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今回の話は番外編です。
なのでちょっと短めです。


七夕SS
そらのむこう 番外編

『縁寿と詩音の七夕』
 昼間の焼けつくような暑さも今は息を潜め、心地よい夜風が窓から入ってきた。
 熱く激しく輝いていた太陽はすっかり沈み、周囲は夜の暗闇が支配している。
 窓から顔を出し空を見上げると、そこには満天の星。美しい天の川が夜空を覆っていた。
 今夜は七月七日、七夕である。しかし、キリスト教を重んじている聖ルチーア学園では日本の伝統行事とは無縁である。だが、ここにはその七夕を心待ちにしている人物がいた。
「~♪ ~~♪」
 詩音は上機嫌に鼻歌を歌いながら、忙しそうに手を動かしている。
 窓から外を眺めていた縁寿は後ろを振り返り詩音に声を掛けた。
「詩音、何やっているの?」
「ん? 見て分かりませんか? 七夕ですよ、七夕。今日は七月七日じゃないですか」
 そこには洋間には似つかわしくない竹が飾られていた。
「それは、知っているけど……。ここキリスト教の学校でしょ?」
「まあまあ、堅いこと言わないで下さい。日本人は仏教徒なのにクリスマスを祝うじゃないですか。ならキリスト教の学校で七夕をするのも有りですよ」
 相変わらずよく分からない理屈だ。しかし、詩音の強引さは今に始まったことではない。縁寿は気にしないことにした。
「まあ、別に構わないけど……。それより、その竹どこから持ってきたの?」
「細かいことは気にしない、気にしない。せっかくの七夕なんだから楽しみましょう!」
(また学園長を脅して持ってこさせたのかしら……?)
「はい、縁寿も願いごとを書いて下さい。せっかく竹まで用意したんだから、書かなきゃ損ですよ」
 そう言って詩音は縁寿に短冊を手渡した。
「そうね。せっかくだから何か書いてみようかしら」
 縁寿はペンを手に取り、何を書こうか思案している。
「それにしても…………」
 縁寿は竹を見て呆れた。それほど小さくないにも関わらず、竹には色とりどりの短冊が所狭しと飾られている。
 魔女やら魔法やら、非科学的なものは信じていない詩音だが、こういったイベント事は別らしい。詩音はまだ願いを書き足りないのか、今だに手を動かし続けている。
「たった一人でそんなにたくさん願いごとがあるの? 欲張りすぎなんじゃない?」
「何言ってんですか。願うだけならタダなんですよ? だったら書けるだけ書いたほうが良いじゃないですか」
 縁寿は少々呆れつつ、飾られている短冊の願いごとを読んでみた。

『素敵な彼氏ができますように』
『お姉より胸が大きくなりますように』
『グラサンつけていない葛西の顔が見られますように』
『鬼婆がさっさとくたばりますように』

「……………………」
 ざっと短冊に目を通すが、何だか物騒な願いごとまで書いてある。縁寿は詩音をちらりと見た。
 詩音は新しい願いごとをせっせと書いており、その手を休める気配は一向にない。
「強欲ね、マモンそっくりだわ」
『失礼な!!』
 次の瞬間マモンが姿を現した。
「マモン、聞いていたの?」
『最初っから全部聞いていました! それより、ひどいじゃないですか縁寿さま!!』
「ごめんなさい、いくらあなたでもここまで欲張りじゃないわよね」
 縁寿は失礼なことを言ったとマモンに謝罪する。しかし……
『この程度の願いと一緒にしないで下さい! 私だったら100や200ぐらい願いごとを書いて飾ります!』
「……え? そっち?」
 マモンは憤慨し、自分のほうが詩音より強欲だと主張する。
「……強欲は褒め言葉なのね」
『当然です!』
 マモンはそれが世の常識だと言わんばかりだ。流石は強欲を司るだけはある。
「良し! できました!」
 詩音はようやく全ての短冊を飾りつけ、手を休めた。
「自分一人でよくここまで願いごとが思いつくわね」
「本当はもう少し大きい竹が欲しかったんですよ。それだったらもっとたくさん飾られたんですけどね」
(やっぱりマモンと良い勝負だわ……)
 改めて見るとすごい数だ。何十という数の短冊が、小さくない竹を覆うように飾られている。これ全てがたった一人の願いごとだとは、誰も思わないだろう。しかし、数多くの短冊を飾られた竹は、いくつもの色に彩られ美しく見えた。
 詩音の強欲振りに縁寿は少々呆れつつも…………。
「まあ、いいか」
 そう言い、美しく飾られた竹を眺めるのだった。

「そう言えば、縁寿はどんな願いごとを書いたんですか?」
「……え? ……その、私は……」
 縁寿は自分が持っていた短冊に目を落とす。そこに書かれていた願いは―――――



『お父さん、お母さん、お兄ちゃんと会えますように』



「――――――――――」
「…………まあ、本気でそう思っているわけじゃないけどね」
 縁寿は握っていた短冊を竹に飾りつける。
「願うだけなら別に構わないわけだし……」
 そう呟く縁寿の横顔はどこか寂しげに見えた。
「…………そうですね」
 つらいことを思い出させてしまった。詩音はどことなく申し訳ない気分になる。
 しかし、顔を上げた縁寿の顔には先程のもの寂しい表情は何処にもなかった。
「七夕だもの。せめて良い夢を見たいじゃない?」
 そうして、縁寿はほほ笑む。そんな縁寿の顔を見て、詩音も同じようにほほ笑んだ。
「ええ、きっと良い夢が見れますよ」
 今日は年に一度の逢瀬の夜。例え恋人たちではなくとも、再会を望んでいる者がいるならば天はきっと叶えてくれることだろう。

「あれ? 縁寿、この短冊は何ですか?」
 縁寿の机の上にはもう一枚短冊が置いてあった。
「あッ! それは!!」
 詩音の手が届くより先に縁寿は短冊を引っ手繰った。
「な、何ですか!? 急に!」
「こ、これは良いの。別に見せるようなことじゃないし……」
「……へー、気になりますね。何て書いてあるんですか?」
「だ、だから気にしなくていいわよ!」
「ふっ、そんなこと言って、私に通じると思っているんですか!?」
 次の瞬間、詩音は縁寿の持っている短冊に手を伸ばした。
「駄目! 駄目だったら!!」
「そう言われると余計見たくなります! さあ! 観念して見せて下さい!!」
 詩音は執拗に縁寿の短冊を狙ってくる。縁寿はそれを渡すまいと懸命に詩音から逃げ回る。
 何故この短冊を詩音に見せたくないのか? 縁寿自身、見られて困るようなことは書いてはいないのだが……。
(別に短冊に書いてある願いを見られたところで、どうと言うわけではないんだけど…………、やっぱり詩音に見られるのはちょっと恥ずかしい……)
 そんなわけで、縁寿は詩音の魔の手から逃げ続ける。そんな二人の様子をマモンは楽しそうに眺めていた。
『縁寿さまも案外可愛らしい願いごとをするんですね。くすくす』
 縁寿が必至に詩音から隠している願いごとを、マモンだけが知っていた。



































―――――いつまでも、詩音と一緒にいられますように―――――










 おしまい


2009.09.16 Wed l うみねこ l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

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2009.09.17 Thu l . l 編集
冬の七夕か・・・
願い事とマモンの組み合わせで生まれた物語。おもしろかったです。マモンだったら100や200蛇足りないかも・・・空に届くぐらい願いごとがありそうですね。紙どれだけいるんだろう・・・七夕の次の日紙(神)雨が降ってきそうですね笑。
2012.02.12 Sun l 乗組員Z. URL l 編集

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