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この作品はEP5の全てのネタバレが含まれます。
未プレイの方、まだクリアしていない方は注意して下さい。



読んでも大丈夫という方は追記から続きをお読み下さい。

 ……キィ、キィ、キィ……。

 ……椅子の軋む音が薔薇庭園に木霊する。

 古びたロッキングチェアに男は腰掛けていた。男は椅子にもたれ掛かり、それを揺り籠のように小さく揺らしている。アンティークとも呼べそうな古びた椅子は、その度にキィ、キィ、キィ、と小さく音を鳴らしていた。しかし、五月蠅くは感じない。心地良く音を鳴らすそれは、むしろ子守歌のように感じる。
 そして、もう一人。同じ椅子には、美しい金髪の女が座っている。女は後ろから優しく抱きしめられながら、男と同じ椅子に座っていた。

 そこはいつものお茶会の場所。戦人とベアト、ワルギリの三人がロノウェの淹れてくれた紅茶でティータイムを取っていた所だ。
 しかし、今この場にワルギリアの姿はない。ここにいるのは二人だけ。今この瞬間、薔薇庭園は二人だけの世界だった。
 だがそれは、甘い時間を過ごす恋人たちとは少し様子が違っていた。戦人の瞳は悲しそうに曇り、そしてベアトの目は灰色のまま……。二人の間に会話は無く、ただただ椅子の軋む音だけが小さく響いていた…………。
 どれくらいそうしていただろうか? 一言も語り合わなかった二人だったが、やがて戦人が小さく口を開いた。
「…………ごめんな、ベアト……。俺、約束守れなかった…………」
 戦人は悲しそうに呟く。
「…………………………」
 戦人の言葉に対し、ベアトは何も答えない……。何も反応が無いことに不安になった戦人は、もう一度ベアトに声を掛ける。
「………………ベアト?」
 戦人は後ろからベアトの顔を覗きこんでくる。すると、ベアトはようやく反応した。横を向き、後ろから覗きこんで来た戦人に目を合わせる。
「…………………………」
 その顔は、ほんの少し不満そうにふてくされており、まるでお菓子を買ってもらえない子どもの様だった。
 それは、ベアトにとってほんのちょっと戦人をからかうつもりだった。しかし、今の戦人にとって、彼女の些細なイタズラ心さえも、自分を責めるのには十分だった。
「………………済まねえ」
 戦人は悲しそうに目を伏せ、ベアトから目を逸らしてしまう。
「…………………………」
 そんな戦人を見て、今度はベアトが悲しくなる。ほんのちょっぴり、戦人をからかうつもりだった。しかし、自分の安易な考えが、深く彼を傷つけてしまった…………。
 今の二人は、互いにとても傷つきやすい存在。相手の事を想いすぎることで、ほんの些細なことで傷ついてしまう。今の二人は互いに気を遣いすぎて、その距離が離れてしまっている……。
 あれほど遠慮なく戦い合っていた二人が、今は別人のようだった…………。

 再び沈黙が続く。薔薇庭園は静寂に包まれ、今は椅子の軋む音さえ聞こえない……。
 戦人はもう、ベアトに目を合わせようとすらしない。ぼんやりと宙を見つめるその瞳は、灰色よりもっと暗く淀んでいた。
 そんな戦人を見て、ベアトは胸が痛くなる。彼をこんな風にしてしまったのは自分なのだ。何も知らない彼を、魔女のゲームに引き入れたのはこの私。全ての真相を彼に明かして欲しいと願ったのは、自分の我が儘だったのだ。彼がこのゲームでどれだけ傷ついたのか、そばで見ていたベアトは良く知っていた。彼女は今さらながら、その事を後悔していた…………。
 そして、ベアトは起き上がる。
「……何だ?」
 戦人の手を離れ、椅子から立ち上がった彼女は、小さく駆けだした。
「おい、どうした! 急に走ると危ないぞ!!」
 今まで人形のように座っているだけだった彼女が急に走りだし、戦人は驚く。ほんの少し駆けていたベアトだったが、やがて立ち止まり後ろを振り向いた。
「…………ベアト?」
 急に駆けだしたベアトを、戦人は不思議そうに見つめる。そんな戦人を見て、ベアトは少し、ほんの少しだけ悲しそうな顔してからほほ笑んだ。



―――――どうか悲しまないで。あなたを巻き込んだのはこの私。あなたは何も悪くない―――――



「――――――――――」
 ベアトのその言葉に、戦人は言葉を失う。



 ―――――今まで、私の我が儘に付き合ってくれてありがとう。そして……、ごめんね―――――










 その言葉を聞いた瞬間、戦人はベアトを抱きしめた。彼女が恐がらぬよう、傷つかぬよう…………、けれど、二度と離さぬよう力強く。
「馬鹿野郎……、馬鹿野郎……!! それは、俺の台詞だろッ!!!!」
 それまで、彼が抑え込んでいたものが全て溢れて来た。戦人は何も憚らず、ただただ、泣いた……。あらん限りの声を上げ、泣き続けた……。
「守れなかった!!! お前との約束を守れなかった!!! お前はずっと待っていたのに、俺は間に合わなかった!!! お前は俺に気づいてもらいたくて、ずっとずっと待っていたのに…………、俺馬鹿だから、気付けなかった…………」
 ベアトの顔に頬を寄せ、戦人は泣き続ける。そんな戦人を、ベアトは優しく抱きしめる……。
「ずっとお前を苦しめてきた!!! お前にずっと拷問を強いていたのは俺の方だった!!! なのに、俺はそんなことにも気付かず、あろうことかお前が俺を苦しめていると思っていた!!! そんなわけ、そんなわけねえのによ…………。お前はただ、俺に気付いて欲しかったんだ…………。早く、気付いてと…………。真相に辿り着いてと…………。お前が残してくれたカケラはあんなにもあったのに、俺はそれに気付かなかった!!! やっとそれに気付いて、全てに辿り着いた時は、もう全部手遅れで…………」
 あんなにも大きな戦人の背中は、今は雨の中で小さく震える子犬のようだった。それをベアトは優しく抱きしめる。彼が恐がらぬよう、傷つかぬよう…………、けれど、二度と離さぬよう力強く。
「……ごめんなベアト。ホントにごめん……。……約束守れなくてごめん。お前を護れなくてごめん……。真実を疑って……、ごめん……」
 戦人はまだ泣き続けている。しかし、その背中はもう震えていなかった。そしてベアトからそっと体を離した彼は、彼女の顔を見つめる。戦人の瞳は、もう濁ってなどいない。彼の瞳は輝きを取り戻していた。
「…………済まねえ。俺は間に合わなった……。俺が遅すぎたから、お前は…………。だからせめて……、二度と失わない。お前が俺に残してくれた真実を、俺は二度と見失わないッ!!!!」
 真っすぐとベアトを見つめるその瞳には、強い意志が込められていた。そんな戦人の瞳を見つめ、ベアトは優しく微笑む。もう、二人の間には何の隔たりもなかった。今この瞬間、二人の心は何よりも強い絆で結ばれていた。
 やがて、ベアトの体はうっすらと輝き始める。それは、淡い黄金の光となって辺りを優しく包む……。
「…………もう、時間なのか?」
 戦人の問いに、ベアトは静かに頷く……。
 これが、黄金の魔女ベアトリーチェが残した最後の魔法……。命を賭して、自らの分身を残す。戦人が黄金の魔術師として、強く生きて行けるように。
「…………また、会えるよな?」
 戦人のその問いかけに対し、ベアトは少し困った顔をして笑う。まるで、別れを嫌がる幼子をどうあやすか困っているようだった。
「そんな顔するなよ。大丈夫、俺たちは絶対もう一度会える」
 戦人のその根拠のない自信に、ベアトは不思議そうな顔をする。
「だってよ、叶わない願いを叶えるのが魔法なんだろ」
 戦人のその言葉を聞き、ベアトは少し驚いたようだ。
「心配するな、お前ともう一度会える魔法を俺が見つけてやる。なけりゃ俺が作ってやる!! 俺を誰だと思ってんだ? 黄金の魔術師、右代宮戦人だぜッ!!!」
 ベアトは少しの間驚いていたが、やがて小さく笑う。そして―――――





 ―――――ありがとう―――――





 それは、花のような笑顔。

 彼女が消えるその瞬間まで、戦人は優しく抱きしめる。
 やがて、戦人の腕の中から彼女が消える。美しい黄金の飛沫となって、ベアトは宙に消え去った。それはまるで粉雪のよう。淡い黄金の光を放ちながら、やがてそれも儚く消える。
 最後に残ったのは、一匹の黄金の蝶。戦人が両手を差し出すと、それは戦人の掌の上にそっととまる。そして、戦人は黄金の蝶を優しく包み込む。黄金の蝶は戦人の掌の中で、強く強く輝く。やがて、その光は戦人の掌に吸い込まれ、黄金の蝶は静かに消え去った……。
 彼は淡く黄金に輝く掌を握り、その拳をそっと額に付ける。彼女の存在が、少しでも感じられるように…………。



 その時―――――



 灰色に染まる薔薇庭園の空にひびが入る。ガラスに亀裂を入れるように、そのひび割れは徐々に広がりやがて……。
 天井を覆う巨大なステンドグラスが割れるように、薔薇庭園の空が砕け散る。そして、その後に現れたのは、本物のステンドグラス。巨大な大聖堂の中央に戦人は立っていた。そして、戦人の耳に聞き覚えのある声が入ってくる。
「最後のお別れはすんだかしら? くすくすくす」
「…………見ていやがったのか。趣味が悪いな、ベルンカステル」
「本当に退屈させないわね、あの子は。きっちり消したと思っていたのに、まだあんなものを残していたなんて。おかげで面白い物を見させてもらったわ。もう一度会えるですって? あっっはッ!!! 何ソレ? 本気で言ってるの? 笑いを堪えるのが大変だったわ!!! あっはっはっはっはっはっはっは!!!!! ひぃあっはっはっはひゃはははははははッ!!!!」
「…………だったら望み通り退屈を紛らわしてやるよ。お前が嫌だって言うまでな」
「そう、それは楽しみだわ。でもそう簡単にいかないわよ、ヱリカ」
 ベルンがそう言うと、ヱリカが姿を現す。
「はいここに、我が主」
「戦人が私の退屈を紛らわしてくれるそうよ。相手をしてあげなさい」
「お任せを!! 今度のゲームは前回の様な遅れはとりません!!!」
「当たり前よ。もう一度無様な真似を晒してみなさい。その時は駒置き場に捨てるなんて、温いことはしないわ。私直々にバラバラにしてあげるから。あんたの替えなんていくらでも効くのよ?」
「ご、ご安心下さい、我が主!! この古戸ヱリカ!! 主の名に懸けてその様な真似は致しません!!! 今度こそ必ず、私の推理の正しさを証明してみせます!!!!」
「ならさっさと始めなさい。今この瞬間にも私は退屈しているわ」
「はいッ!! お任せを!! ドラノール!!!」
 ヱリカの呼びかけに応じ、主席異端審問官ドラノール・A・ノックスが姿を現す。
「はい、準備はすでにできていマス、ヱリカ卿。いつでも戦闘可能デス、ご命令を」
 ドラノールがそう言うと、その手に赤き太刀が現れる。かつて戦人を貫いたその赤き刃は、以前よりさらに強大に、強力に赤き光を放っている。そしてさらに……。
「をーーーっほっほっほ! そう簡単にはいかないわよ! 戦人が魔女側なら、私が就かないわけにはいかないわ!!」
 そこに現れるのは絶対の魔女、ラムダデルタ。
「黙れ、お前の指図は受けない。これは俺のゲームだ」
「あらそう? まあ私としてはどっちでも良いんだけどね。ベルンと楽しくゲームができれば。期待しているわ、右代宮戦人。私とベルンを楽しませてよ? 私がしっかりサポートしてあげるから☆ だからぁ…………………………………………、つまらないゲームをしたら、唯じゃおかないわよ? くすくすくす」
 ラムダデルタはそう言うと、不気味に笑う。サポートするなど良く言ったものだ。戦人も、そしてベアトも、二人の魔女にとっては単なる暇潰しのおもちゃに過ぎない。ラムダデルタが戦人の味方をするのもほんの気まぐれ。そうした方がベルンとのゲームを楽しめるからに過ぎない。ゲームに飽きれば、ラムダは掌を返すように戦人を切り捨てるだろう。
 後ろは絶対の魔女、ラムダデルタ。正面は奇跡の魔女、ベルンカステル。さらには彼女の分身古戸ヱリカに、アイゼルネ・ユングフラウ所属、天界きっての大異端審問官『十の楔のドラノール』
 退路はもはや無い。ここで彼女らに勝たない限り、戦人に未来は―――――

 ―――――否。

 彼にそれは不要だった。
 逃げる気など毛頭ない。
 『二度と真実を見失わない』
 彼女と交わした新たな約束。
 その約束がある限り、相手が誰であろうと彼は逃げない。
 彼こそは、黄金の魔女の正統後継者。黄金の錬金術師にて、無限の魔術師、右代宮戦人。



 無限の魔術師右代宮戦人、一体誰に背を向けるというのか!!!



「さあ、戦いまショウ、右代宮戦人」
 ドラノールの両手にはすでに赤き太刀だけでなく、青き小刀も握られている。一触即発。ヱリカが指示を出せば、彼女は瞬きする間もなく戦人に斬りかかるだろう。
「ああ、お前とは何となくこうなる気がしていた」
 かつて、共に茶を飲んだ仲とは言え、彼らは敵同士。慣れ合いなど決してしない。敵として出会ったときに、こうなる運命は決まっていたのかもしれない。
 そして、ドラノールを見据える戦人の前に古戸ヱリカが立った。
「右代宮戦人、前回のゲームでは遅れを取りましたが、今度はそうはいきません。今度こそ、私の推理の完璧さを証明してみせます!!! 私の青き真実で、必ずこの事件の真相を暴いてみせます!!!!」
「ああ、来いよ古戸ヱリカ、決着をつけようぜ。そして教えてやる!!! 魔女幻想を解き明かせるのはお前じゃない、この俺だってことをなァアアアアアアッ!!!!!!!」





 ―――――見てろよベアト、お前と再び会うその日まで、お前の意志は俺が継ぐ!!!!―――――





「始めるぜ、俺のゲームを」

 そして戦人は告げる。黄金の魔女の正統後継者、無限の魔術師の名において。





















「エピソード6!!!  successor of the golden witch!!!!!」 



















































































原作
竜騎士07
07th Expansion


脚本

湖都



キャスト

右代宮戦人

ベアトリーチェ

古戸ヱリカ

ドラノール

ベルンカステル

ラムダデルタ





















うみねこのく頃に  散




















今回はベアバトで泣きました。
うぅ……、ラストでのベアトは泣ける……。
なので今回のSSはベアバト全開でいきました!
さらに次回のEPタイトルを勝手に予想!
ちなみに『successor』は後継者という意味です。
『黄金の魔女を継ぐ者』と言ったところでしょうか。
文法的にあれで正しいかどうかは分かりませんが、そんな感じで。
それでは!





2009.08.24 Mon l うみねこ l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

感想を書きに来ました!!
こんにちは、公式からやって来ましたマリオネットといいます。

湖都さんのSS作品が出てたので読ませていただきました。早速ですが、感想を書かせていただきます!!

successor of the golden witch ~感想~
原作とはまた違い感動しました。
>「守れなかった!!! お前との約束を守れなかった!!! お前はずっと待っていたのに、俺は間に合わなかった!!! お前は俺に気づいてもらいたくて、ずっとずっと待っていたのに…………、俺馬鹿だから、気付けなかった…………」

このセリフ泣いちゃいます、涙腺が・・・うぅ・・・・(泣)

>「そんな顔するなよ。大丈夫、俺たちは絶対もう一度会える」
 戦人のその根拠のない自信に、ベアトは不思議そうな顔をする。
「だってよ、叶わない願いを叶えるのが魔法なんだろ」

「叶わない願いを叶えるのが魔法」、戦人もいい事言いますね。二人がまた会える日がきますように・・・。

>彼こそは、黄金の魔女の正統後継者。黄金の錬金術師にて、無限の魔術師、右代宮戦人。

黄金の魔女の後継者右代宮戦人、カッコイイです!!

とてもいい作品で、すごく泣きました。拙い感想で書かせていただきましたが、本当に良い作品ありがとうございました!!

では、これくらいで失礼します。









2009.08.27 Thu l マリオネット. URL l 編集

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