずかな時間、二人はそうやって朝の挨拶を交わしていた。







 遠くから鐘の音が聞こえてくる。午前の授業の終わりを告げる合図だ。シスターが鐘の音を聞き授業を終えると、皆一斉に立ち上がる。
「ん~~~! やっとお昼ごはんですね!」
 席から立ち上がると、詩音は気持ち良さそうに背伸びをする。お昼前のこの時間と、最後の授業終了は退屈な授業から解放される。詩音は一日の中でこの時間が最も好きだった。心地良い気分で食堂に行こうとする詩音に、美咲が声を掛けてきた。
「し~おん♪ お昼だよ、お昼! ご飯食べよ!」
「ごっめ~ん、美咲。私、お昼は縁寿と約束しているから」
「つれないなあ~、アンタいつも右代宮さんとごはん食べてるじゃん。だったら今度連れてきてよ。そうすりゃ、一緒に食べれるからさ♪」
「はい、そうします。その時は一緒に食べましょう」
「約束だよ。ちゃんと右代宮さんを連れてくること! みんな楽しみにしてるから」
「ええ。それじゃあ、また後で」
「午後の授業は余裕持って来なよ。シスターもそこまで寛大じゃないから。それじゃあ」
 そう言い、美咲はお弁当を持って中庭の方へ歩いて行った。
「そう言えば、みんなにはちゃんと縁寿を紹介してなかったな。これもいい機会ですね」
 今までは、須磨寺を恐れて縁寿に声を掛ける人はいなかったが今は違う。これを機に、縁寿もみんなと仲良くできるだろう。みんなとご飯を食べるのは何時にしようか? 楽しい想像をしながら、詩音は早くも考え始める。
「さあ、私も早く食堂に行きますか」
 あまり遅くなると縁寿を待たせてしまう。詩音は食堂に向かい歩き始めた。その時、廊下の向こうから、見覚えのある顔が見えた。
「…………げ、何でこんな所に……」
 廊下の向こうから歩いて来たのは須磨寺だった。向こうも詩音に気づいたのか、隙のない表情をさらに険しくする。
「……………」
「……………」
 しかし、どちらも引く気はない。互いにその顔を睨みながら、二人の距離はしだいに近づく。



 コツコツコツ。

 コツコツコツ



 両者の足音が廊下に響く。やがて、二人は手を伸ばせば届く距離まで近づき、そして―――――










 ―――――互いに無言ですれ違う。





 二人はそのまま、互いを無視するように歩いていく。二人とも、一切振り返ることなく去っていくかに思われた。しかし、その途中で詩音は後ろを振り向く。
 その視線の先、須磨寺は先程と何一つ変わらず歩いている。まるで、最初から詩音と会わなかったかのように。そして、須磨寺は一度も後ろを振り向くことなく去っていった。
「…………ふん、気に入らないですね」
 自分のことなど、始めから相手にしないかのような須磨寺の態度が気に入らなかった。
 その場で、詩音は須磨寺の背中を睨み続けていた。





 食堂に来る前にちょっとしたハプニングはあったが、詩音は約束通り食堂で縁寿と一緒に食事をしていた。仲良く食事を取っていた二人だったが、縁寿の口から出た言葉に詩音は驚いた。
「遅刻ぅ~~~!!? あの女が!!?」
「ええ、私も驚いたわ。あの人が遅刻なんて珍しい……、と言うか初めてね」
 成績優秀で、シスターからの評価も高い須磨寺が遅刻と聞いて、詩音は驚きを隠せなかった。
「クラスリーダーで生徒役員のあの完璧人間が遅刻ねえ……、何かありそうですね」
 スプーンを咥えながら、詩音は訝しげな顔をする。その時、詩音は自分に向かっている視線に気が付いた。
「ひょっとして、昨日のこと考えている?」
「ん? まあ、そうですね。あんな所で何やってたのかな~、って。遅刻したことと何か関係あるんですかね?」
 確かに、何もないようなあの場所に須磨寺がいたことは、不審と言えば不審だった。何か良からぬことでもしていたのでは? と詩音を考える。
 しかし、そんな詩音の考えを見透かしたように、縁寿はどこか白い目で詩音を見ていた。
「……プライベートなことだから、あまり深入りするのは良くないと思うけど……」
 縁寿のその発言に詩音はギクリとする。

 ……まさか、気付いている?

 先日、詩音は須磨寺の部屋に無断で入ろうとした。無論、そのことは縁寿には話していない。気付かれてはいないと思うが、縁寿はこう見えて勘が鋭い。ひょっとしたらとっくにバレているのか?
「わ、分かってますよ。いくら私でも他人のプライバシーまで侵すつもりはありません」
「そう? ならいいけど」
「そうですよ。私でも、それぐらいの物事の分別はついています。もぐもぐ」
 そう言いながら、詩音は2つ目のオムライスを頬張った。
「そうね、ならいいわ。ところで詩音」
「何ですか?」



















「あなた、少し太った?」











 鬱蒼とした森の中を詩音はとぼとぼと歩いていた。その足取りは重く、顔は下を向きうな垂れていた。
「うう~……。ヒドイです、縁寿……。私は太ってなんかいません。多分……、恐らく……」
 詩音は半ばベソをかきながら、一人歩いていた。縁寿に太ったと言われたのが相当ショックだったようだ。
 気付いた時は手遅れだった。食欲の思うままにご飯を平らげ、ケーキを貪っていたあの日々……。自分でも、まずいかなぁと思いつつ手を止められなかった。なるべく見ないようにはしていたが、よく見れば二の腕にはいつもより多めの……。
 あげくの果てに、縁寿に言われた言葉が―――――





―――――あなた、少し太った?―――――





「あああぁあああああぁあアアアアアアアッッ!!!!!」
 詩音は頭に手を当て、天を仰ぎ見る。
「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!!! 私の馬鹿!!! なんであんなに食べたのよ!!!」
 そして、過去を悔みながら、傍にあった木を悔しそうに叩く。
「いくらご飯がおいしいからって、4杯はないでしょう!? なんであんなに食べたのよ!!? しかもデザートにケーキを2つも3つも食べるなんて!!」
 詩音は悲しみを打ち消すように、木を叩き続けた。しかし、いくら叩こうとあの日々は帰ってこない……。帰って来たのは、体重プラス■キロと言う現実だけ……。
「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!」
 手で叩くだけでは飽き足らず、今度は頭を木に叩きつける。そうやって、しばらく頭を叩きつけていた詩音だったが、額が痛くなってきた辺りで止めた。そして顔を上げ、宣言する。
「こうなったらダイエットします! 太ったなんて絶対言わせません!!」
 縁寿を見返すため、詩音は拳を固め決意する。
「さあ、こんな事している場合じゃないですね。さっさと行きますか」
 ようやく、詩音は当初の目的を思い出す。詩音が何しに森に来たかと言うと……。
「アイツはこんな所で何をしていたのやら」
 そう、詩音は須磨寺が昨日ここで何をしていたか、突き止める為にやってきたのだ。

『わ、分かってますよ。いくら私でも他人のプライバシーまで侵すつもりはありません』

 分かっていなかった。詩音は縁寿の忠告など聞く耳持たず、授業が終わるなり此処にやってきたのだ。
「ま、此処はアイツの部屋と違って公共の場ですからね。私が来ても問題はないでしょ」
 などと言う始末。気になったことは自分の気の済むまで突き止めるのは、詩音の長所であり、悪癖でもあった。
 何か怪しいものはないかと、詩音は辺りを調べる。木立をかき分け、草むらを覗きこみ、しばらく辺りを調査する詩音だったが気になる所は何もない。
「う~ん、やっぱり何もないじゃないですか。アイツ何しに此処に来たわけ?」
 詩音は不思議そうに首を傾げる。何か面白いものがあると期待してやって来たのだが、それらしき物は何もなく、詩音は拍子抜けした。
「訳わかんないですね。もう帰りますか」
 何も見つからず、期待外れだった詩音は寮に戻ることにした。
「さ、早く帰って縁寿と買い物に―――――」




































 その時、何かが後ろ髪に触れたと思った瞬間、詩音は襟首を掴まれ思いっきり後ろに引っ張られた。



「――――――ッ?!!!!」



 容赦なく後ろに引っ張られた詩音は、そのまま受け身もとれず背中から地面に叩きつけられた。
 ドンッ!!! という派手な音と共に衝撃が背中から全身に伝わる。
「カハッッ!!!!!」
 あまりの衝撃に息が止まる。そして、次の瞬間激痛が詩音の背中を襲った。
「~~~~~~~~~ッ!!!!!!」
 背中を襲う激痛の為、思うように体が動かない。息を吸おうと口を開くが、完全にせり上がった横隔膜は詩音の肺を押せるだけ押し潰し、吸気を許そうとしない。
「うぐぐぅ…………」
 僅かに息をし、ようやく振り絞ったのは苦悶の声。痛めた背中に手を当てようとした瞬間、誰かが詩音の上に馬乗りなった。その時、詩音はようやく自分を地面に叩きつけた人物の顔を見た。














































「どこまで私を馬鹿にすれば気が済むの!! アンタはッ!!!」





 そこには、鬼の形相の須磨寺がいた。
「何処に隠したのッ!!? あの子たちをッ!!!!!」
 須磨寺は親の仇でも見るかのように、詩音を睨みつける。
「な、何訳わかんないこと言ってんですか!? そんなの私が知るわけ……、グッ!!!」
 詩音の抗議を聞き終わる前に、須磨寺はその襟首を掴み上げるとそのまま持ち上げ、再び詩音を地面に叩きつけた。
「ガッ!!!!」
「嘘おっしゃい!!! いい加減なこと言ってんじゃないわよ!!!!!」
 そう言うと、今度は詩音の髪を掴み上げる。
「痛!! 痛たた!!! 止めなさいよ!!!」
「アンタって人間は!!! 人の部屋に無断で入るだけじゃ物足りないってのッ?!!!」
 髪を引っ張られている詩音は堪ったものではない。須磨寺の手を掴み、髪から手を引き剥がそうとするが、ものすごい力で握られておりビクともしない。
「アンタみたいなのを人間のクズって言うのよ!!!!」
 その瞬間、詩音の堪忍袋の緒が切れた。
「………この、いい加減にしろォオオ!!! このクソアマァアアアアア!!!!!」
 直後、詩音をその場で大きく体を反らしブリッジをした。
「―――ッ!!?」
 次の瞬間、詩音の上に馬乗りになっていた須磨寺は前方へ大きくバランスを崩した。何とか手を前につき、転ぶのだけは免れたがその隙を詩音は見逃さない。
「さっさとどけ、コラァアアアアアーーーーーッ!!!!!」
 詩音はそう怒鳴りつけ、須磨寺の背中に思いっきり膝蹴りを喰らわせる。
「グッ!!」
 容赦なく背中を蹴られた須磨寺は、詩音の上から転げ落ちる。二・三度地面を転がった所でようやくその体は止まった。
「痛ぅう……!」
 激痛に顔を歪める須磨寺は地面の上で這いつくばる。なんとかその場から起き上がろうとするが背中に走る痛みの為、思うように体を動かすことができない。
「人が下手に出てりゃあ調子に乗りやがって!!!」
 須磨寺を蹴り飛ばした詩音はすぐさま起き上がり、須磨寺に飛びかかった。
「このクソアマァアア!!」
 すかさず須磨寺を仰向けに転がすと、今度は詩音が馬乗りになる。しかも、抵抗できないよう、詩音は須磨寺の両腕を上から思いっきり地面に抑え込む。形勢は完全に逆転。マウントポジションを取られた須磨寺は、文字通り手も足も出なかった。
「さっきから訳の分からないことをゴチャゴチャと!!! 私が一体何を隠したっての!? ええッ!!?」
 散々好き放題された詩音は今までの鬱憤を晴らすかの如く、須磨寺の腕をギリギリと押しつける。しかし、苦痛に顔を歪めながらも、須磨寺の詩音に対する敵意に満ちた眼差しは些かも緩まない。
「とぼけんじゃないわよ!! アンタ以外に誰がいるってのよ!!!!」
「コイツ!! まだ言うかッ!!!!」
 詩音は須磨寺の腕をさらに地面に押しつける。圧迫され続け、その腕はうっ血し、赤黒くなるが須磨寺は未だに抵抗を続ける。全体重を掛けて上から押さえているにも関わらず、須磨寺は信じられないような力で詩音の手を押し返そうとしてくる。何時までたっても抵抗を止めない須磨寺に、詩音は業を煮やす。
「この!! 殴られなきゃ分かんないわけ!!?」
「やれるもんなら、やってみなさいよ!!!」
 正に一触即発。完全に頭に血が昇っている二人は止まらなくなっていた。
 容赦なく腕を地面に押しつける詩音。渾身の力で腕を振りほどこうとする須磨寺。
 二人とも敵意をむき出しにして睨みあっている。次にどちらかが動けば、そのまま手を出しかねない。互いに二人は牽制しあい、そして―――――










「止めなさい!!!!!」










 その時、誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。二人が声のした方を振り向くと、そこにあったのはシスターの姿。
「淑女たるものが取っ組み合いの喧嘩など!! 何を考えているんですか、あなた達は!! 恥を知りなさいッ!!!」
 シスターは声を荒げ、二人を怒鳴りつける。シスターが怒るのも無理はない。今の二人の姿は、髪はグチャグチャに乱れ服は泥だらけ。おまけに頬や手は所々擦り切れている。栄えある聖ルチーア学園の生徒とは思えない。
「園崎さん! あなたはまた問題を起こすつもりですか!? これ以上騒ぐようなら、それなりの措置は取らせてもらいますよ!! 須磨寺さん、あなたもです!! クラスリーダーともあろう者が、一体何をしているんです!!?」
「先生! 先に喧嘩を売って来たのはコイツですよ!!」
「何ですって!!? アンタが悪いんでしょう!!!!」
 詩音の言い草に須磨寺は喰ってかかる。シスターが止めに入ったにも関わらず、二人は未だにいがみ合っていた。
「止めなさい!!! まずはこうなった原因を話しなさい!! いつまでそうしているんですか、あなた達は!!」
 シスターにそう言われ、須磨寺に馬乗りになっていた詩音はようやく降りた。須磨寺も体を起こし、不愉快そうに詩音を睨みつけるがシスターの指示に大人しく従う。
「さあ、一体何があったんです?」

 そして、二人はこの場で起きたことを洗いざらいシスターに話した。双方とも、意見や主張に食い違う部分はあったが、二人の話を聞きシスターは納得したようだった。
「なるほど、分かりました」
 そして、シスターは二人の顔を見つめる。
「二人とも、付いてきなさい」







 さっきから、じっと見ているが何も変化はない。どれくらいの間こうして眺めているのだろうか? 
 シスターに言われ我慢強く待っていたが、次第に詩音は退屈になる。帰ろうかな? と思い始めた。その時―――――
「あ!!」
 初めて動きがあった。本当にいるのだろうか? と思っていたが、今ようやく姿を現した。
 丸く小さな穴、そこからは3羽の小さな雛が我先にと顔を出す。そこにすかさず、親鳥が戻って来た。口には餌をたっぷりと咥えている。
 親鳥が近づくと、雛たちは先を争って餌に近づき大きく口を開いた。親鳥は1羽、1羽に餌を食べさせる。食欲旺盛な雛鳥たちを前に、餌はあっという間に無くなってしまった。雛たちに餌を食べさせると、再び我が子に餌を与える為、親鳥は巣箱から飛んで行った。
 その様子を、二人は少し離れた場所で眺めていた。最初は半信半疑だったが、こうして実際に目の当たりにした詩音は信じざるを得なかった。

 ……コイツが、雛たちの世話を?

 詩音は須磨寺の顔をチラリと見る。その顔は、心なしかほんの少し笑っているように見えた。
「これで分かったでしょう? あの子たちは無事ですよ」
 シスターは諭すように、須磨寺に話しかける。
「園崎さんがあなたに意地悪をして、あの子たちを隠したなんて誤解ですよ」
「……………………」
 シスターの言葉に、須磨寺は黙って耳を傾ける。
「私も今朝、偶然ここを通りましてね。巣から落ちたあの子たちを不憫に思い、ここに巣箱を置いたのですよ」
 そう、偶然ここを通りかかったシスターが、巣箱を設置し雛たちをそこに移したのだ。それを知らない須磨寺は、詩音が雛たちを隠したと思いこみ逆上していたのだ。
「……そうだったんですか。ありがとうございました」
 須磨寺はシスターに向かい、深々と頭を下げた。だが、それを見ている詩音は面白くない。
「ちょっと」
 詩音は不愉快そうに須磨寺を睨みつける。
「何か私に言うべきことがあるんじゃないですか?」
 濡れ衣を着せられ、散々好き放題言われた詩音は須磨寺に謝罪の言葉を要求する。だが……。
「誤解されるような真似をした、あなたが悪いんでしょう」
「はあッ!!? アンタ今何て言いましたッ!!!!」
 謝るどころか、こちらに非があるようなことを言われ、詩音の怒りは頂点に達した。
「もういっぺん言ってみなさいよ!!! アンタ!!!」
 だが詩音の言うことなど、須磨寺は気にも掛けない。
「シスター、巣箱のことありがとうございました。それでは私は失礼します」
 それだけ言うと、須磨寺は踵を返し歩き始めた。
「ちょ…………、待ちなさいよッ!!!!!」
 だが、須磨寺は詩音の言うことなど無視し、勝手に歩いていく。やがて、その姿も見えなくなってしまった。
「あの女ァアアァアアアッーーーー!!!!!!!」
 詩音は傍にあった木を、思いっきり蹴りつける。シスターが『園崎さん!!!』と叱るが、詩音の耳には入っていない。
 最後の最後まで、一切謝罪の言葉を述べなかった須磨寺の態度に、詩音は腸が煮えくり返っていた。今度あの顔を見た時は問答無用で殴り飛ばしてやると、詩音は本気で考える。しかし―――――
「!?」
 詩音は思わず振り返る。後ろから、雛たちの鳴き声が聞こえてきたからだ。見れば、早くもさっきの親鳥が餌を捕まえ戻って来た。親鳥の餌を元気に食べる雛たちには、巣から落ちた疲れなど全くないようだった。
「………………フン」
 その様子を眺めながら、詩音はこう呟いた。



「今日のことは、貸しにしといてやりますよ」



 雛たちは親鳥の持ってきた餌をもらおうと、元気に鳴いている。その羽毛は、徐々に雛のものから、大人のものへと生え換わっている。もう少し待てば、より大人の姿に近づくだろう。





 巣立ちの季節はすぐそこだった。






2009.11.03 Tue l うみねこ l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

No title
はじめまして!ニコ動から来ました。
第3話がすごく好きです。
オリスク化されるのを楽しみにしてます♪
とは言っても、別に急かしてる訳ではないので
御自身のペースでゆっくりうpしていってください。
こちらの小説も続きを楽しみにしてます。
2010.03.11 Thu l 涙目. URL l 編集
やっぱりデザートは固有名詞でなくっちゃねっ!
第5話「よくばりモンブラン」!
デザートを自分だけの固有名詞で呼ぶなんてとてもすてきです!私もやりたいなあ。
森の中を((自分の心臓の音が聞こえそうなほど静か))というのがとてもすてきですね。第六話を読んだ後だったので、逆に、雛のことで縁寿が怒っている気持ちが伝わり、逆読みのおもしろさも感じました。
2013.02.03 Sun l 乗組員z. URL l 編集

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