「あっ、しまった。玉ねぎ買い忘れたわ」
 今日は久しぶりの休日。娘と一日過ごせる貴重な日を、私は真里亞と一緒にハンバーグを作ることにしていた。しかし買い物から帰ってきてから材料が足りないことに気が付く。
「しまったわ、また買いに行かなきゃ」
 スーパーはすぐ近所にある。今から買いに行けば、夕飯には十分間に合う。一人で買いに行ってもいいのだが…。
「真里亞、ママ玉ねぎ買い忘れちゃったからもう一度買い物に行くんだけど、真里亞も一緒に行く?」
「うん、行く!真里亞も一緒に!!」
 テレビを見ていた真里亞は顔を上げ、にっこりと笑う。
「うん、それじゃあ一緒に行こうか」
 私は真里亞と手を繋ぎ、再び買い物に出かけた。日に二度買い物に出かけられると、真里亞は喜んでいる。いつもなら二度買い物に行くなんて面倒だと思うが、たまにはこういうのも良いかもしれない。
 その時、ふと気が付いた。良く考えたら真里亞は一人で買い物に出かけた事がない。私がいる時は一緒に買い物に出かけるし、いない時の買い物はお手伝いさんに頼んでいる。
 あまり深く考えた事がなかったが、小学4年生で買い物に出かけた事がないというのは、少々過保護かもしれない。私自身、少し真里亞を甘やかしすぎたかもしれない。
 決めた。今度のお休みは、真里亞におつかいをさせよう。





はじめてのおつかい 




楼座「はい、真里亞。このバッグの中に買ってきて欲しいものが書いてあるからね。気をつけて行くのよ」
真里亞「う~、ママ行ってきます」
 真里亞は勢い良く駆け出していった。初めておつかいを頼まれたその足取りは軽い。浮かれて怪我でもしなければいいのだが…。
楼座「心配だわ…」
朱志香「大丈夫だぜ、楼座叔母さん。真里亞はあれでしっかりしているから心配いらないって」
譲治「そうですよ。真里亞ちゃんも、もう9歳なんですから。おつかいくらいできますよ」
戦人「ああ、楼座叔母さんが心配するほどじゃないッスよ。みんな真里亞を信じようぜ」
 そうだわ、真里亞も、もう幼稚園児じゃないもの。私が心配しすぎなのね。母として、真里亞を信じなきゃ。
楼座「ありがとう…。みんな」
 みんな真里亞のために来てくれた。こんなに良い、いとこたちを持って真里亞は幸せだわ。あとは私が母として、あの子を甘やかさず立派に育てて…。
戦人「あ~、楼座叔母さん。感動しているところ悪いんですが、ちょっといいッスか」
楼座「どうしたの?戦人くん」
戦人「ちょっとこれ、おかしくないですか」
楼座「何が?」
戦人「何で、俺だけ簀巻きなんです?」
 そう、この中で俺だけ簀巻きで転がされているのだ。なんで誰もさっきから突っ込まないんだ。
楼座「戦人くん、いくらもてるからって遊びすぎじゃないのかしら?若いうちからそんなプレイだなんて…」
戦人「するか!俺のほうが聞きたいわ!家で寝てたら突然簀巻きにされて、拉致られて、こんな所に連れてこられたんだ!!」
朱志香「戦人、今日は真里亞が初めて買い物行く日なんだ。でも、楼座叔母さんが自分だけじゃ不安だから、いとこの私たちにもお願いしたんだぜ」
戦人「あ~、話の流れから何となく分かっていたよ。でも、何で俺だけ拉致されなきゃいけないんだ?」
楼座「ごめんなさい、戦人くんだけ連絡するのを忘れてて…。それで急だったんだけど来てもらったの」
戦人「普通に頼めばいいじゃないですか」
楼座「だって、今日予定が入って来られなかったら困るじゃない」
戦人「俺の人権は無視ですか」
譲治「まあまあ戦人くん、いいじゃないか。親族会議以外で僕たちいとこが会うことなんて滅多にないんだから。ちょうどいい機会じゃないか」
戦人「はあ…、まあここまで来たらいいか。真里亞の初めてのおつかいなんて、ちょっと面白そうだしな」
楼座「その意気よ、戦人くん」
戦人「いや、叔母さんは反省してください」



朱志香「と、いうわけで、みんなで真里亞のおつかいをこっそり見守るぜ」
譲治「今のところ問題はないようだね」
戦人「まあ、特に障害らしい障害もなかったからな」
朱志香「でも、まだ分からないぜ。この先は人通りが多くなるからな。見失ったら厄介だし、真里亞自身迷子になるかもしれない」
楼座「大丈夫よ、そんな時のために真里亞の服に発信機を付けておいたから」
戦人「そんな物付けているんスか…。そこまでしなくても…」
譲治「いや、そんな事はないよ、戦人くん。世の中何が起こるか分からないからね。流石は楼座叔母さん。準備が整っていますね」
楼座「その通り、備えあれば憂いなしよ、戦人くん」
戦人「そこまで必要か…?まあ、いいか」
朱志香「ん?おい、見ろよ。怪しい奴が真里亞に声を掛けているぜ」
戦人「本当だ。おいおい大丈夫か、まさか誘拐とかじゃねえだろうな」
楼座「心配ないわ、あれは右代宮の使用人よ。知らない人に声を掛けられても大丈夫かどうか、あらかじめ配置しておいたの」
戦人「本当に用意周到だな…。って、おいおい、駄目じゃねえか。飴玉もらって付いていっちまったぜ。しょうがねえな…」
楼座「もう、真里亞ったら。あれほど知らない人に付いていったらいけないと言ってるのに…。でも、そんな純粋な所も可愛いわ」
戦人「いや、そこは駄目でしょう!!親として教育しないと!!」
譲治「まあ、それは後から言って聞かせればいいよ。それよりまた人が近づいてきたよ」
朱志香「着ぐるみか。風船持ってるぜ。私も遊園地とかでもらったっけ。きっと何かの宣伝だな」
戦人「おっ、真里亜のやつ喜んでるぜ。いつもは魔女やら、呪いやらに夢中になっているけど、子どもらしい所もあるんだな。ん?って、おい!着ぐるみの人、黒スーツの連中に囲まれてるぞ!おい、何してる!!車に乗せて何処に連れて行く気だ!!オイイイィィィーーーーッ!!!」
楼座「何の目的で近づいたか吐かせなさい。手段は問わないわ」
戦人「あんたの差し金かあああーーーーー!!!何、恐ろしげな事やってんだよ!風船あげただけだろうが!!善良な一般市民拘束して何する気だよ!!」
楼座「何言ってるの。あれがもし誘拐犯だったらどうする気。ひょっとしたら真里亞が誘拐されていたかもしれないじゃない」
戦人「誘拐犯はあんただろうがぁああああぁぁーーーー!!」
譲治「いや、そんな事はないよ、戦人くん。世の中何が起こるか分からないからね。流石は楼座叔母さ―――――」
戦人「同じ事言ってんじゃんねえ!!さっき聞いたわ!!おい…、さっきの奴といい、今の奴らといい、まさかまだあんなのがいるんじゃ…」
楼座「失礼な事言わないで。私だってそこまで親馬鹿じゃないわ。ほんの100人程度よ」
戦人「どんだけ親馬鹿だああああーーーーーーーーー!!!とんだ茶番じゃねえか!!どこが一人でおつかいだよ!!100人でおつかいだろうが!!TV局も真っ青の人数じゃねえか!!あんた右代宮の家名を何に使ってんだよ!!」
楼座「何言ってるの。こんな時に使わないで何のための権力よ」
戦人「言い切ったよこの人!!」
譲治「戦人くん、人は皆、子どもを持つと親馬鹿になるものさ…」
戦人「何知った風な口聞いてんだ、てめえは!!」
朱志香「戦人、さっきからうるさいぜ。ちょっと黙ってろよ」
譲治「そうだよ戦人くん、少し落ち着こうよ」
楼座「このロリコンが」





「誰がロリコンだああああーーーーーーーーー!!!」




戦人「いきなり何言ってんだあんたは!上の二人はともかく、どっからその単語出てくんだよ!!何の脈絡もねえだろうが!!」
楼座「何ムキになって否定してるのよ。怪しいわね」
戦人「否定するわ!!普通!!」
楼座「どうせ縁寿ちゃんにお兄ちゃん、お兄ちゃん言われてハアハアしてるんでしょ、気持ち悪い。そう言えば戦人くん、真里亞には妙に優しかったわね。ひょっとして真里亞のことも今までそんな目で見てたの?汚らわしい…」
戦人「誰がするか!!んな事!!!」
楼座「何のつもりで真里亞を甘やかしてるのは知らないけど、この際だからはっきり言うわ。あまり真里亞を甘やかさないで。子どもの頃からそんなだと、将来ろくな大人にならないから」
戦人「大甘なのはあんただろうが!!全く、これじゃ真里亞の将来が不安だぜ」
戦人「こんな親には真里亞のことは任せられねえ。今からでも遅くねえ、うちに連れて行こう。霧江さんならしっかりしてるし、問題ねえ。それにうちには縁寿がいるし、寂しいこともないな。二人とも俺がしっかり立派な大人に育てねえと。でもって、二人にはお兄ちゃんって言わせよう。朝はおはようから、夜はおやすみなさいまで一緒にいて、俺の好みの服を着せて…」
楼座「ついに本性表したわね、この変態」
戦人「人の声色使って台詞を改竄してんじゃねえ!!」
朱志香「戦人…、お前そういう趣味があったのか…」
譲治「戦人くん…、服はメイド服だよね…?」
戦人「おいいぃぃぃぃ!!なに騙されてんの!!違うからね!!俺じゃないから!!今の楼座叔母さんだから!!俺はそういうのじゃないから!!!」
楼座「もういいわ。戦人くんには期待してないから。帰りたかったら、帰ればいいわ」
朱志香「戦人…、その…、お前がどんなになっても、私はお前の友達だからな……」
譲治「戦人くん…、たまにはゴスロリも良いと思うよ……」
戦人「え~~~……、ちょっ、何この仕打ち…?俺がおかしいの?俺一応主人公だよ…?人気投票3連続一位だよ…?何この切なさ…」





楼座「どうにか目的地に着いたわね」
戦人「………」
朱志香「あれからは問題もなかったな。順調だぜ」
戦人「……おい」
譲治「みんな心配しすぎだよ。真里亞ちゃんもやればできるよ」
戦人「おい」
楼座「あとは無事に買い物を済ませれば目的達成よ」
戦人「おい!!」
朱志香「何だよ戦人、さっきから。帰ったんじゃなかったのかよ」
戦人「何だよ、じゃねえ!何でさっきから誰も突っ込まないんだよ!」
三人「「「何が?」」」





「なんでおつかいで同人ショップに来てんだよ!!!」





楼座「戦人くん、今日のおつかいは真里亞が一人で買い物ができるかどうかを判断するのが目的よ。別に買い物をする場所はどこだっていいの」
戦人「だったら、なおさらここの必要ねえだろうが!何で普通のスーパーにしねえんだよ!子どもに見せちゃいけない物だってあんだろが!!」
楼座「人はいつまでも子どもじゃいられないわ…。そうやって少しずつ大人になっていくものよ…」
戦人「どんな大人ああああ!!?駄目だから!!むしろそういう大人になっちゃ駄目だから!!」
朱志香「落ち着けよ、二人とも!早く入らないと真里亞を見失うぜ!早く、早く入ろうぜ!!ほら、早く!!早く、入って!!ハアハア!!」
戦人「お前が落ち着けええええ!!何でそんなに興奮してんだよ!!どんだけ入りたいんだよ!!」
譲治「仕方ないよ、戦人くん。朱志香ちゃんも年頃の女の子なんだから。むしろそういうのに興味が向くのは健全なことだよ」
戦人「駄目な方に向いてんじゃねえか!不健全極まりないわ!!いい加減にしろよ、お前ら!俺たちが今日ここに来た目的忘れたのかよ!」
楼座「そうよ、みんな目的を忘れてはダメよ。今日は新刊が大量に入荷されるんだから」
戦人「それが目的かあああああーーーーー!!!なに娘を利用してんだよ!!初めてのおつかいで何買わせる気だよ!!あんたそれでも母親!!?」
楼座「勘違いしないで。何もこれは私だけのためじゃないわ。真里亞のためでもあるのよ」
戦人「なに娘を同じ道に引き入れようとしてんだ!!!」
譲治「ちょっと静かにしてよ、二人とも。せっかく近くに来たメイドさんが逃げちゃったじゃないか…」
戦人「お前は真里亞を見張っとけ!!!」
楼座「二人とも、遊んでる場合じゃないわ。真里亞を見失ったじゃない。朱志香ちゃんはもう店内に入ったわよ。私たちも急ぎましょう」
戦人「やっぱ帰れば良かった…」



戦人「何で真里亞のおつかいで同人ショップに来てんだよ、俺たちは…」
譲治「まあまあ、いいじゃないか戦人くん。さっきも言ったように、このおつかいは真里亞ちゃんが一人で買い物ができるかどうかが目的なんだから。買う物の内容は関係ないよ」
戦人「それはまあ、そうなんだが…」
譲治「それに、同人ショップだからと言って、いかがわしい物ばかり扱っているわけじゃないよ。健全な本だってたくさん置いてあるじゃないか」
戦人「おい、その同人誌じゃなくて俺の顔見て話せ」
朱志香「えへ…、えへへへ…、嘉音くん…」
戦人「何の本読んでんだよ、お前は…。ホント、何しに来たんだよお前ら…。しょうがねえ、俺だけでも目的を果たさねえと。真里亞は一体どこに…、ん?」
楼座「なかなか良いのがないわね。何かオススメの本はないの?」
ベアト「うむ、ならばこれはどうだ?妾オススメのロノ×バト本だ。やはりこういうのは美形同士が―――」
戦人「ウオオォォオオオオオーーーーーーーイイ!!!何やってんのお前ら!!!」
ベアト「ば、戦人!!何故ここに!?」
戦人「それはこっちの台詞だ!!お前何でこんなとこにいるんだ!」
ベアト「あーーー…、これは…、違うぞ…。妾はたまたまここに来ただけだ。別にベアバト本を買いに来たとかそういうのでは―――」
戦人「んなこと聞いてねえ!!何で魔女が街で普通に買い物してんだよ!!ファンタジーの欠片もねえだろうが!!お前魔女なんだろ!もっと自分のイメージ大切にしようよ!?」
ベアト「それなら心配はいらぬ。ここにいる人間には妾の事に関して、忘れるよう魔法をかけている。例え妾が何冊本を持って行こうと気付きはせぬ」
戦人「それは魔法じゃなくて万引きだ!」
楼座「ちょっと戦人くん、何してるの?遊んでいる場合じゃないわよ」
戦人「遊んでたのはあんただろうが」
楼座「そんなことより、真里亞の様子はどうなの」
戦人「あ、ああ…。実は俺も見失って…。つーか、あんたも探せよ」
ベアト「何だ?そなたら真里亞を探しているのか?」
戦人「ああ。今日は真里亞がおつかいに来ててな」
ベアト「真里亞ならあそこにいるではないか」
戦人「え?あっ、ホントだ。あんなとこに」
楼座「あら、もう目的の本を見つけてるじゃない」
戦人「って、やっぱりBL本かよ…」
楼座「それにしても、ずいぶん注目されているわね。みんな真里亞の可愛さに釘付けってとこかしら。さすがは私の娘」
戦人「そら目立つだろう。基本的に、子どもがいるような場所じゃないからな…」
ベアト「だが、本が高いところにあって手が届かないようだな…。む、誰か近づいて来たぞ」
戦人「男…、何でBLコーナーに男がいるんだよ。さては真里亞が目当てか…。いいのかよ、ほっといて。娘のピンチじゃないのか?」
楼座「大丈夫よ、まあ見てなさい」
戦人「ん?真里亞のやつ何か話してるぞ。なに話してんだ?って、あれ?おい!あいつ泣いて逃げてったぞ!!何、言ったんだ!?」
楼座「さあ?でも何を言ったかは想像つくけど。ああいう、ロリコンみたいな奴の撃退方は日頃教えているから大丈夫よ」
ベアト「うむ、さすがは我が弟子。あやつは小さくとも、すでに立派な魔女よ」
戦人「大の大人が泣いて逃げ出すとは…。真里亞、恐ろしい子…」
楼座「でも困ったわね、これじゃ本を取れないわ」
ベアト「むっ、見かねた店員が手伝っているな」
楼座「良かったわ。これで目的達成ね」
戦人「真里亞のやつずいぶん喜んでやがる。良かったな。おっ、バッグから何か出そうとしてるぞ?何だ?」
楼座「きっとお礼にチップを渡すつもりね。日本じゃあまり見られない習慣だけど」
戦人「そうか、真里亞のやつ、よっぽど嬉しかったんだな…。っておいいいいいぃぃぃぃ!!!何やっちゃってんのあの子!!何でチップで黄金のインゴッド渡してんの!!」
楼座「真里亞ったら…。人に渡すならもっと綺麗に拭いてから渡せばいいのに…」
戦人「そういう問題じゃねえだろ!!どこの世界にチップでインゴッド渡す奴がいんだよ!!店員さん引いてんじゃねえか!!」
ベアト「何を言う。妾は毎回チップはインゴッドだぞ」
戦人「お前と一緒にするな!第一何であんなの持ち歩いてるんだよ!!」
楼座「護身用に持たせてるのよ。何かあったらあれを振り回して武器に―――――」
戦人「あんただけだから!!そんな使い方すんの!!つーか、あんたの会社やばいんだろ!!使えよ、あれ!!」
楼座「別にいいわよ、あれくらい。10トンもあるんだから」
戦人「碑文の謎解いちゃったの!!?けど本編じゃ絵羽伯母さんが先に見つけたろ!絵羽伯母さんはどうしたんだよ!?」
楼座「ああ、姉さん?あの人いつも私の邪魔ばかりするから、ちょっとアレしておいたから」
戦人「何だよアレって!!?何しちゃったのあんた!!?言うなよ!!それ譲治の兄貴には絶対言うなよ!!」
譲治「呼んだかい?戦人くん」
戦人「お呼びじゃねえんだよ!!てめえぇはぁああああーーーー!!!」
朱志香「おい、静かにしろよ。真里亞に見つかるだろ。遊んでんじゃねえよ、二人とも」
戦人「おめえにだけは言われたくねえんだよ!!」
ベアト「騒がしい奴らだ。んっ?真里亞のやつレジに持っていくようだぞ」
楼座「もう少しで、おつかい完了ね」
朱志香「いいぜ真里亞、それを店員さんに渡すんだ」
戦人「BL本を普通の本に挟んで…。エロ本買いに来た中学生かよ…。いちいち指示が細かいな…」
楼座「だって、普通に買わせたら恥ずかしいでしょ」
戦人「なら買わすな!!自分で買え!!」
楼座「いやよ恥ずかしい」
戦人「娘が恥ずかしいのはいいのかよ!!」





朱志香「まあ、とにかく無事に買えて良かったぜ。これで一人でおつかいも問題ないな」
ベアト「子どもというものは、大人が知らぬ間に成長するもの。周囲の大人が大袈裟に騒ぎ、子どもの方が落ち着いているということは往々にしてあるものよ」
譲治「そうだね。僕ら大人が騒ぐほどじゃなかったね」
朱志香「ああ、戦人が一人で騒いでいただけだったけどな」
戦人「騒がせたのはお前らだろうが…」
楼座「でも、何事もなくて良かったわ。私が思っているほど、真里亞も子どもじゃないってことね。娘を信じてやれないなんて…、母親として恥ずかしいわ…」
譲治「そんなことありませんよ、楼座叔母さん。母親として、娘を想う気持ちを恥じる必要なんかありません」
戦人「そんなくさい台詞は持ってるもん捨ててから言え!!どさくさに紛れて、なに大量のメイド本買ってんだ、お前は!!!」
譲治「いや、店員さんに新刊が大量に入りましたって勧められてね」
戦人「常連かいいぃぃぃぃ!!!お前が一番恥ずかしいわ!!!」

 その時、一台の車が真里亞の前に止まり、そのまま真里亞を乗せて走り去った。
ベアト「む?何やら真里亞が車に乗せられたぞ」
戦人「ん?また右代宮の使用人じゃねえの?」
楼座「違うわ!!私はあんな指示出してないもの!!!」
戦人「えっ?てことは本当に……」
 誘拐……。
譲治「た、大変だ!!早く警察に連絡を」
朱志香「ど、どこかで電話借りて、って戦人!どこ行く気だ!!」
 俺はその場を駆け出し、バイクに乗ろうとしている男に声を掛けた。
戦人「悪りい、兄ちゃん!!ちょっとバイク貸してくれ!!」
「おい!何すんだ、あんた!!」
戦人「後でちゃんと返すからよ!!!」
 強引にバイクを借りた俺はそのまま真里亞を乗せた車を追いかけた。



犯人1「へっへっへ。まさか右代宮のガキが一人でのこのこ歩いてるとはな。身代金たっぷり請求できるぜ」
犯人2「傷は付けるなよ。大事な人質なんだからな」
真里亞「うー!!うー!!ママー!!!」
犯人1「おい、静かにしろ!大人しくしてりゃ何もしねえよ」
犯人2「とりあえずガキを連れて人目の付かない所に…、って何だあ!!」
 真里亞を乗せた車に追いついた俺は、窓越しから犯人に向かって大声で怒鳴る。
戦人「てめえ、止まりやがれ!!真里亞を返せ!!」
真里亜「うー!戦人ー!!」
 真里亞が俺に向かって助けを求める。
戦人「待ってな真里亞!すぐ助けてやるからよ!!」
犯人1「ちっ!振り切れ!!」
戦人「くそ!どうにかして止めねえと!ん?」
 そこに現れたのは楼座叔母さん。車は運転手に任せ、自分は窓から体を出し、ウィンチェスターをぶっ放している。
戦人「おいいぃぃぃぃーーーーー!!!!何やっちゃってんの、あんた!!!」
楼座「止まれえええーーー!!!止まらんと撃つぞおおおーーーー!!!」
戦人「もう撃ってんじゃねえか!!何考えてんだ、あんた!!!」
楼座「心配ないわ、戦人くん。こんなこともあろうかと、私狩猟免許取ってたの」
戦人「街中で狩りをする奴があるかあああーーーー!!!真里亞も乗ってんだぞ!!少しは考えろよ!!」
楼座「ごめんなさい。久しぶりに人が撃てると思ったら、つい興奮しちゃって」
戦人「撃てないから!!撃っちゃいけないから!!つーか久しぶりって何だよ!!あんた前にも人撃ったのかよ!!」
楼座「てへ☆」
戦人「てへで済む問題じゃねえだろ!!!」
楼座「大丈夫よ、正当防衛は罪にはならないわ。戦人くんはいちいち心配しすぎよ」
戦人「お前は自分の頭を心配しろおおおーーーー!!!正当防衛じゃねえよ!!過剰防衛ですらねえよ!!過剰攻撃だよ!!真里亞を助けたかったらもっとマシな方法考えろ!!」
楼座「戦人くん、前!!」
戦人「へ?おわあ!!」
 いつの間にか俺たちは交差点に突っ込んでいた。俺の前に車が飛び込んでくる。間一髪それをかわすが、真里亞を乗せた車はその隙に大きく距離を離す。
戦人「くそ!このままじゃ逃げられる!!」
 俺は焦る気持ちを抑えきれず、車を追いかけた。だが心配は無用だった。
犯人1「な、何だァ!?何だコイツら!一体何処から!?」
 犯人が運転しているフロントガラスの前には誰かいる。それは……。
ベルフェゴール「抵抗も、そして逃走も無駄だ。諦めて真里亞様を放すがいい。我が主、ベアトリーチェ様から逃げられると思うなよ」
アスモデウス「くすくすくす、怯えてる?かぁわいい。でも残念。あんたたち私の好みじゃないわ。もっとカッコ良かったら、可愛がってあげても良かったけど。くすくすくす!」
 車には煉獄の姉妹が張り付き、犯人の逃走を阻んでいた。
戦人「ベアト、お前…」
ベアト「何、可愛い愛弟子の危機なのだ。師として、ここは一肌脱ごうと思ってな」
 犯人たちは視界を塞がれ思うように逃げられない。そして交差点の先の一本道。そこはすでに警察が検問をはり、道が封鎖されていたのだ。そして検問の前に立っているのは、朱志香と譲治の兄貴。
朱志香「こちとら、誘拐されそうになったことは、一度や二度じゃないんだよ。こんな時のために、右代宮家は警察と常に連携をとっているんだぜ」
譲治「真里亞ちゃんに付けた発信機が役に立ったよ。逃げる方向さえ分かれば、道路の封鎖なんて簡単さ」
 前を塞がれた車は停車を余儀なくなされる。そして、あっという間に警察に囲まれた車からは、真里亞と犯人が出てきた。
真里亞「うー、戦人ぁあああぁーー!!」
戦人「おー、怖かったな真里亞。もう大丈夫だ」
譲治「さて、この二人だけど、どうしようか戦人くん」
戦人「さーて、どうすっかな。俺らの可愛い真里亞をこんな目に合わせたんだ。魔女の生贄に相応しい拷問にでもかけてみるか?」
 もちろん、こんなのは口から出任せだ。だが犯人たちには予想以上に効果的だったようだ。
犯人「「ひ、ひいいいいぃぃぃぃぃ」」
 くっくっく。いい気味だ。
戦人「まあ、俺らも鬼じゃねえ。大人しく豚箱に入って罪を償うんなら、この場は見逃してやっても―――――」














































「うちの娘に何さらしとんじゃああああああぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」








 犯人たちが宙を舞う。大の大人がまるで木の葉のように。その破壊力はヘビー級ボクサーの一撃すら上回る。噂には聞いていた。だがこれほどまでとは…



『楼座無双』



 その名に恥じない一撃だ。娘を想う怒りの一撃は、犯人たちを空高く舞い上げた。



 俺たちごと……。





真里亞「うー!真里亞ちゃんとおつかいできた!!ママ、偉い?」
楼座「ええ、偉いわ。初めてなのにちゃんとおつかいできたわね。でも、一人でおつかいはまだちょっぴり危ないから、次はママと一緒に行きましょう」
真里亞「うー!一緒!ママと一緒にお買い物!!」
朱志香「やれやれ、二人とも子離れ、親離れは当分先みたいだぜ」
ベアト「この様子では、一人前の魔女にはまだまだなれそうにはないな」



 4人は楽しそうにおしゃべりをしている。仲睦まじく話しているその光景は実に微笑ましい。夕日が町を美しく照らす中、4人は楽しそうに帰っていった。
 俺たちを残して…。



戦人「兄貴…、立てるか?」
譲治「…無理」
戦人「俺も…」
 楼座無双の破壊力はすさまじく、俺と兄貴は起き上がることすらできない。子連れの母熊ほど怖ろしいものはないと聞くが、これほどとは……。
譲治「僕たちいつまでこのままなのかな…?」
戦人「あの4人が気付くまでかな…」
譲治「先は長そうだね…」
 夕暮れの冷たい風が、容赦なく吹き抜ける。今夜は覚悟しなければ…。
戦人「なあ、兄貴。俺、一つ分かったことがある…」
譲治「…何だい?」
戦人「真里亞のおつかいは護衛も、監視も必要ねえ…。楼座叔母さんが一人いれば十分だ」
譲治「そうだね…」
戦人「今日、俺たちがしていたことは無駄だったって事だ…」
譲治「…戦人くん、世の中に無駄なことなんて何一つないよ」
戦人「えっ…?」
譲治「確かに真里亞ちゃんには護衛も監視もいらない。楼座叔母さんが付いていれば十分だよ。でも、だからと言って、今日僕たちがしたことは無駄ではないよ」
戦人「そう、なのか…?」
 今日はろくな一日じゃなかった。朝から拉致されて、真里亞のおつかいにつき合わされた。ロリコン呼ばわりされるわ、一人だけ突っ込み役をさせられるわ、挙句殴られて動けないときたもんだ。
 けど、分かったこともある。普段滅多に会うこともない俺たちだけど、真里亞のために一致団結して無事救い出した。例え会うことが少なくても、俺たちの絆は常に繋がってるんだ。
戦人「さすがは兄貴。良いこと言うじゃねえか。今日一日、なんだかんだ言っちまったけど見直したぜ」
譲治「戦人くんは、今日一日で何かを手に入れたのかい?」
戦人「ああ、俺たちの絆がどれだけ強いか、それを知ることができた」
譲治「そう、良かった」
戦人「兄貴に言われなきゃ、俺は気が付かなかったよ。ありがとな」
譲治「いいんだよ。それに、僕も今日は大切なものを手に入れることができた」
戦人「へえ…、何を手に入れたんだ?」
譲治「探していた同人誌が見つかった」
戦人「そっちかよ!!!」



「あーー、やってらんねえよ!!良いこと言ったと思ったら、結局そっちかい!!見直して損したぜ!大体兄貴は―――――」



 そんな2人のやり取りを少し離れた物陰から見ている者がいた。紗音と嘉音である。2人も、真里亞のおつかいで監視役をしていたのだ。
戦人はまだ譲治に対して文句を言っている。その様子を眺めていた2人だが、不意に嘉音が口を開いた。
嘉音「姉さん、今日は真里亞様の初めてのおつかいで、僕たちも監視役になったけど…」
紗音「どうしたの、嘉音くん?」
嘉音「僕、今まで右代宮家の人を誤解していた」
紗音「誤解…?」
嘉音「うん、今まで僕は右代宮家の人は財産や、権力にばかりに捉われているような人ばかりだと思っていた。でも今日一日、楼座様や、お子様方の様子をみてそれが間違いだったって気付いたんだ」
紗音「うん…」
嘉音「普段は見ることができない、その人が持つ別の一面を今日は見ることができた気がするんだ。みんなが店から出てきて真里亜様がされわれた時、全員で力を合わせたからこそ犯人を捕まえることができたと思うんだ。」
紗音「そうね。嘉音くん、人の心はひとつだけじゃないわ。その人の一部分だけ見て、その人の全てを決め付けることはできない。その人の別の心も見なきゃ、本当に理解することはできないの」
嘉音「僕は今まで人の一部分だけ見て、その人の全てを決め付けていた。でも、それは間違いだったんだ」
紗音「ええ、それが分かっただけでも立派よ。人はいろんな色眼鏡を掛けて人を見る。そのせいで、その人がどんな人間か理解しないまま、一生を過ごすこともある。でも、あなたはそれに気付けた。それはとてもすごい事なの」
嘉音「うん、僕はもう、一部分だけ見て人を決め付けるのは止めるよ。これからはちゃんと、その人の全てを理解するよう努力する」
紗音「ええ、頑張って、嘉音くん」
嘉音「さあ、僕たちも帰ろう。まずは戦人様と譲治様を助けないと」
紗音「うん、このままじゃ風邪を引いちゃうわ」



譲治「あれッ、紗音?嘉音君も!」
紗音「大丈夫ですか、譲治さん?戦人様もお怪我はありませんか?」
戦人「いっひっひ、見ての通りさ。でも2人ともどうしてここに?」
嘉音「黙ってて申し訳ありません。実は今日、僕たちも付いてきたんです」
戦人「そうだったのか。全然気が付かなかったぜ」
紗音「真里亞様の監視と護衛役として私たちも同行していたんです」
譲治「ということは、一部始終見られていたってことかな?恥ずかしい所を見られたね。僕も戦人くんも、楼座叔母さんの一撃でこのザマさ」
紗音「いいえ、そんなことありません。譲治さんも、戦人様も格好良かったです。お2人の活躍で真里亜様は助けられたんですから」
譲治「はは、そう言ってもらえると助かるよ」
紗音「さあ、お2人とも帰りましょう。ここにいては風邪を引いてしまいます。立てますか?」
譲治「うん、何とか。ごめん紗音、手を貸してくれる?」
紗音「はい、譲治さん」
 紗音は譲治に手を差し出し、譲治はその手を握り体を起こす。その時―――。
 ドサドサドサ。
 譲治の懐から何かが落ちた。それも、一体何処に隠していたのかというほど大量に。
紗音「あら?譲治さん、本を買われたんですか?」
 譲治が落としたのは本の山だった。紗音は地面に落ちた本に手を伸ばす。
譲治「あっ!ちょっ、それは!!」
紗音「一体何の本です?また経営のお勉強をされ―――――」
 本を拾い上げた紗音の手が止まった。紗音の手の中にある本、それはメイドものの同人誌…(18禁)
譲治「しゃ、紗音……?」
 譲治が恐る恐る紗音に声をかける。
 紗音はしばらく本から目を離さなかったが、やがてゆっくりと顔を上げる。その顔はいつもと同じように笑っている。
 しかし、顔は笑顔でも紗音の全身からはドス黒いオーラが迸っている。そのオーラの禍々しさたるや、魔女も悪魔も裸足で逃げ出すほどである!
譲治「ち、違うんだ……、紗音。それは……」
 譲治はしどろもどろになり、言い訳をしようとする。
 しかし次の瞬間、紗音の手の中にある同人誌が真っ二つに引き裂かれた。





「ひぃぃいいいいいいいーーーーーーーーー!!!」





 ドガ!!グシャ!!メキ!!



譲治「ち、違うんだ、紗音!!。それは戦人くんに頼まれて!!」
(都合により顔はお見せできません)
戦人「ふざけんな手前ぇええええーーーーー!!人のせいにする気か!!!」



 グチャ!!!ドチャ!!メキョ!!!



 凄惨な魔女の宴が繰り広げられる一方、嘉音は一人立っていた。そして、手の中には一冊の本があった。朱志香の忘れ物である。
『チェス盤をひっくり返すぜ!嘉音くん!!実は女の子だろう!!』
『な、何を言ってるんですか、戦人様!そんなわけありません!!』
『いや、君が女だろうと男だろうと、そんなこと俺には関係ない。もう俺には君しか見えないんだ!!』
『駄目です、戦人様!僕にはお嬢様という人が!!』
『嘉音くん!!』
『ば、戦人様!!』



嘉音「………………………………………………………………」



 メキャ!!グシャ!!ドサ……。



 後ろでは魔女の宴が終焉を迎えていた。
 そして宴の終わりを感じ、やがて嘉音も顔を上げこう呟いた。





嘉音「転職しようかな………」




































 嵐が過ぎ去って、…あれだけ長いこと街を包んでいた重苦しい雲が、晴れていきます。
 雲からは木漏れ日が差し、…さっきまでの嵐がまるで嘘だったかのよう。



 船着場には、誰かが望んだとおりに、再びうみねこたちが帰ってきて、にぎやかな鳴き声を聞かせてくれました。



 その後やってきた警察により、現場検証が行われました。



 最後まで残っていたと思われる同人誌はついに発見されませんでしたが、発見された同人誌の一部や、想像を絶する凄惨な現場状況に、警察はBL本を含めた同人誌全ての存命は絶望的だと思わざるを得ませんでした…



 魔女の宴がどれほどに凄惨なものだったのか。
 そして、黄金郷が如何に美しいところだったかは、彼らのみに語られる物語…。
 宴が終わった後にやってきた人間たちに、語る物語などありはしない。ただただ、この日に何があったかを想像するほかはありません。



 しかし、…魔女は気まぐれでした。
 この、語る必要の無い物語を、あえて、残し、語ることを許されたのです。



 それから数日後。
 近隣の島の埠頭にて波間を漂う不思議なワインボトルが、漁師によって引き上げられました。

 その中にはびっしりと細かい文字で書かれ、細く丸めたノート片が詰め込まれておりました。

 それこそが、………この、物語。
 謎に包まれた1986年のどっかの日の謎と怪異に満ちた日の正体を、人々はこのノート片によって始めて知ることになります。



 この事件はその後「同人誌大量殺人事件」「同人誌18冊殺し」等と呼ばれますが、世の好事家たちは「魔女伝説連続同人誌殺人事件」と呼び伝えていきました。



 オカルトを好む者は、街を閉ざしての背徳的な儀式の成れの果てであると主張しており、謎に満ちた一日を各々の解釈で残虐に修飾しては、広めていきました。

 しかし、どのような解釈であったにせよ、それらは事実の真相に至るものではありません。



 そして、ワインボトルのノート片は、この謎に満ちた事件を語りつつも、その真相については語っていません。

 いや、ノートの書き手も、真相を知らなかったのかもしれません。

 ……あるいは、真相を、知りたいのかも。



 書き記した人物の自書によれば、…彼の名は、右代宮譲治。



 なお、警察による懸命の捜査の結果、彼の同人誌については、本の一部、…表紙の一部が発見されています。
 表紙の印刷によりどの本の一部か特定できた貴重な例でした。

 …その凄惨な状況に、何の本の一部か特定できない部位も多数あったのですから、その表紙は非常に幸運な一部だったでしょう。

 警察は、表紙が欠損しているという状況から、それ以外の部位が発見されない、あるいは特定できないにせよ、読むのは絶望的だろうと見ています。





 




 それでは、この物語は、右代宮譲治の残したノートの最後の一文で結ぶといたしましょう…。





これをあなたが読んだなら、その時紗音はもう島にいないでしょう。指輪が置いてあるか、いないかの違いはあるでしょうが。
これを読んだあなた。どうか紗音を説得してください。
それだけが私の望みです
                             

右代宮 譲治



―――今日でも「魔女伝説連続同人誌殺人事件」の真相は、暴かれていない。




Another game“Legend of the golden doujinshi”Result


右代宮 蔵臼
 思春期の娘とどう接していいのか分からず、頭を悩ましていました。

右代宮 留弗夫
 戦人が簀巻きになっているのを見て、「オイオイ、俺でもそんなプレイはしなかったぜ。我が息子ながら恐ろしい奴だぜ」と思いました。

右代宮 楼座
 晩御飯は真里亞の好きなハンバーグにしてあげました。

右代宮 霧江
 戦人が簀巻きされるのを目撃しましたが、見て見ぬ振りをしました。

使用人 紗音
 婚約指輪を譲治に返しました。

使用人 郷田
 ベルゼブブにごちそうを作らされました。

右代宮 絵羽
 楼座にアレされました。

右代宮 秀吉
 譲治を励ましました。でもうまくいきませんでした。

右代宮 金蔵
 自作のベア金本をベアトに見られて、ちょっと泣きました。

使用人 嘉音
 自分家具ですから、何も見てませんから。これからも変わらずお嬢様と接します。と、自分に言い聞かせました。
 でも、どうしてもぎこちなくなってしまいました。

使用人 源次
 いつもと変わりませんでした。

主治医 南條
 金蔵のチェスの対戦相手をベアトに取られて、ちょっと寂しかったりしました。

使用人 熊沢
 ああ、おいたわしや…譲治様。
 私には何もできず、こうして物陰から見守ることしかできないのです……。

魔女 ベアトリーチェ
 ベアバト本を買えて満足でした。

右代宮 夏妃
 朱志香が部屋で何か本を読んで、ニヤニヤしていたので心配でした。

右代宮 朱志香
 何故か嘉音によそよそしくされました。

右代宮 真里亞
 晩御飯はハンバーグでとっても満足でした。

右代宮 縁寿
 「戦人お兄ちゃん、ろりこんって何?」って戦人に聞いたら泣かれました。

右代宮 戦人
 縁寿に妙なことを吹き込んだ楼座を闇討ちしに行きました。でも返り打ちになりました。





右代宮 譲治
 紗音に婚約を破棄されました。





 魔女は賢者たちを讃え、黄金郷にて四つの宝を与えるでしょう。
 彼らはそこで、同人誌を蘇らせ、失ったBLを蘇らせることを選びます
 なぜなら、彼らが欲していたものは、どれほど山を成す黄金であろうとも、得られないものだったから。



譲治は失った同人誌を。
朱志香は失ったBLを。
真里亞はデザートのプリンを。

安らかに眠れ、ベアトリーチェ。
二度と妨げられることのない眠りの中で。

勝者は、メイドの魔女、紗音。
うみねこのなく頃に、生き残れた者はみんな。
















































譲治のく頃に














おまけ

譲治「さあ準備は整った。それじゃあみんな行って来るよ」
朱志香「兄貴、本当に行くのかよ」
譲治「もちろんだよ、僕は紗音のことは諦めない。必ずもう一度会って、そして再びプロポーズするんだ。この指輪を渡してね…」
朱志香「そうか…、なら何も言わないぜ。必ず紗音を連れて帰るんだぜ!!」
譲治「ありがとう、朱志香ちゃん。嘉音くんも、元気で」
嘉音「譲治様、道中お気を付けて」
譲治「うん、見送りありがとう。紗音を連れて帰るまで、ここには戻らないつもりだから。それまで、この島のこと頼んだよ」
嘉音「はい、お任せ下さい」
 そして譲治はボートに乗り込んだ。一度だけ振り返り2人に手を振ったが、後は一度も振り返らず去って行った。後にはボートが作った白い波だけが残っていた。
朱志香「行っちまったな…」
嘉音「はい」
朱志香「まさか紗音を追って本当に旅に出ちまうとはな。紗音も紗音だぜ。あれくらいで指輪を返すなんてよ」
嘉音「姉さんは譲治様を少し美化しすぎていたかもしれません。男性ならあのような本を持っていても不思議ではないのに、それを受け入れられないなんて…。あれでピュアな人ですから…」
朱志香「そう言うと、普段は紗音がピュアじゃないように聞こえるぜ」
嘉音「ええ、姉さんはあれで意外に腹黒いですから」
 そう、言い嘉音は軽く笑った。
朱志香「はは、そうかもな」
 つられて朱志香も小さく笑う。
 あの日から、数日間ぎこちなかった2人の関係も、今では以前と全く変わらない。『一部分だけ見て人を決め付けるのは止める』と言ったあの日の誓いを嘉音は忘れてはいなかった。
朱志香「あとは紗音だけだな。一体いつ戻って来るやら」
嘉音「でも、必ず帰って来ます。譲治様と約束しましたから。必ず姉さんを連れて帰るって」
朱志香「ああ、そうだな。頼んだぜ、兄貴」
 朱志香は小さくなったボートに向かって呟いた。空はどこまでも青く澄み渡り、うみねこの鳴き声が六軒島に響いていた。














紗音「ただいま~。お嬢様、嘉音くん、ただ今戻りました」
朱志香・嘉音「「………え?」」
紗音「ご心配お掛けしました。ちょっと譲治さんにお灸を据えようと思って、温泉でのんびりしてきちゃいました。嘉音くんゴメンね。色々面倒押し付けちゃって。あ、これお土産の温泉まんじゅう。お嬢様もどうぞ食べて下さい」
朱志香・嘉音「「…………………」」
紗音「あ……、ごめんなさい。やっぱり怒っている…?」
朱志香「いや…、そうじゃなくて…」
紗音「ううん、いいんです。勝手に休んだ私が悪いんです。でも分かってください。そりゃあ、譲治様だって男性ですから、ああいう類の本を持っていても仕方ないですよ。でもあんなにたくさん、それもメイドばかり!譲治さんは私じゃなく、メイドが好きなんですか!って思ったら頭に血が昇っちゃって。それで、少し譲治さんを懲らしめようと思ったたんです」
朱志香「でも、あの指輪は…?」
紗音「あれはおもちゃの指輪ですよ。ちょっとやり過ぎたかなって思ったけど、あれならすぐニセモノと分かりますから」
朱志香・嘉音「「………………」」
紗音「それで、譲治さんは今どこに?」
朱志香「………もういないよ」
紗音「あら、もう本土に帰られたんですか?」
嘉音「姉さんを探しに、たった今旅立ったよ……」
紗音「………え?」














「紗音ーーーーーー!!必ず見つけるからねえーーーーーーー!!!」










 一方その頃戦人は!!










戦人「何でだぁあああーーーーーーー!!何で勝てねぇええーーーーーー!!」
ベアト「いい加減諦めたらどうだ、戦人。楼座に勝てる人間などこの世におらぬ」
戦人「うるせえ!!男のケンカは負けを認めない限り負けじゃねえんだ!!」
ベアト「お前の相手は女だろうが…。潔く負けを認めないと、見苦しいを通り越して、女々しいぞ」
戦人「それでも俺は負けを認めねえ!!俺をロリコン呼ばわりする限りはな!!」
真里亞「うー、戦人はロリコン!ロリコン!」
縁寿「お兄ちゃんはロリコン!ロリコン!」
戦人「違うつってんだろうが!!」
楼座「さあ、みんなプリンができたわよ。食べたいなら、ちゃんと仲良くしてね」
真里亞「うー、プリン食べる!」
楼座「はい真里亞。縁寿ちゃんに渡してあげて」
真里亞「うー、はい縁寿ちゃん」
縁寿「わー!ありがとう、真里亞お姉ちゃん、楼座叔母さん!」
楼座「ベアトリーチェ、あなたも食べる?」
ベアト「うむ、せっかくだから頂こうか」
真里亞「うー、プリンおいしい!!」
ベアト「ほう、なかなかではないか。素人が作ったとは思えぬ」
楼座「そう、良かった。郷田さんに手伝ってもらって正解だったわ。やっぱりプロは違うわね」
縁寿「お兄ちゃん、プリンおいしいよ。食べないの?」
戦人「……俺はいい」
ベアト「何だ戦人、まだむくれているのか?くっくっく、これしきの事でへそを曲げるとは、縁寿よりもそなたの方が、よっぽど子どもだぞ」
戦人「うるせえな、俺は別に腹なんか減ってねえんだよ」
楼座「まあまあ、戦人くん機嫌直して。ロリコン呼ばわりしたのは謝るから。一緒に食べましょう」
戦人「いいよ、別に」
楼座「そんなこと言わずに。ほら、今日のプリンは自信作よ」
戦人「いいって!俺のことはほっといて―――――」
 その時、俺が払った腕が偶然、プリンを載せたトレイにぶつかった。そして上に載っていたプリンは勢い良く飛ばされ―――――。



 べちゃ。



 そのままトレイを持っていた楼座叔母さんの顔面にぶちまけられた。
戦人「あ………」
真里亞「うー、もったいない」
縁寿「お兄ちゃんが、楼座おばさんいじめた…」
 やがてプリンは重力に逆らえず、楼座叔母さんの顔面から剥がれ落ち、そのまま地面へと落ちた。
戦人「あ、あの………」
 俺は恐る恐る、その顔を見る。楼座叔母さんはさきほど何ら変わらない表情で笑っている。顔だけは。
 やべーよ、これ絶対怒ってるよ。顔は笑っても目が笑ってねーよ。マジヤベーよ…、殺されるよ…。
おい、真里亞。黙って見てないで、楼座叔母さんをなだめてくれよ。俺が殺されてもいいのかよ?プリンなんかどうでもいいだろ、後でいくらでも奢ってやるからよ…。頼むから、楼座叔母さんを止めてくれよ。
 縁寿も何か言ってくれよ…、お兄ちゃんのピンチなんだぞ?ここで、愛する兄を助けてこそ、本当の兄妹なんじゃないのか?真里亞と一緒に、楼座叔母さんをなだめてくれよ。
 ベアト…、お前何笑ってやがる…。そんなに楽しいか?人の不幸がそんなに楽しいか?笑ってないで助けろ!!お前魔女なんだろ!何でもできるんだろ!?だったら魔法の力で楼座叔母さんを止めてくれよ!俺が死んだら、誰がお前とゲームすんだよ!!
 あっ………。やべぇ……。楼座叔母さん、こっち見てるよ。さっきからガン見だよ。微動だにしてねーのに、顔だけはずっとこっち見てるよ。絶対ぇ怒ってるよ。
 いやいや、落ち着け俺。楼座叔母さんだって大人だ。こんなことで目くじら立てたりしないだろ。確かに俺が悪いよ?でもワザとじゃないよ?事故だから。悪気はないから。そうだよ、楼座叔母さんだって鬼じゃねーんだから。素直に謝れば、許してくれるよ。そうそう、そうだ。そうに違いない。そう……、だよね?そうに決まってる!!
 よし、謝ろう!俺も男だ!こういう時は言い訳せずに、素直に謝るべきだ!そうすりゃ、楼座叔母さんだってきっと許してくれる。俺はそう信じてる!!だから楼座叔母さんも、俺を信じてくれ!!
 俺は意を決し、楼座叔母さんに謝った。
戦人「あ…、その……、悪ぃ―――――」


















「食えつってんだろうがぁああああああーーーーーーーー!!!!!!」





「うぎゃぁああああああーーーーーーーーーー!!!!!!」










おしまい







2009.08.01 Sat l うみねこ l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

読ませていただきました~。
はじめまして! 原作HPではそらのむこうを読ませてもらってます!

はじめてのおつかい、誰だろ? と思ったら、真里亞か…って、えぇ!! 戦人は簀巻きで登場!?
序盤からなんか凄いことに…と思ったらやっぱりー! 桜座ーー!
無双がいたるところで炸裂ですね…。
というよりも、戦人以外みんな壊れちゃったみたいですね…。アレされた絵羽が気にかかります。エンドロールまでアレされましたとしか書いてないし……。
真里亞が攫われたシーンはさすが無双、ゴホゴホッさすが母親です。
戦人はひどい目にあってもツッコミ役頑張ったのに最後まで憐れロリ扱い。ガンバレ! きっといつか、誰かが誤解を晴らしてくれる…かな?

それでは、そらのむこうの続きも楽しみに待っています☆
面白いのでがんばってください! 応援してます!!
2009.11.02 Mon l Lily75clover. URL l 編集
No title
ちょっと某ジャンプ漫画銀○っぽいなって思いました☆
すっごく面白かったですw大爆笑でした。
2010.03.10 Wed l 名無しのお兄ちゃん. URL l 編集

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