お待たせしました。そらのむこう第11話が完成しました。
こちらはSS。それでは始まります。

続きは追記から。


 カチ、カチ、カチ。
 心地の良い音が部屋に響く。時計の秒針は一定のリズムで規則正しく時を刻む。その音を聞き、私は浅い眠りの中から目を覚ました。ベッドからのそりと起き出した私はぼんやりと周囲を眺め、自分がいる場所を確認する。
 鼻をつく消毒液の匂い。その匂いを嗅ぎ、そこが学校の保健室だと私はようやく理解した。
 思い出した、午後の授業が面倒だった私は先生に適当な事を言って保健室で休んでいたのだ。ちょっと横になるだけのつもりだったが、いつの間にか眠ってしまったらしい。ちょっと寝過ぎたかな? と、私は少しだけ反省する。その時、不意にカーテンが開かれ、私は思わず目をつむる。
「は~い、起きた起きた! いつまで寝てるの? もう授業も終わったよ」
 そう言い、保険医の先生は問答無用で布団をはぐる。
「もうそんな時間ですか? すいません、ちょっと寝すぎちゃいました☆」
「まったく、あなた今月で何回目? あんまりサボリが過ぎると、先生に目を付けられるわよ?」
「あははは! サボリだってばれちゃいました? まあ、これからは程々にしますので勘弁してください」
「私に言ってもしょうがないでしょ? せいぜい担任の先生に目を付けられないようにすることね」
「は~い、気を付けま~す」
 保険医に適当なことを言いつつ、私は心の中で舌を出す。せっかく便利な部屋があるのだから、有効に活用しなければ。これからも、ちょくちょく使わせてもらおう。
 保健室を出た私は、その足で外へと向かう。どうせ今から教室に向かってもHRには間に合わない。用がないならさっさと帰ってしまおう。
「ん~~。今日は何をしましょうかね?」
 外に出た私は軽く背伸びをし、体を伸ばす。その時……。



「詩音!」



 不意に声を掛けられ、私は声の聞こえた方へ顔を向ける。その人の顔を見て、私は頬を緩ませた。そこには、私のよく知る人の姿が……。



「お姉! 来てたんですか!」



 そこにいたのは私の双子の姉、園崎魅音だった。










 そらのむこう 第11話

「園崎詩音」











「もう、突然どうしたんですかお姉? 来るなら来るって言ってくれれば良かったのに」
「あはははは! ごめんごめん、ちょっと驚かそうと思ってね。どうしたってわけじゃないけど、ちょっと興宮に用があってね。久しぶりに顔を見に来たんだよ」
「ふ~ん。でもお姉、こんな平日に街を出歩くなんて、ひょっとしてサボリ? マズイんじゃないですか、委員長ともあろう者が」
「今日は創立記念日。詩音と一緒にしないでよ~、アンタの学校こそ年に何回創立記念日あんのよ?」
「あはははは、まあ私のことは気にしないでください。でも、あんな小さな学校でも創立記念日なんてあるんですね」
「もちろん! 馬鹿にしてもらっちゃ困るよ。これでも雛見沢で唯一の学校だからね。そりゃあ興宮の学校に比べたら小さいし生徒の数だってたかが知れてるけど、熱い雛見沢魂は街の子なんかに負けないよ! なんせ村の子は、鬼の血を引いているからね。こと勝負事に関しては、並々ならぬものを持ってるよ」
「お姉は勝負事が好きですからねえ。こんな委員長の下だったら、さぞやクラスメイトも鍛えられるでしょうね」
「まあね。勝負と名のつくものなら、アタシの学校の生徒に敵う者はいないかな? あっはっはっは!!」
 そんなふうに、お姉は自身たっぷりに笑っている。お姉とは久しぶりに会ったのだが、変わっていない。相変わらず勝負事と聞くと目の色が変わる。勝負事で常に一番を狙うのは私も同じなのだが、お姉は私とは少し違う。
 私は結果が一番であれば他のことはどうでも良いのだが、お姉は一番になる過程を楽しんでいるのだ。勝負の最中での駆け引きや、相手との手に汗握る緊張感など、勝負そのものを楽しんでいる。そして、決着がつけばまた良い勝負ができるようにと、互いに褒め称えるのだ。同じ双子でもこうも違うものなのかと、私は改めて驚いた。
 念のため説明しておくと、魅音と私は双子の姉妹だ。魅音が姉で、私が妹。今はわけありで別々に住んでいるのだが、昔は一緒に暮らしていた。小さい頃は双子であることを利用し、ことあるごとに互いの服を入れ替えて遊んでいたものだ。一卵性双生児でも、とりわけ似ている私たちは、例え親でも見分けがつかない。それが面白くて、いつも家族を困らせていたものだ。
 もっとも姿形は別として、性格まで瓜二つというわけではない。今入れ換わりをしたとして、どこまで隠し通せるかはちょっと分からない。とは言え、見た目が同じなのだから、ほとんどの人が騙されるに違いない。それぐらい、私たちは同じ存在なのだ。
「詩音、アンタまた学校サボったの? いい加減にしないと進級できないよ~?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと出席日数が足りるよう、サボってますから☆」
 そんな風に、私たちは他愛のないお喋りに花を咲かせる。なにしろお姉は今、雛見沢の園崎本家で暮らしている。お姉が興宮まで頻繁に来ることはないし、私も本家の意向で雛見沢に入ることは制限されている。普段なかなか会う機会がないので、今日みたいなことは本当に貴重だ。
「どうです? 雛見沢は何か変わったことは?」
「そんなに変わったことはないよ。田舎だからね~、興宮みたいに新しい物が建ったりもないし。あ、でも一つあったかな」
「なんです?」
「綿流しのお祭り。今年はすごいよーーー!!」
「そうなんですか? 綿流しのお祭りって名ばかりで、村の大人が神社でする飲み会でしょ?」
「去年まではね。でも、今年からちゃんとしたお祭りをすることになったんだよ。せっかくだから村の名物にして、観光客にも来てもらおうってね。屋台だけじゃなくて、演舞や布団の綿を実際に流したり、イベントにも力を入れているからね。今年は盛り上がるよーーー!!」
「へえ~、そんなことになっているんですか。なんだか面白そうですね」
「なにしろ、この祭りで村興しをしようってんだからね。みんな気合の入れ方が違うよ。詩音も綿流しにおいでよ」
「そうですね、暇だったらお邪魔します。でも、そんな企画が上がっているなら、お姉も忙しいんじゃないですか?」
「そうなんだよ~、お祭りはまだ先なのに、毎週みたいに集会があるから、その度に私も婆っちゃと一緒に出席してさ。今じゃ、私が婆っちゃの代わりに発言することも多いから大変だよ」
「あははは、お姉も毎日鬼婆と顔を合わせて大変ですね。ご愁傷様です」
「まあね。でも、婆っちゃだっていつもあんなに怒っているわけじゃないよ。詩音だって一緒にいれば、婆っちゃの良い所が分かると思うよ?」
「私は遠慮しておきます。鬼婆の世話はお姉一人でしてください☆」
「はいはい。詩音はホントに婆っちゃが苦手だねえ」
「むしろ、鬼婆と仲良くできる人間がいること自体、私は不思議ですけど?」
「あははは、違いないよ。でも、私も随分実家に帰ってないなあ。父さんと母さんは元気?」
「そりゃもちろん。ヤクザが元気なくなったら、商売上がったりです」
「あはははは、本当だね。でも、久しぶりに母さんの顔見たくなっちゃったな。近いうちに帰るって、伝えといて」
「了解です。でも、見たいのは母さんの顔だけ?」
「う~ん、父さんの顔はしばらく見なくてもいいや。あははははは!」
「あはははは、同感です」



「それじゃあね、詩音。また近いうちに遊びに行くから」
「ええ、また来てください」
 そうして、お姉は自転車に乗って喫茶店から去って行った。お姉とこんなに語りあったのは本当に久しぶりだった。小さくなっていくその姿を見届けると、私は家路へと着く。

 私が向かった先。そこは興宮の実家ではない。街の中心部にあるにしては、やけに人気のないマンション。そこが私の隠れ家だった。
 親父の組が、ちょっとしたゴタゴタで差し押さえた物件らしく、そのせいで居住者はほとんどが逃げてしまったのだとか。少し人気がなくて寂しい気もするが、私としては気に入っている。騒音被害や隣人とのトラブルの心配もなく、隠れ家としてはうってつけだ。
 親父のうるさい説教を聞きたくない時などは、家に帰らず大抵ここで過ごすことにしている。そんなわけで、私はここ数日家にも帰らず、この隠れ家で過ごしているのだ。
「ただいま~」
 帰宅した私は買い物袋の中身を広げ、さっそく夕飯の準備に取りかかる。実家と違って食事の準備は自分でしなければならないが、たまには良いものだ。こうして自分で作ると、いつもご飯を作ってくれる母さんの苦労が身にしみて分かる。たまには私がご飯を作ってあげようかな?

「ん~、おいしい! さすが私!」
 そう言って、完成したカレーを味見し、私は自画自賛する。まあ、おいしく作れたのだから良いだろう。しかし少々作り過ぎてしまった。どうも一人分だけ作るというのは難しい。未だに作る量を間違えてしまう。仕方がないから冷凍でもしておこうかな? そう思った時、チャイムの音が鳴った。
「ん? は~い」
 私は玄関のカギを開ける。隠れ家を知る人間は限られている。私の下を訪れる人間といったら……。
「お久しぶりです、詩音さん」
 そこに現れたのは黒スーツにサングラスの、いかにもな感じの男。
 名は葛西辰由と言い、親父の相談役で私のボディーガード兼世話係と言ったところか。
 面倒見の良い男で私の身辺を色々と世話をしてくれる。そんなわけで、私にとってはちょっとした執事の様な感じだ。
「やっぱり葛西でしたか。ちょうど良かった、上がって上がって。晩御飯作りすぎちゃったんですよ、手伝ってください」
「今夜はカレーですか、良い匂いですね。ご相伴に与ってもよろしいんですか?」
「ええ。ただし、ご飯3杯は食べてください。お米も炊きすぎちゃって」
「はい、頂きます」

「いただきま~す」
 私は早速カレーをスプーンですくい口に入れる。口の中に、香ばしいカレーのスパイスの香りが広がった。
「ん~、おいしい!」
 ほどよい辛さが、より一層食欲を刺激する。私はカレーを口の中に運び続ける。
「どうです葛西、お味の方は?」
「とてもおいしいです。この味付けは茜さんに?」
「ええ、母さんに教えてもらいました。そんなに似てます?」
「はい、よく似ています」
 そう言って葛西はカレーを口に頬張る。そんな葛西を見て、私は一人ニヤニヤする。
 これは女の勘なのだが、葛西は昔、母さんのことが好きだったのではないだろうか? どうも葛西は昔、母さんと親父とちょっとした三角関係だったらしい。親父に出し抜かれ恋破れたものの、今でも親父の右腕として母さんの傍から離れることができないようだ。
「そして、私に若い頃の母さんの面影を重ねているわけですか。う~ん、切ない」
「は? 何ですか、詩音さん」
「ん~ん、何でもないです☆」

 食事を終え、一息ついた私は葛西に話を切り出した。
「それで、今日は何の用です? まさか私の所にごはんをたかり来たわけじゃないんでしょう?」
「はい、茜さんから言伝を預かっています。いい加減、家に帰って来いとのことです。もう何日も御実家に帰られていないのでしょう?」
「え~、面倒くさいなあ~。最近親父のやつ、説教ばかりなんですよ?」
「それも、親父さんの親心というやつですよ。詩音さんを大事に思っているからこそ、苦言を申し上げるんです」
「そんなにガミガミ怒る必要ないと思うんですけどね~。子どもは褒めて育てないと」
「では、詩音さんを褒めるばかりの親父さんが良いと?」
「……それも気持ち悪いです。要するにですね、たまには褒めてほしいということなんです。いつもいつも褒めろとは言わないですけど、たまにはアメがないと。ムチばかりじゃ、そのうち私グレますよ?」
「だとしたら、もうすでに手遅れですね。詩音さんをグレていないと言うのなら、世の中の非行少女は全員優等生だということになります」
「ちょっと葛西、それどういう意味ですか!」
「どうしたもこうしたも、私は事実を述べただけですが?」
「ムカーー!! 私ほどできた人間はいませんよ! 分かりました、帰ればいいんでしょう!? 明日は家に帰りますよ!」
「そうした方が良いでしょう。茜さんも、本当のところは心配していると思います。年頃の娘が家を出て一人暮らしとなると、物騒なことも多いでしょうから」
「大丈夫ですって。いざとなったら、護身用のスタンガンで10万ボルト喰らわせてやりますから!」
「やれやれ。その様子だと、詩音さんが襲われるよりも、不審者が感電死してしまわないか心配です」
「何言ってんですか、そんなの正当防衛です。むしろ、そのほうが社会貢献になるじゃないですか」
「ははは。それだけ気が強いなら、不審者も近づいては来ないでしょう」
 そんな風に、私は葛西とくだらない話を続ける。
 さて、葛西にも釘を刺されたし、明日はいい加減実家に帰ろうかな。親父の説教は面倒だけど、母さんも心配しているみたいだし。あ、今度お姉が来ることも伝えておかなきゃ。お姉が実家に帰って来るのは久しぶりだ。せっかくだから、ごちそうを用意して出迎えてあげようかな? 明日はそのことも含めて母さんと相談してみよう。
 これからのことをあれこれ考えているうちに、夜は更けていった。明日は久しぶりの実家。久しぶりに、母さんとのんびりお喋りをして過ごそうかな……。



「待て、詩音ッ!! 話はまだ終わっとらんぞッ!!!」
「あーーーッ、うるさいッ!! 私のことは放っといてよッ!!!」
 そう言い私は親父の部屋を出て行く。久しぶりに実家に帰ったのだが、さっそく私を待っていたのは親父の説教だった。これ以上説教を聞きたくない私は親父の部屋を抜け出し、そのまま母さんの部屋へと逃げ込む。
「随分と父さんに絞られているみたいだね?」
 母さんは可笑しそうに笑いながら話しかけてくる。母さんから見れば面白いかもしれないが、私はたまったものではない。
「冗談じゃないです。なんで帰って早々説教受けなきゃならないわけ!? 畜生ーー、先公めッ! サボリのこと家に連絡しやがってッ!!」
「観念しな。サボったお前が悪いさ」
「だってつまんないんだもん」
「そりゃあ学校の勉強なんて、大概つまらないものさ。だけど、いつかそれが大切だってことがお前にも分かるよ」
「本当に? 勉強なんて実生活でなんの役に立つんですか?」
「直接関係することは少ないよ。けどね、何かに向かってひたむきに頑張る姿勢は、後で大きな財産になるのさ。今は分からなくても、いつかきっと分かる日が来るよ」
「ふ~ん、そんなものですかね? でも、やっぱり説教は勘弁だなあ~。ねえ、母さん。なんで父さんみたいな人と結婚したの?」
「やれやれ、そんなこと言うと父さんが悲しむよ」
「だって、父さんっていつも怒ってばかりじゃん!」
「お前が心配だから怒っているのさ。説教は、あの人なりの愛情表現だよ」
「愛情なら説教以外で示して欲しいです」
「ははは、お前からしたらそうだろうね。でも、父さんは不器用な人だからね。そうすることでしか、自分の気持ちを伝えられないんだよ。本当は誰よりもお前のことを大切に思っている。例え不器用でも、性根は真っすぐな人なんだ。母さんも、父さんのそんなところに惹かれて一緒になったのさ」
「……そうなんですか? う~ん、私にはよく分からないですけど……」
 説教は父さんなりの愛情表現か……。だけど、例えそうだとしてもやっぱり説教は聞いていて面白くない。私としては、子どもは褒めて伸ばしてほしい。
「そういえば、母さんって父さんと一緒になる時に鬼婆に勘当されたんでしょ? どんな感じだったの?」
 私が聞いた話では、母さんが父さんと一緒になる時、鬼婆に反対されて大喧嘩したのだとか。あの天下の園崎明王と、母さんがどんなやりとりをしたのかはかなり気になる。
「お前も下らないことに興味が尽きないね。まあ、そろそろ話しても分からない歳じゃないか。母さんもね、若い頃はかなり斜な生き方をしてて、そりゃあ鬼婆さまと喧嘩したものさ。しかも連れてきた男が任侠者だったわけでしょ? そりゃあ大喧嘩さ」
「そ、それでどうなったの?」
「鬼婆さまは、お前の許嫁は頭首が決める! お前は黙って頭首に従え! ってね? それを聞いた私も頭に血が昇って、こん糞婆ァ!!! この場で斬り伏せたらあって、大立ち回りよ。互いに板の間の日本刀抜いて、チャンチャンバラバラ。あっはっはっは」
「ひえーーー……。あの鬼婆と殺陣演じたわけ? ひゃーーー、母さんやるねえ……」
「まあねーー。母さんこう見えて、若い頃は武闘派だったしー。互いに剣道有段だったし、そりゃド派手だったわよ。周りはオロオロ、あ~、面白かった」
「なるほどねえ……。その騒ぎで勘当されたの?」
「そうよ、勘当上等!! 遠慮なく勘当もらって、めでたく父さんと籍を入れたわけ。まあ、けじめってことで爪を剥がされたけどねー。ほら、左手の爪だけ歪でしょ」
「うわぁ……。それで鬼婆と母さんはずーっと仲が悪いわけだ……」
「あははは、詩音、本当はね? そんなことはないの。私と鬼婆さまは、ちゃんと仲がいいんだよ?」
「えーーー!!? うっそだぁ!!」
「鬼婆さまには面倒な世間体があるからね。一度でも勘当した以上、甘くすると示しがつかないし。だから私も、親族会議とかでは大人しく引っこんでいるけど、たまーに遊びに行って、のんびりとお茶とか飲んでいるよ」
「うそだーーーー、信じらんないねぇ……」
「あははは、本当さ! 母さんと鬼婆さまは今でも仲良しなんだよ」
 本人の口から聞いているとはいえ、にわかには信じられない。鬼婆と母さんの不仲は親族でも公然の事実として通っている。その母さんが、鬼婆と仲が良いなんて信じられない……。
「周りが言う程、母さんと鬼婆さまの仲は悪くないんだよ。でもね、それでも私が鬼婆さまに勘当をもらったのは周知の事実。園崎本家からすれば、私が異端であることに変わりはないのさ」
 母さんは、ほんの少しだけ真面目な口ぶりで話す。
「母さんはいいんだよ? 父さんと一緒になるために、自分で決めたことなんだから。でも、お前は違う。お前は子どもの頃から、魅音とは違う生き方を強いられてきた。できることなら、母さんは2人とも分け隔てなく育てたかった……」
「…………母さん……」
「本家からすれば、お前が魅音より目立つような振舞いをすることは面白くないのかもしれない。でも、それはお前の個性なんだよ? 例え魅音とは違った生き方だとしても、アンタはアンタの人生を歩みな。母さんはいつだってお前を応援しているよ……」
「…………うん……。ありがとう、お母さん…………」
 そう言って、母さんは私を応援してくれる。事情が違うとはいえ、母さんも本家からすれば異端であることには変わりない。そんな母さんだから、同じ異端である私には思う所があるのかもしれない……。母さんなりの応援を、私は胸に刻む……。
「……ありがとう。これからは、ちょくちょく帰るね……」
「いつでも帰っておいで。ここがお前の家なんだから」
 そう言って、母さんは優しく微笑む。
 本家からは嫌われている私だけど、この人だけは私の味方。
 この先、色々差別されることはあるだろうけど、きっと大丈夫。
 だって、私には母さんがいるのだから。



 のどかな午後の昼下がりだった。私はいつものように、ふらふらと買い物に出かけていたのだが、ふといつもと違う道を通ってみることにした。変わり映えのない普段の生活に新たなスパイスを加えたくて、わざと遠回りをしてみる。気まぐれで通ってみた新たなお買いものコースを、私はのんびりと歩いて行く。普段通らないので分からなかったが、こうしてみるとわりと近所であるにも関わらず、意外と知らないことが多かった。
 小さい店なので、今まで気付かなかったパン屋さん。近所なのに来たことのない公園。知らないうちに新しいアパートが建っていたり、こうしてみると小さな発見が色々とあった。たまには散歩がてら、知らない道を通るのも良いものだと私は思う。その時、新たな発見がまたあった。
「ん? こんな所に喫茶店? へえ~、新しくできたんですね」
 私の知らないうちに、新しい喫茶店ができていた。ちょうどいい、少しここで休憩していこう。私は真新しい店のドアを潜った。が…………。

「魅音さーーーーんッ!!!」

「きゃあああーーーーーッ!!! 何この変態ッ!?」
 私が店に入るなり、突然眼鏡の男が飛び出してきた!
「いつもいつも、お手伝いありがとうございます! しかし、うちで働く以上やはり制服を着ていただかなければ。さあ! 今日こそ、このエンジェルモートの制服を着て頂きます!」
「ちょ……、何なんですかアンタ!? 近い近い! ちょっと離れてください!!」
「そうはいきませんよ、魅音さん! 今日こそこの制服を着て頂きます! そして、我がメイドヒストリーに新たな1ページを……」
「いい加減にしろッ!!!」
「ぐふッ! メイドは滅びぬ……。何度でも甦る……。それが人類の夢だからだッ!!」
 訳の分からない事を口走りながら変質者は床に伏せる。何なのこの変態!? お姉の知り合い!?
「いい加減にしないと警察に突きだしますよ!! それともこっちのスタンガンのほうがお好みで?」
「……い、いやだなあ魅音さん。ほんの茶目っけじゃないですか。冗談ですよ、冗談」
「ふん、どうだか。大体、私、魅音じゃありません。魅音の双子の妹の詩音です」
「…………え? ええッ!!?」

「先程は失礼しました。そうですか、魅音さんの双子の妹さんでしたか。お恥ずかしいところをお見せしました」
「本当ですよ。相手が穏便な私だから良かったものの、普通なら警察に突きだしているところです」
「ははは、お恥ずかしい。てっきり魅音さんかと思いまして。つい、いつもと同じ行動をとってしまいました」
「……お姉にはいつもあんな行動とっているんですか?」
「ああ、誤解しないでください。別にやましい気持ちがあるわけじゃありませんよ? あれはなんというか……。まあ、コミュニケーションの一種です」
「ふぅん、お姉と仲がいいんですね」
「まあそれなりに。魅音さんと、そのお友達とは少なからず交流があるもので」
「一体どんな交流があるのか疑問ですけど……」
「ははは、まあそれはおいおい。ああ、すいません。自己紹介が遅れましたね。私は雛見沢村で診療所の所長をしている、入江京介と申します」
「え!? 診療所って、お医者さんなんですか?」
 ちょっと意外だった。こんな変態が診療所で所長をしているなんて。でも、最初の変態ぶりはともかく、私がお姉ではないと知った後の対応は良識のあるものだった。ふ~ん、お姉にこんな知り合いがいたのか。
「数年前から雛見沢で診療所を運営させて頂いています。以後お見知りおきを」
「へーー。それで、診療所の所長さんがこんな所で何を?」
「はい、実はこのお店を立ち上げる時に、この店のオーナーさんに頼まれまして。新店舗の制服をプロデュースして欲しいと」
「ということは、この店の制服を所長さんが考案したと?」
「はい。どうです、可愛いでしょう? メイドの華やかさと女性の美しさを融合させた全く新しいコスチューム! まさにメイドの歴史に新しい1ページを刻みこむ、夢の制服! これこそ正に桃源郷! 現代のユートピアなのです!!」
 なるほど、この入江京介という男がどのような人物かは大体分かった。社会的地位はあるが、人格に著しい問題を抱えたド変態男だということだ。
 先程から店のウェイトレスの格好を観察しているが、本当に此処が喫茶店か疑ってしまう。ハイレグだか、スクール水着だか分からないが、妙な飾り付けを付けた扇情的なその格好は喫茶店のウェイトレスとは思えない。こんな店が街中で公然とオープンしているということは、警察も黙認しているのだろう。きっと、この店常連の刑事か何かいるに違いない。興宮も物騒になったものだ。
 それにしてもこんな変態と親交があるとは、しばらく会わないうちにお姉も随分と変わったものだ。まあ、園崎家次期頭首を目指すとなると、まともな精神ではいられないのだろう。お姉に同情する。
「さっきの所長さんの口ぶりからすると、お姉って此処で働いているんですか?」
「ええ、オープン前から色々と手伝ってもらっています。でも、魅音さんはうちの制服を着てくれなくて……。私としては、是非着てもらって私のメイドメモリアルにその姿を残しておきたいんですけどね」
「あははは、お姉は昔から堅いですからね。そういう格好は絶対しないと思いますよ」
「そうなんですよ。何度もお願いしているんですが、一向に着てくれなくて……。本当に残念です」
「でも、お姉ってああ見えて案外可愛い物が好きだったりするんですよね。人前じゃ絶対着ないだろうけど、更衣室でこっそり着替えているかもしれませんよ?」
「本当ですか? いや~、そうだとしたら実にもったいない。う~ん、更衣室にも防犯カメラの設置を検討するべきか?」
「うふふふ、所長さん。防犯カメラの意味、分かっています?」
「あっはっはっは! 冗談はさておき、一度は魅音さんの制服姿を見てみたいものです」
「目が笑っていませんでしたよ? まあそんなに見たいんなら、私が撮ってきてあげましょうか?」
「ええ!! 本当ですか!?」
「はい。お姉の弱みを握れるし、小遣い稼ぎにもなるし、一石二鳥です☆」
「いや~、ありがとうございます。詩音さんとはいい友人になれそうです」
「こちらこそ、所長さんとはいい金づるになれそうです」
 互いの利害が合致し、私たちは握手を交わす。お姉の知り合いにこんな面白い変態がいたとは。ちょっと面白くなりそうだ。



「あはははは、そりゃ監督だよ! 入江監督」
 夜、私は今日の出来事を電話でお姉に話していた。所長さんのことを話すと、お姉は所長ではなく、何故か監督と話す。
「監督? 所長じゃなくて?」
「うん、診療所の所長には違いないんだけどね。少年野球の監督もやってるんだよ。だから監督。こっちじゃ、所長さんなんて言う人いないよ」
「ふ~ん、意外ですね。あんな変態なのに、少年野球の監督なんてさわやかなことしているんだ」
「あはははは、まあ監督のメイド好きは雛見沢でも有名だからね。でも、根は良い人だよ。腕もあるし、患者さんからの評判も良いよ」
「へえ、人は見かけによらないですね。案外まともなんだ、あの制服以外は」
「まあね~、さすがにあの制服だけは着る気にはならないね」
「大体、なんでお姉はあんな店で働いているんですか?」
「実はね。あのお店、義郎叔父さんが経営しているんだよ」
「ええ!? そうなんですか?」
「うん。それでね、人手が足りないからお店を手伝ってくれって、頼まれたんだよ。でも、ホントのところは、私にあの制服を着させたいだけなんじゃないかな?」
「叔父さんなら考えられますね。スケベオヤジめ」
「ま、私は意地でも着ないけどね。だから普段もホールじゃなくて、裏で皿洗いなんかやってるよ」
「まあ、お姉ならそうでしょうね。でも、義郎叔父さんがオーナーか……。確かに叔父さんならやりそうですよね。しかも、入江監督とコラボか……。最凶タッグじゃないですか」
「そうなんだよ~、2人ともしつこくて……。これ以上しつこいなら、バイト止めようかな?」
「お姉、ちなみにバイトって時給どれくらいですか?」
「え? う~ん、バックヤードはともかく、ホールはかなり……、って、アンタホールで働くつもり!?」
「あはははは。まあ、時給が良ければですけど☆」
「しお~ん、アンタには恥じらいってもんがないの?」
「お姉が気にしすぎなんですよ。大体、本当は可愛い物好きなくせに、全然そういう服を持っていないじゃないですか。私の服、貸しましょうか?」
「…………え? お、おじさんはいいよ……。そんなの着たって似合わないだろうし……」
「双子なんだから、似合わないわけないじゃないですか。たまにはスカートぐらい穿いたらどうです?」
「む、無理無理! あんな足が見えるような服、とても着れないよ……」
「運動着は平気で着ているくせに……。はあ、そんなんじゃ、いつまでたっても彼氏なんかできませんよ?」
「い、いいよ別に……。気になる様な男子もいないし……」
「本当ですか~? 実は1人や2人くらい、いるんじゃないですか?」
「い、いないよいないよ!! そんな人!!」
「怪しいですね~。今度お姉の学校にこっそり行ってみようかな?」
「わーーー!! いい!! 来なくていいから!! 詩音来たら追い返すーーー!!!」
「あはははは! ムキになって否定するところが余計に怪しいですよ、お姉」
 私とお姉はそう言って、他愛のないお喋りを続ける。こんな風にお姉と長電話をするのも、なんだか久しぶりな気がする。
 私とお姉はいつまでもお喋りを続け、夜はしだいに更けてゆくのだった……。



 翌日、お姉からエンジェルモートの情報を仕入れた私は再び店に来た。
「こんにちは、監督。また来ちゃいました」
「おや、その呼び方は魅音さんに聞いたんですか? 雛見沢の人は、だいたい私をそう呼びますからね」
「はい、昨日お姉から聞きました。それより監督、ここってまだ、バイトの募集しています?」
「ええ、もちろん。ひょっとしてバイトの希望ですか?」
「はい、義郎叔父さんの力になりたくて☆」
「ははは、それは感心ですね。バイトはバックとホールがありますが……」
「ホールで」
「それはありがたい! ありがとうございます、詩音さん! ではさっそく……」
「あの、面接とかってないんですか?」
「ありません。メイドに相応しければ即採用です」
「さすが義郎叔父さんが経営する店。分かりやすいですね」
「ええ、私も義郎さんとは付き合って日が浅いですが、本当に話の分かる人で」
「あははは、監督とは気が合うと思いますよ。でも、私には近づかないでくださいね」
「ははは、では衣装合わせを……。ああ、すいません」
 監督は女性スタッフを呼び止めると、私の衣装合わせを頼む。私は彼女に連れられ更衣室へ入りそこでサイズを合わせてもらった。しかし、改めて見るとスゴイ衣装だ。
「ひゃ~、スゴイ格好ですね。ホント、なんで警察に捕まらないか不思議です」
 こんな制服で営業できると考えていた監督と叔父さんの気を疑う。まあ、できているんだけど。
「確かに、お姉にはこの格好は無理ですね。私でもちょっと躊躇しますからね。ま、減るもんじゃないし、いっか!」

「監督~、おまたせしました!」
「ん? おお!!」
「どうです監督、似合います?」
「……素晴らしい。私も多くの女性を見てきましたが、あなたほど着こなせる人は初めてです。この制服は詩音さんの為に作られた様なもの! 制服と詩音さん自身が見事に調和し、芸術とも言えるフォルムを生み出している! 今この瞬間、メイドとこの店に新たな歴史が刻まれました!!」
「もう、監督ったら、そんなに褒めないでくださいよ。でも、あんまりジロジロ見るとスタンガン喰らわせますよ☆」
「いや~、手厳しいですね、詩音さん」
 最初はちょっと抵抗があったが、こうして見ると案外可愛いかもしれない。これで高い給料もらえるのなら安いものだ。我ながら、良いバイトを見つけたものだ。
 と、その時、店の中に見覚えのある人物が入って来た。
「こんにちは~。監督、手伝いに来たよ」
「これはこれは、いつもありがとうございます、魅音さん」
「あらお姉、こんにちは」
「えッ!!? ちょ……、詩音……、な……、何その格好ッ!!?」
「どうです? 似合いますか?」
「ア……、アンタッ……!! ホントに着ちゃったのッ!!!?」
「可愛いでしょう。思っていたより良いですよ、この制服」
「実は今日から詩音さんにもバイトを手伝ってもらうことになったんですよ。彼女の希望により、ホールで働いてもらいます」
「た、確かに昨日バイトのこと色々聞いていたけど……。本気でその格好で働くわけ!?」
「まあまあ、減るもんじゃないですし」
「そうですよ、魅音さん。彼女が希望したことですし、本人の意思は尊重しないと」
「……いや、まあ……。詩音がしたいって言うんなら別に…………」
「どうですか? お姉も一緒に」
「へ!? む、無理無理無理!! アタシはそんな格好できないよ!!」
「いいじゃないですか、お姉もたまには女を磨かないと」
「いや、いいからそういうの! 詩音一人でやってよ! おじさんにはそんな格好似合わないよ!」
「いえ! そんなことはありません、魅音さん!」
「へ?」
「確かに詩音さん一人でも素晴らしい! しかし、美人双子姉妹がこのメイド界最先端コスチュームを着て2人並ぶその姿は、正に主の降臨にも勝るとも劣らぬ神々しさを放ち、全人類に祝福を与えんとする天使の写し身!! その美しさは、例えどんな素晴らしい絵画、写真、記録媒体を用いても完全に残すことは不可能! だからこそ、今ここで生きている人々にその姿を現すことこそが貴女達の使命であり、この興宮、鹿骨市、そして全日本国民の為にこの制服を着て頂くのが貴女方の天命なのです!!!」
「だそうですよ、お姉」
「は……、はあッ!!? 何言ってんの監督!!」
「さあ、魅音さん! 今すぐ、このエンジェルモートの制服を着て下さい。そして、詩音さんと共に全ての人類を約束の地へと導くのです。それこそが私、入江京介が思い描く至上の楽園…………。メイド・イン・ヘブン!!!」
「ちょ、ちょっと監督! 目が本気だって!! ストップストップ!!」
「お姉~、観念してください!」
「さあ! 今すぐ!!」
「ちょ、ちょっと……! ダメ……、ダメだってば!!」
「さあ!! さあッ!!! 魅音さーーーーーーーんッ!!!!!」
「…………い、嫌ッーーーーー!!!」





「いい加減にしろッ!!!!!」





「ぐふッ!! メイドは滅びぬ……。何度でも甦る……。それが人類の夢だからだッ!!!」
「あははははは!!」



 監督はお姉にKOされても、まだメイドメイドと呟いている。お姉はカンカンだが、私は可笑しくてたまらない。
 こんな風に、お姉と馬鹿騒ぎをするのはいつ以来だろう? なんだか懐かしい感じがした。面白い人間もいるし、これからこの店でお姉と一緒に働くと思うと、なんだかちょっとワクワクした。
 退屈だった私の生活にはなかった新たなスパイス。お姉と監督と、この店で働く。それは私にとって、新たな楽しみの一つになるに違いない。



 でも、私は知っている。楽しいことは、長くは続かないものなのだ……。





「聖ルチーア学園?」
「はい。先日の親族会議で決まった、詩音さんの転校先です。各界要人御用達の名門校で、全寮制のお嬢様学園だそうです」
「…………ちっ、鬼婆め……。とうとう私を寺に閉じ込める気か…………」
 いつかはこの時が来るだろうとは思っていたが、それは私が思っていたより早かったようだ……。
 私の“詩音”という名には“寺”が含まれている。これは、寺に閉じ込めるという意味を持っている。
 一方、姉の魅音には“鬼”という字が入っている。これは鬼を継ぐ者、つまり園崎本家の正当な後継者という意味だ。
 私と違い、姉の魅音は園崎本家において絶大な力を持っている。今は鬼婆が頭首であるとはいえ、老体だ。何から何まで鬼婆が園崎家の全てをしきるのは無理な話だ。
 そんなわけで、姉の魅音は次期頭首でありながら、その力は鬼婆のそれに匹敵する。現に、親族会議ではお姉は鬼婆の言葉を代弁している。お姉の言葉は鬼婆の言葉なのだ。園崎本家におけるお姉の発言力は、母さんや父さんよりもずっと大きい。
 一方、私の力は無いに等しい。今さら説明する必要もないと思うが、私は園崎本家から嫌われている。それは、私が魅音の双子の妹だから。
 歴史の事実から見ても、跡取りが2人いるというのは、後々におけるトラブルの火種となる。だから園崎家の家訓には双子が生まれた時は、産湯に浸ける前に絞め殺すという慣わしが伝わっている。
 実際に鬼婆は、生まれたばかりの私の首に手を掛けたらしい。その時にどんなやりとりがされたのかは知らないが、命知らずな親族が止めたのか、もしくはその日たまたま鬼婆の機嫌がすこぶる良かったに違いない。
 そういうわけで、私はこうして息をしているのも鬼婆に感謝しなくてはいけないらしい。命があるだけマシというわけだ。
 しかし、例えそうだとしても私からすれば堪ったものではない。生まれた時から魅音と差別され、本家のために寺に閉じ込められるなど我慢ならない。
「…………あ~あ、とうとうシャバともお別れか……。いずれ来るとは思っていたけど、案外早かったですね……」
「詩音さんが言いたいことは充分わかっているつもりです。ですが、これは園崎本家の決定です。詩音さんもその辺りのことは…………」
「分かってますよ。鬼婆の指示は絶対でしょ? 私みたいな小娘が逆らえるわけないし……。ねえ、葛西。そのこと、お姉は知っているんですか?」
「…………いえ。今回に限っては、親族会議のことは魅音さんには伏せられています」
「ま、そりゃそうでしょうね。お姉に伝えたら話がこじれるだろうし……。鬼婆もその辺り分かっていますね」
 お姉は私と違い、ことあるごとに私に気を遣う。自分が次期当主として祀り上げられているのに対し、私が本家から差別されていることに引け目を感じているのだろう。そういう性格なのだ。
 魅音にだけ饅頭が与えられると、二つに割って私に持って来る。与えられたのがあめ玉なら、私の表情を窺って、同意が得られるまで口には入れない。
 そこへ行くと私は冷たい。自分だけが得できるなら、相手なんか気にしない。いただきます、ごちそうさまの二つ返事で口に放り込む。もちろんそれは、充分な姉妹愛が互いにあるのを前提にした上での話なのだが。
 私は魅音のそういう性格を充分知っていたので、学園に閉じ込められる際は魅音が何かしら私を庇ってくれるのではないかという、淡い期待を持っていた。しかし、そこのところは鬼婆も分かっているようで、今回のことは完全に魅音には伏せられている。所詮、私が抱いていたのは儚い希望だったと言うわけだ……。
 ならば、自分から魅音に話してしまおうか? 一瞬、そう考えた後、私はすぐに首を横に振る。いくら魅音が大きな発言力を持っていようと、それはあくまで鬼婆の代理としてだ。どんなに魅音が喚こうが、私の学園行きが覆るはずもない。むしろ、そんなことをしては本家での魅音の立場が悪くなるだけだ。馬鹿なことは止そう。結局、私は閉じ込められる他ないのだ……。
 私はふぅ、っとため息をつき天井を見上げる。
「…………葛西、私に残された時間はあとどれくらい……?」
「……先日の話では、そこまで具体的な話はなかったそうです。しかし、学園行きが決定した以上、そう遠くない話だと思います」
「…………そっか……。また詳しいことが分かったら教えて…………」
「…………はい」
 …………そう遠くない話し、か……。これで、私は本当に故郷から追い出される……。
 小さい頃に、雛見沢に入ることを拒まれ、今日まで過ごした……。それでも鬼婆の目を盗んで時々は行っていたし、お姉とも興宮で会うことはできた。
 不自由ながらも、私は今の生活を楽しんできたのだ。でも、これからはそれすらもできなくなる……。私はその名の通り、寺に閉じ込められるのだ……。
 “詩音”という、私の名……。“詩”という綺麗な言葉が入っているこの名を、私は気に入っていた。例え、名付けられた本当の意味がそうではなかったとしても……。
 ……でも、今だけは、私のこの名前が悲しく思えた…………。





「それでは皆さん、今日もよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
 エンジェルモートで働くようになって、早1週間。私もだいぶ仕事に慣れてきた。時給の良さに惹かれ、気楽な気持ちで働きだしたのだが、実際に働いてみるとなかなか忙しい。
 こんな格好なので入って来る客は男ばかりだと思っていたのだが、意外にも女性客もそれなりに多かった。その理由はここのデザート。
 ケーキやパフェなど、女性が喜びそうなメニューが多いのだ。味も好評で、それを目当てに来る客も多い。他のメニューもなかなかの味らしく、興宮でもちょっとした有名店だ。店を開くからには半端な真似はできないという、叔父さんの意気込みが感じられる。
 でも、内容で勝っているんだから、こんな衣装で客寄せする必要はないのでは? と、このあいだ聞いたみたところ……。
『趣味だ!!!』とのことだった。まあ、もらえるもの貰っているのだから別にいいんだけど。でも、これからはあまり近づかないようにしよう。
 とまあ、エンジェルモートはなかなかの人気ぶりだった。仕事は忙しいが、やりがいはある。単なる小遣い稼ぎで始めたつもりだったが、今では私のライフワークの一部になっていた。
 お姉の方は相変わらず制服は着ずに、裏方で仕事をしている。素材は良いのだからホールに出れば良いと思うのだが、お姉の性格なら絶対に着ないだろうな。でも本人は楽しそうに仕事をしている。そんなわけで、私たちは互いに今の仕事を楽しんでいる。
 それに、バイトを通じで私たちのコミュニケーションも増えた。今まで別々に住んでいたのだが、共通の場所で仕事をするようになってからは、お姉との連絡も密になった。この点は、監督と叔父さんに感謝かな?
「では皆さん、今日も頑張ってください」
 監督の合図で、皆一斉に所定の場所に移動する。と思ったら、すぐさま監督が皆に声を掛けた。
「ああ、すいませんもう一点。来週のデザートフェスタですが、当日はできるだけ予定を空けておいてください。その日は忙しくなると思いますので、できるだけスタッフを集めたいと思います」
「「「は~い」」」
「ねえ、お姉。デザートフェスタって何ですか?」
「ん? デザートフェスタってのはね、その日一日店を貸し切りにして、招待客はデザート食べ放題なんだよ。まあ日頃の感謝を込めて、お客さんへのサービスデーってとこかな?」
「へえ、要するにエンジェルモートのお祭りってわけですか」
「まあ、そんなとこかな。うちもオープンして以来、だいぶ稼がせてもらっているからね。ちょっとしたファンサービスだよ」
「ふ~ん。でも、サービスデーに来るのが濃いめの客ばかりだとちょっと怖いですね」
「あはははは、こういう衣装だからね~。実際、それを目当てに来る客も多いしね。でも、当日はチケットでの完全予約制だから心配ないよ。女性客に優先的に配っているし。なんたって、デザートフェスタだからね! あとはスタッフの知り合いなんかにも配っているかな。当日は私の友達も呼ぶから、詩音にも紹介するよ。きっと盛り上がるよ~」
「お姉の友達ですか、楽しみです。どんな人たちなんですか?」
「みんな面白い連中ばかりだよ。特に、圭ちゃんは面白いね!」
「圭ちゃん?」
「ああ、詩音にはまだ言ってなかったね。最近雛見沢に引っ越して来た子だよ。前原圭一って言ってね―――」
 そう言って、お姉は“圭ちゃん”のことを楽しそうに話す。圭ちゃんのここが面白い、あれが面白いと話をするお姉の顔は、私が見た事のないくらい楽しそうなものだった。
 お姉の話を聞く限り、大好きなんだけど恋愛感情とまでは認識していない、青い恋といった感じだろうか。まあその辺りが奥手な魅音にはぴったりな関係だなと思った。
 それにしても魅音め……。気になる男子なんかいないとか言っていたくせに、私には隠していたな? 私に隠し事をするなんて100年早い。こんな面白そうな話を放っておく手はない。どこかで圭ちゃんとやらに接触して、ちょっかい出してやろうかな?

 午後になり昼食の時間がすぎると、ランチの際の慌ただしさも徐々になくなってきた。そろそろ休憩しようかな? そう思った時、私に声が掛かる。
「園崎さん、3番テーブルお願い」
「は~い」
 新しい客が店に入って来た。やれやれ、休憩する前にもう少し頑張るか。私は注文を取りにテーブルに向かう。
「いらっしゃいませ。ご注文は―――」
「み、魅音ッ!!?」
 …………え? お姉の名を聞いて私は驚いた。私は、声を上げた人物の顔をまじまじと見つめる。
「お前なんだよその格好~~~!!」
 私をお姉と間違えた目の前の男の子。ひょっとして彼が……。
「……あ、あはははは!! やっぱりおじさんにはこんな格好似合わないかな!? 圭ちゃんはどう思う?」
「ん? いや、意外に似合ってるぜ。普段そんな格好全然しないからさ、ちょっと驚いたけどよ。そういう格好もなかなか似合ってるな。しかし、魅音がそんな服着るとはなあ。レナが見たら『おっ持ち帰りぃ~~~!!!』ってことになるんじゃねえか? だはははははッ!!!」
 やっぱりそうだ。彼が“前原圭一”。お姉の大好きな圭ちゃんなのだ。まさかこんなに早く接触できるとは。ここはもう少しお姉のフリをしてみよう。
「あはははは!! そんなに褒めたって何も出ないよ? それよりどうしたの? 来るなら来るって言ってくれれば良かったのに」
「そりゃあ、どうせ来るならお前を驚かそうと思ってな。でも、こっちが驚いちまったぜ。まさか魅音が、こんな服着て働いていたなんてな」
「あんまり知られたくなかったんだけどね~。でも、ばれちゃしょうがないか。ところで他のみんなは?」
「今日は俺一人だ。こっそり魅音のバイトの様子を覗いてこようと思ってな!」
 それは好都合だ。よ~し、今日は圭ちゃんをだしに、お姉をからかってやろう。
「ふ~ん。まあせっかく来たんだし、ごちそうするよ。あ、でもちょっと待ってくれる? いくら圭ちゃんでも、この格好はちょっと恥ずかしいから着替えてくるね……?」
「ん? ……お、おう、行ってこいよ」
 くくくく……、上手くいった。後はお姉と入れ換わって…………。

「ん? どうしたの詩音、ニヤニヤして?」
「お姉ぇ~~~、お友達が来てますよ」
「え!! だ、誰ッ!!?」
「男の子でしたよ。見に行ったほうがいいんじゃないですか?」
「け、圭ちゃん!? う、嘘!! バイトに来るなんて思ってなかったから……。ど、どうしよう……。ねえ詩音、どんな顔で会えば良い!?」
「お姉、落ち着いてください。別に慌てることはないですよ。ただ、会う場所が学校か、バイト先かの違いなんですから。普段通り接すればいいんです。変に意識する必要なんてないですよ? いつものように接すれば、圭ちゃんも普段通りに返してくれますから」
「…………詩音」
「さあ、圭ちゃんが待ってますよ?」
「……うん、ありがとう詩音」
 ……ぶっ、くくくく……。ダメだ詩音。今は笑うな……、耐えるんだ。
「ごめん詩音、後よろしく! 今度デザートおごるから!」
「は~い☆」

「け、圭ちゃんお待たせ!! どうしたの、お店に来るなんて? おじさんびっくりしたよ!」
「おお、魅音! 早かったな、もう着替えたのか」
「うん! …………え? 着替え……、何?」
「いや~~~、それにしても驚いたぜ。まさか魅音があんなきわどい格好の服を着るなんてよ。一瞬、別人かと思っちまったぜ!」
「…………は? ……ちょ、圭ちゃん何言って……?」
「噂には聞いてたけどよ。実際見てみると、なかなかすげえ格好だよなあ。しかもまさか魅音が着ているなんてよ! いや~~、今日は来た甲斐があったぜ」
「…………ち、違……。私そんな格好してないって!! 圭ちゃんさっきから何言って……、あッ!! まさかッ!!!」
「何だよ、別に今さら隠さなくてもいいだろ? お前もけっこうノリノリで着てたじゃねえか」
「ち、違……!! あ、あのね……、圭ちゃん……。それは私じゃなくて、私の双子の妹が……」
「オイオイ魅音、その言い訳はちょっと苦しいぜ? そんなに隠さなくてもいいだろ。それに、俺はお前に感謝してるんだぜ。今日は魅音のおかげで新たな萌えの世界を開拓できた。メイド、スク水、セーラー服。世界には数多くの萌え要素が無数に存在する……。だがしかしッ!!! その中でも、この店の制服は新たな可能性を秘めている!! 古今東西、ありとあらゆる萌えが生み出され、あらゆるジャンルが開拓された! 古式ゆかしい正統派オールドメイドから、現代風ミニスカメイド! さらに、我が部だけでも猫耳、尻尾、首輪に制服ブルマと、そのバリエーションは無数に広がる一方、新たな分野を切り開くことは困難極まる! 現代日本ではもはや新たな萌えはないのだろうか……? そんな風に俺は考えていた……。だが!! 魅音のその姿を見ることで再び魂に火が付いた!! 一見するとその過激な衣装からいかがわしいお店をイメージさせるものの、黒を基調とした大人の魅力を感じさせるその色に、斬新な飾り付けを施し、さらに客に対するその丁寧なサービスは、正にご主人様に御奉仕するメイドの精神に通じる!! そう! この店のウェイトレスこそ、正に現代に誕生した新たなメイド!! 萌え業界における新たな可能性を生み出し、未開の地を切り開いたことにより、この俺に萌えにおけるフロンティアスピリッツを再び呼び覚ましてくれた!! さすがは監督! 一歩間違えれば警察に摘発されかねない危険を省みず、あえて興宮の街中で開業するという大胆さと、この制服を生み出す発想はあっぱれと言う他ないぜ!! 俺の固有結界も磨きがかかってきたと思っていたが、アンタのその発想と度胸にはまだまだ敵わねーな! だがしかし! いつかは俺も監督のメイド・イン・ヘヴンをも超える固有結界を発動できるような漢になってみせる!! 余談だが作者はアニメからひぐらしに入ったクチなのだが、エンジェルモートの制服を見た時は度胆を抜かれたぞ!! 何だこの制服は!!? これがファミレスの制服だとぉ!? メイド喫茶なんか目じゃねーーーぞ!!! 露出度だけならビキニの方が高いのに、何故こっちの方が絶大なインパクトを与えるのか!? それはつまり、秘すれば花という言葉があるように、全部をさらけ出すより隠すべきところは隠した方が、よりその価値が高まるということなのだ!! ニーソックスを見てみろ! 何も穿いていない生足よりニーソの方がより魅力を感じるだろう!! 仮に、エンジェルモートの制服からニーソをとってみろ! その魅力はきっと当社比50%減ぐらいになってしまうぞ! それは鷹野さんのナース服も然り!! ナース服だけでも大人の魅力満載なのに、黒のニーソなんか穿かれたその日にゃ、その魅力は当社比200%!! だが鷹野さんの真の魅力は制服じゃないぞ!! 彼女のその魅力は魅惑のセクシーボイス!! あの得も言われぬような声で囁かれたら、富竹さんじゃなくてもイチコロだ! やはり声というのはアニメやゲームを作る上では非常に重要になる! それを『何故日本には声専門の仕事があるのか? 吹き替えなら俳優でいいのではないか?』だと!!? このボケナスどもがぁああああぁああッ!!! 外国人は声優の重要さがわかっていない!! まるでわかっていない!! ドラマCDの保志さんの固有結界を聞いてみろッ!!! 原作では早すぎて全く読めないあの台詞を一言も噛まずに、竜騎士先生の気持ちを余すところなく代弁しているあの姿は正に圭一そのもの!! あの熱弁を俳優なんか務まると思っているのか!? いや、務まらない!!! 俺はあの固有結界にリスペクトを受けてこの台詞を書いている様なもんだぞ!!! 萌え業界において、声優とはなくてはならない存在!! それを、俳優で吹き替えろだと!? 貴様ァアアア!!! 歯ぁ喰いしばれ!! はぃいいい指導指導指導ォオオオ!!! それはともかく、皆殺し編のドラマCDが出ていた事には驚いたよね! だって罪滅し編から丸3年だぜ? もうとっくに企画打ち切りと思っていたぜ。しかも祭囃し編もすでに制作開始しているだって!? これはもう買うしかないだろーーー!!! そんなことはどうでもいい!! ともかく俺が言いたいのは、この俺の度胆を抜く程の制服を考案した監督のその発想に乾杯!! そしてなにより、今日俺にその素晴らしい衣装を見せてくれた魅音に感謝する! ありがとう魅音!! お前のおかげで俺は新たな境地に至ることができた!! 萌えは日本の文化だ芸術だ!! 萌えは無限!! 今なお開拓の余地はある!! 萌えは滅びぬ!! 何度でも甦る!! それが人類の夢だからだァアアアアアーーーーー!!!!!!」
「ちっっっがーーーーーーーーーう!!!!!! だからそれは私じゃない!!! 詩音!! どこ行ったーーーーーー!!!!!!」

「ぶっ!!! あひゃ……、ふひっ……、あははははははははははッ!!!!!!」



「詩音! アンタ人をおちょくるのも大概にしなよ!!」
「ごめんごめん。まあ、可愛い妹のほんの茶目っけじゃないですか。許してください、お姉☆」
「ふん! どうだか? ほんとに反省しているか、怪しいもんだね!」
 あの後、ひとしきり大笑いした私はお姉にしょっぴかれ、圭ちゃんの前に姿を現した。圭ちゃんはさすがに驚いていたが、私たちが双子だということを知って納得したようだった。
「全く! 詩音のせいで、とんだ誤解をされるところだったよ」
「まあまあ、いいじゃないですか。ちゃんと誤解は解けたわけですし。それに圭ちゃん、お姉と勘違いした私の姿を見て、似合ってるって言ってましたよ?」
「…………え?」
 私の話を聞いてお姉は頬を染める。本当に分かりやすい人だ。
「圭ちゃんも、まんざらでもなさそうな感じでしたよ~? 今度は本当に圭ちゃんの前で着てみたらどうですか?」
「そ、そんなの着れるわけないでしょ! 全く、すぐ人をからかって……」
 口ではそんなことを言ってるが、本当は気になるに違いない。もう少し自分に素直になれば良いものを……。
「それじゃあ詩音、私もう帰るから義郎叔父さんによろしく」
「はい、お疲れ様でした」
 自転車を漕いで店を離れて行くお姉に私は手を振る。それにしても今日は面白かった。多分、数年分はまとめて笑ったに違いない。お姉の友人にあんな面白い男の子がいたとは。しばらくは退屈せずに済みそうだ。
「さ、それじゃあ仕事に戻りますか」
 私はまだバイトがある。もう少し頑張るか。

 次第に夜も更けていった。この時間になると、さすがに客足もまばらになる。ラストオーダーまであと10分。そろそろ片付けの準備に入ろうかな? そう思った時、店内に客が入って来た。多分、本日最後の客だろう。私は注文を取りに席に向かう。
「いらっしゃいませ~、御注文は―――」
「……この、ス……、スウィート……なんとかというのを…………」
「葛西ッ!!?」
「し、詩音さん?」
 店に入って来た強面のその人物は、紛れもなく葛西だった。しかし、黒のスーツにサングラスという、何処からどう見ても本職であるその風貌は、あまりにファミレスの雰囲気とかけ離れている。
「……葛西、何で此処に?」
「……いえ、その……」
「……ははぁ、さてはデザートを食べに来たんですね? 大方、一人で食べるのが恥ずかしいからこんな遅い時間に来たんでしょう?」
「…………それは」
 実のところ、葛西は強面の見た目とは裏腹に、甘い物が大好きなのだ。しかし、本人は人目を気にしてそのことをあまりオープンにはしない。それで仕方無く、人の少ない時間を狙ってこっそりデザートを食べに来ているというわけだ。
「あはははは、隠さない隠さない! いいじゃないですか、ヤクザがスイーツ食べたって」
「…………は、はあ」
「で、どれでしたっけ? ご注文は?」
「……はい、このスイート―――」
「スイートデラックスいちごパフェですね? 畏まりました!!」
「……し、詩音さん。声が……」

「どうですか葛西、味の方は」
「はい、良くできていると思います」
「葛西がそう言うんなら、かなりおいしいってことですね。一口もらってもいいですか?」
「……………………」
「……冗談ですよ。そんなに睨まなくてもいいじゃないですか……」
 葛西は普段、私が問題を起こしても大抵の事は仕方無いと諦めるくせに、甘い物に関しては恐ろしい。以前、葛西がとっておいたプリンを私が無断で食べたら2・3日の間、ろくに口も聞いてくれなかった。あれだけ強面な顔のくせに、妙なところで女々しい奴だ。
「それにしても、詩音さんのバイト先がこの店とは驚きました。バイトを始めたとはお聞きしていましたが……」
「はい、バイト代も良いですからね。義郎叔父さんに口添えしてもらったんです。生活費ぐらいは自分で稼がなきゃ。お姉もここでバイトしているんですよ?」
「そうなんですか? お二人とも逞しいことです」
 そう言いながら、葛西はパフェをつついている。その姿が可笑しくて、私は苦笑する。本当にスイーツが似合わない男だ。しばらくその姿を眺めていたが、私は気になっていたことを葛西に聞いてみた。
「……ねえ、葛西。例の件、どうなったんですか……?」
「……………………」
 私の言わんとしたことを察した葛西はスプーンを置き、神妙な顔になる……。
「……現在は、正式な入学に関しての手続きが進められているようです。それに合わせて、入学前の学園見学があるそうです。日にちは今月の20日。前日には現地に入り、その日は泊まる予定なので、19日には興宮を出るつもりです」
「ええ!? 19日って、デザートフェスタ当日じゃないですか! 他の日にはならないんですか?」
「……そうは言われましても。先方の都合もありますし、それは難しいかと……」
「…………はあ、19日って何時に出るんです?」
「なにしろ遠方ですので……。遅くとも午後には出発しないと……」
「……午後までか。お姉には悪いけど、途中で抜けますか……」
 デザートフェスタに出られるのは長くても昼過ぎだろう。せっかくお姉の友達と盛り上がろうと思っていたのに、間の悪いことだ……。仕方がない、これもお役目ということか……。
「…………分かりました。私は昼過ぎにバイトを抜けるんで、葛西は直接お店に来てください」
「…………はい」
 私が学園に行くための準備は着々と進んでいる。今日のような馬鹿騒ぎも、一体あと何回できるのだろう……? 私に残された日々は、そう長くはなかった…………。





「えーーー、本日はデザートフェスタに来て頂き誠にありがとうございます。本日は日頃の感謝を込めまして、デザートは無料となります。どうぞ、心ゆくまでお楽しみください!」
 店長の挨拶が終わると、周囲から拍手が湧く。それと同時に、店内のあちこちからデザートの注文が始まる。スタッフは忙しそうに動き回り、次々にデザートを運んで行く。
 店内は満員御礼。デザートに舌鼓を打つ女性客、友達グループと遊びに来ている人たち、そして店員目当てのちょっと暑苦しい感じの客と、店内は大勢の人で賑わっていた。
「すごいですね、お姉。大盛況じゃないですか!」
「そりゃもちろん! 年に一度のイベントデーだからね。ここで一気にウチの店をアピールしないと」
「義郎叔父さんも粋なことをしますね。ところで、お姉の友達はまだ来ないんですか?」
「すぐ来るはずだよ。っと、噂をすれば……」
 お姉がそう言うと店の扉が開き、見覚えのある顔が見えた。
「おう魅音、来たぜ!」
「みんなよく来たね。今日はしっかり食べていってよ!」
「お、詩音! 久しぶりだな。こないだはすっかり騙されちまったぜ!」
「あはははは! どうでした、私たち姉妹の入れ換わりは? 完璧な演技だったでしょ?」
「ホント、魅音がもう一人出てきた時は、何事かと思っちまったぜ! お前ら似すぎだろ!」
「はぅ~~、ホントに魅ぃちゃんそっくり~」
「ホント、魅音さんそっくりですわね」
「魅ぃも、詩ぃも双子だから当然なのですよ」
「あうあうあう! 僕にはどっちがどっちか分からないのです!」
 次々と現れるお姉の友達。あっという間に沢山の人に囲まれて、私は面食らう。
「ほらほら、みんな。自己紹介はちゃんと後でするから、ちょっと移動しようか? ここにいると邪魔になっちゃうよ? ほら、あっちに席とっといたから」
「じゃあ、改めて自己紹介を。圭ちゃんはもう分かるね?」
「ま、一応挨拶しておくかな。前原圭一、雛見沢に引っ越してきたばかりだけど、立派な雛見沢村民のつもりだぜ。これからよろしくな」
「竜宮レナです。魅ぃちゃんから、お話は聞いてます。詩ぃちゃんって呼んでもいいかな? かな? はぅ~~、制服かぁいいよ~! おっ持ち帰りぃ~~!!」
「北条沙都子ですわ。人呼んで、トラップマスターの沙都子! トラップのことなら何でも答えてさしあげましてよ。をーーーっほっほっほ!!」
「古手梨花なのです。古手神社で巫女をやっていますです。詩ぃは覚えていますか? ボクたちは何年か前に法事の集まりで会ったのですよ。久しぶりなのです」
「あぅあぅ、古手羽入なのです。梨花の遠縁の親戚なのです。よろしくお願いしますなのです」
 次々と自己紹介するお姉の友人たち。なんというか……、すごく個性的な人たちばかりだ。
「はい、それじゃあトリはまかせたよ、詩音」
 お姉に促され、私は一歩前に出る。そして、軽く咳払いをし、自己紹介をする。
「はじめまして。魅音の双子の妹で、園崎詩音っていいます。詩を詠むの“詩”に“音”で“詩音”って書きます。これからよろしくお願いします」
 簡単な自己紹介が終わると、皆一斉に拍手をした。なんだか少し恥ずかしい気もするが、ちょっと嬉しい。ほんの少し、頬が熱くなるのを私は感じた。
「は~い、それじゃあ自己紹介が終わったところで早速デザートを―――、と、言いたいところだけど……、もちろんみんな分かっているね……?」
「へッ! 魅音から今日の話を聞いた時点で、予想はついていたぜ。ただでデザート食い放題なんて、そんなうまい話あるわけないよなあ?」
「分かっているじゃん、圭ちゃん。我が部活メンバーが、何のリスクを負わずに甘~いデザートを食べ放題なんて、そんなつまらないことをするわけにはいかないからねえ~」
「みぃ~、僕もそれぐらいの予想はついていましたです」
「をーーーっほっほっほ!! 望むところですわ! むしろ、何かしらリスクがあったほうが燃えるというもの! 私のトラップに皆さんを沈めてさしあげますわ!」
「あうあう! シュークリーム食べ放題の為なら何でもするのです!」
「で、でも、一体何をするのかな? かな?」
「くっくっく、せっかくのデザート食べ放題だからね。今日の勝負はズバリ、大食い対決!! 制限時間内にどれだけ多くのデザートを食べられるかを競うよ! 勝者は敗者を好きな格好にして、一日御奉仕してもらう! メイドでも、スク水でも、ブルマでも何で自由だよ! どう? 圭ちゃんの好きそうな罰ゲームでしょ?」
「くっくっく、魅音。今回の罰ゲーム、選考を間違えたな? 俺はご褒美のでかさに比例して実力を発揮する男だぜ? そんなご褒美をつけちまったら、俺の優勝は確定したようなもんだぜ!」
「くっくっく、随分と自信だねえ圭ちゃん。でも、そう簡単にはいかないと思うよ?」
「何?」
「はぅ~!! メイドさん沙都子ちゃんお持ち帰りぃーーー!!!」
「なるほど、ご褒美のでかさに実力が比例するのは俺だけじゃなかったな」
「そういうことですわ。今日は圭一さんをメイド姿に辱しめて、一日御奉仕してさしあげましてよ?」
「圭一、心配しなくても圭一のご褒美メイドはボクが手に入れてみせますのです。沙都子と一緒に、ご奉仕させてあげますのです。にぱ~☆」
「あうあう、僕が勝った暁にはみんなシュークリームの格好になってもらうのです」
 私を置いといて話はどんどん進んでいく。何やら単にデザートを食べるだけではなく、罰ゲーム付きの大食い勝負を始めるらしい。
「…………え~と……、お姉、これは?……」
「ん? いつものことだよ。部活じゃ、毎日こうやって遊んでいるんだよ。あ、ちなみに詩音も入っているから。くっくっく、初心者だからって手加減はなしだからね~」
「ええ!! 私もですか!?」
「当然だよ。まあこれは、新メンバーの通過儀礼みたいなものだからね。頑張ってよ、詩音」
 何だかよく分からないが、私もこのゲームに強制参加らしい。まあ、お姉のやっている部活が普通のはずがないだろう。こうなったらとことん付き合ってやる。勝負事なら私も負けるつもりはない。
「上等じゃないですか。私を入れた事を後悔させてあげますよ!」
「くっくっく、その意気や良し! それじゃあみんな、始め―――」



「ちょっと待ったぁあああああーーーーー!!!!」









「その勝負、この入江京介も混ぜさせていただきますよぉおお!! とお!!!」
「か、監督!? お店はいいんですか?」
「そんなことより、今はもっと大事なことがあるのです!! メイド沙都子ちゃんのご奉仕と聞き、この私が参加せずにいられましょうか!? メイド……。それは全人類にとってかけがえのない癒し……。彼女たちの姿、声、そしてご主人さまに対するご奉仕の精神。それは私たちにとって、あらゆる悩みや苦しみを消し去ってしまうかけがえのない存在。しかし!! そのメイドの中でも、沙都子ちゃんのメイド姿こそメイドの中のメイド!! クイーン・オブ・メイド!! その姿を想像するだけで、私の灰色の脳細胞は全ての悩みから解放され、体からはあらゆる疲れが吹き飛んでしまう!! ああ、メイド沙都子ちゃんに一日ご奉仕してもらえるのなら、私はこの先の人生全てを掛けてもいい!! この人生最大のチャンスを見逃すことなど、私にできるはずがない! 魅音さん、私も参加させていただきます!!」
「…………監督だけには絶対負けたくないですわね」
「くっくっく、面白くなってきたね。では、この勝負に監督の参加を許可する!! みんな、異論はないね?」
「へへッ、相手が誰であろうと、勝負から逃げる気はないぜ!!」
「あはははは! レナは良いよ~、沢山人がいたほうが楽しいからね」
「ふ、……ここは大人の本気というものを見せてあげましょう。そして!! 今日ここに、入江京介のためだけのハーレムを実現させるのですッ!!!」
「……異論がないと言えば嘘になりますけど、勝負から逃げるわけにはいきませんわね。こうなったら、監督も私の前に跪かせて差し上げましてよ!」
「なら、参加者はこれで全員だね。今日は参加者が多いから勝者は2人とするよ。それじゃあウェイトレスさん、どんどん運んじゃってくださ~い!」
 程なくして私たちの前に山の様なデザートが運ばれてくる。今まで見た事のないぐらい大量のデザートが目の前に広がり圧巻だ。しかし、この量での大食いとなるとちょっと気合を入れなければならない。例えゲームだろうと、お姉に負ける気などさらさらないのだ。
「それじゃあみんな、準備はいいね? レディー……、GO!!」
「うぉおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
 お姉の掛け声と共に、皆一斉にデザートに手を伸ばす。先手必勝! ここは最初に食べやすいデザートを確保しよう。あのヨーグルトパフェなんかいいだろう。それッ!!
 ……だが、当然、同じことはみんな考えているようだった。

 スパ、スパパ、スパパパパーン!!!

 誰もが同じ器に手を伸ばした時、白い稲妻が閃き、狙ったパフェが掻き消える。その後の虚空に、伸ばした全員の手がぶつかり合った。
「あはははは、みんな遅いよ~~。レナがお持ち帰っちゃった~、はぅ!」
 ……ちょ、何……? 今の早さ……? ボクサーも真っ青なぐらいの手の動きじゃない!?
 レナさんはまるでハエを捕えるカエルの舌のようにデザートの器を奪うと、まさにカエル並みの舌で、ベロリべロリと丸呑みにしてしまう!! 女の子らしい可愛い見た目とは裏腹に、勝利の為に貪欲にデザートを貪るその姿は正にカエル……。その、あまりのギャップに私は絶句する。
 これがお姉の部活メンバー…………。なるほど、一筋縄ではいかないというわけか。
「くぅ……、やはり初手ではレナに敵わないか……。って、魅音! 何でお前がレナのパフェを食ってんだ!!」
「何、圭ちゃん? 食べちゃダメなわけ? 言っとくけど、人の物を食べたらダメなんてルールはないよ。計算するのは自分が食べたデザートの量だからね。ねえ、レナ?」
「うん! どんどん食べてね、魅ぃちゃん!」
「……そうか、お前ら最初から組んでやがったな!?」
「くっくっく、気付くのが遅いよ圭ちゃん。ちゃんと言ったでしょ? 本日の勝者は2人だって」
「ちっ、相変わらず抜け目ねえな。だが、それでこそ魅音だ!! 俺も負けてられねえぜ! うぉおおおおーーーーー!!! 内角からえぐり込むように、食うべし、食うべし、食うべし!!」
 圭ちゃんは目の前にあるアイスを手に取ると一気に口に入れる。さすがは男の子。単純な食べる量なら、女の子の比ではない。しかし……。
「…………ぐっ、ぐぉおおおおーーーーー!!! 頭がキーンとしやがる!!」
 アイスを一気に食べたせいで、圭ちゃんは頭を抱えてのたうち回っている。どうやらこの前原という男、勢いは良いが後先のことはあまり考えていないようだ。よし、今のうちに私も…………、ん?
「あぅあぅあぅ、シュークリームおいしいのです~。いくらでも食べられるのです~☆」
 な、何あの子!? シュークリームをまるでプリンか何かのようにどんどん呑みこんでいる!!? 他のみんなはプリンやヨーグルトのような、食べやすいものを手に取っているのに、あの羽入って子だけは他のデザートには目もくれず、シュークリームだけをひたすら貪っている! あの子の横に山のように置かれているシュークリームが次々と消えていく。あんな小さな体の何処に大量のシュークリームが消えていくのか?
 どこか、ぽや~、っとした感じがあったので侮っていたが……、これはとんでもない伏兵だ。っていうか、シュークリームは飲み物じゃあないでしょう!!
「うぉおおお!!? さすが羽入! シュークリームに関しては、例えレナでも勝てないぜ。まずいな……、俺もピッチを上げないと……。とは言え、アイスの丸呑みはさすがにキツイぜ……。どうにか溶かして……、ん?」
「すみませんウェイトレスさん、注文をいいでしょうか。ホットコーヒーをお願いします。できれば器は鍋だと助かります」
「な、何ぃ!!?」
「甘いですよ、前原さん。熱で溶かすなんて手、私だって思いついていました。ああ、ウェイトレスさん、ありがとうございます。何なら、直接アイスにかけてください」
「く……、やるな監督。だったら俺も!!」
「な、何をするんですか前原さん!? それは私のアイスですよ!!」
「監督、さっきの魅音の話、聞いてなかったのか? 重要なのは自分が食べたデザートの分量。人の物を食べちゃいけないなんてルールはないんだぜ? つーわけで、アイスはもらった!!」
「ああ!? 私のアイスを!!!」
「ようし、ここで一気に逆転だ! うぉおおりゃぁあああーーーー!!!!」
 監督からアイスを奪った圭ちゃんは、一気にそれを飲み干す。これはまずい、このままでは圭ちゃんが単独トップだ。
「ごく、ごく、ごく、ご…………、ぶっ……、ぎゃぁああああああーーーーー!!!!!」
 なみなみと注がれたアイスを飲みほしていた圭ちゃんだったが、突然絶叫を上げてその場に倒れた。一体何事?
「をーーーっほっほっほ!! ざまぁないですわね、圭一さん! その程度の量で音をあげるなんて!」
「…………沙都子……、手前ぇ……、コーヒーにタバスコを…………」
「アイスをコーヒーで溶かすなんて、誰でも思いつきますわ。ですから、お手洗いに行くフリをして、厨房にあるコーヒーにタバスコを混ぜさせて頂きましたわ。トラップの基本は最後の最後に、ほんの少しのスパイスを! でも、スパイスの量がほんのちょっぴり多かったようですわね?」
「沙都子、てめ……、覚えてい…………、ガクッ…………」
「をーーーほっほっほっほ!!!」
 他人のデザートを奪ったり、コーヒーにタバスコを混ぜたり……。さすがはお姉の部活メンバー、やることがド汚い。ここまでされると、もはや呆れを通り越して尊敬にすら値する。
「をーーーほっほっほ!! 皆さんも、努々油断なさらないことですわね! えい!!」
「みぃ!?」
「梨花、言ってる傍から油断ですわよ。あなたのパフェは頂きましてよ? もぐもぐもぐ……、む!? グ、グフッ!!」
「みぃ~。沙都子、人の物を盗るのは良くないのです」
「…………り、梨花……。どうして自分のパフェにタバスコを……?」
「どうかしましたですか? タバスコパフェはおいしいのですよ。タバスコの適度な辛さがパフェの甘さに絶妙に合っていますのです。にぱ~☆」
 …………あり得ない。あり得ないでしょ!!? どうしたらパフェとタバスコが合うわけ!? しかし、彼女はいちごパフェにどばどばとタバスコをかけていく。
「にぱ~、いちごにタバスコがとても合っているのです」
 そう言いながら、彼女はタバスコいちごを口に放りこんでいく。……う、見ているだけで気分が…………。
「あぅあぅあぅーーー!!? 辛いのれすーーー! シュークリームが辛いのれすーーー!!」
「あら、ごめんなさい羽入。タバスコがそちらにも跳ねちゃったみたいね。くすくすくす」
 嘘だ。私は見ていた。古手神社の梨花ちゃまが、シュークリームの底からタバスコをどぼどぼと入れているのを……。
 可愛らしい見た目を装っているが、とんだ狸だ。この歳でこれだけキャラを使い分けられるとは……。末恐ろしい子だ。
「あはははは! みんなだらしないんだよ? だよ? 早く食べないと、レナがみんな、おっ持ち帰りぃ~、しちゃうよ?」
「くっ……、そうはいくか……。前原圭一! やすやすと勝利を譲る男じゃねえぜッ!!」
「そうですわね……。レナさんの一人勝ちを許すわけにはいきませんわ!」
「いいね~、みんな。それでこそ、我が部活メンバーだよ! まだ勝負は始まったばかり! もっとおじさんを楽しませてくれなきゃ!!」
「へッ、上等だ! その台詞、後悔させてやるぜ、魅音!! うおりゃぁああああーーーー!!!!!」



「だはははははッ!! 苦しゅうない、苦しゅうない、近う寄れ!!」
「はぅ~~!!! みんなかぁいいよーー!!」
「…………み~」
「はッううううぅううう!!! りりり梨ぃ花ちゃぁぁん!! お持ち帰りぃいいい!!!!」
「オイオイ、落ち着けよレナ。お持ち帰りは後からにして、ここはたっぷりご奉仕してもらおうぜ。だははははは!!」
「あーもぅ、とんだ災難だよー! この格好は圭ちゃんにやらせるつもりだったのになぁ!」
「はぅ~~!!! 魅ぃちゃんもかぁいいよーーー!!!」
「こーなりゃヤケだね。お客さま~、ウルトラレアチーズケーキはいかがでしょうか?」
「おお、沙都子! その格好なかなか似合うじゃねえか」
「……まぁ、罰ゲームがあるという時点で、多少心の準備がありましたのよ……」
「沙都子のメイドさんは、ある意味命に関わりますです」
「あぅあぅあぅ……。再びこの格好をするとは思わなかったのです……」
「はぅ~~!!! 沙都子ちゃんのメイドさんも、羽入ちゃんの巫女さんもかぁいいよーーぅ!! お持ち帰りぃいいい!」
 結局、大食い勝負は序盤から優勢を保ったレナさんと、復活した圭ちゃんの勝利に終わった。私も他のみんなに負けじと奮闘したが、いかんせん初めての参加でペースを掴めず勝利を逃してしまった……。
「ねーねー、梨花ちゃんウェイトレスさぁん、あ~~んやって~☆」
「あ~~~んですよ」
「沙都子~、俺にもひとつ頼むよ~~! あー、魅音には肩でも揉んでもらおっかなぁ~☆」
「あーん、もう悔しいですわねぇ! ほら! あーん、なさいませー!!」
「ちぇーー! 肩も揉みか~! おじさんの肩揉みは高くつくからねー!!」
 敗者は勝者のなすがまま……。かくいう私も、圭ちゃんの肩揉みをさせられていた……。右肩はお姉、左肩は私と、正に両手に花状態……。
「くぅ……。何で私がこんな目に……」
「……諦めな、詩音。ウチの部活では勝者は絶対なんだよ」
「ボクも沙都子も魅ぃも詩ぃも、勝者の2人の慰みものなのですよ。……みぃ」
「そういうことだ! 詩音も今日は一日、俺とレナにご奉仕してもらうからな。だははははは!!」
 ……おのれ、前原圭一。この借りはいつか返してやるからな……。
「……許しません。許しませんよ、前原さん……」
「ん~? 何か聞こえたような気がするが何かな~~?」
「……うら若き乙女達を召使いのようにはべらせ、あまつさえ私の沙都子ちゃんをメイド姿でご奉仕させるとは……」
「……私、監督のものになった覚えはありませんけど……」
「くっくっく……。だーーはっはっはっはッ!! 監督ぅ、今さら何を言っても負け犬の遠吠えだぜ!! 俺は勝った! 勝利した! 敗北のリスクを怖れず闘い抜いた!! その俺にとって、今のこの状況は、勝者に与えられた当然の権利なのだ!! 今さら監督が何を言おうが、俺の勝利は変わらないぜ? だははははは!!」
「……くぅ、悔しいですが前原さんの言う通りです。今の私には、あなたを非難する権利などありはしない。ならばせめて! 私がメイドさんとなり、沙都子ちゃんの代わりにご奉仕しましょう!! 沙都子ちゃん、あなた一人に恥は掻かせません!! いざ―――」

 スパ、スパパ、スパパパパーン!!!

「ぶぺ! ぷぎょ! ぷげら!?」

「あははははは!! 監督? 今日はレナと圭一君のご褒美なんだよ? だよ? レナ罰ゲームはい~らない☆」





 すごく楽しかった。お姉と会う事が多くなってからは、毎日が楽しかったけど、今日は特別楽しかった。お姉の友達と会って、ゲームをして、大はしゃぎをして……。
 みんな、すごくすごく個性的だった。こんな楽しい連中と、毎日部活ではしゃいでいるなんて、お姉がちょっぴり羨ましくなった。こんな時間がいつまでも続けばいいのに……。
 でも、楽しい時間は長くは続かない……。シンデレラの魔法は、もう解ける時間なのだ……。
「……お姉、ごめんなさい。今日はこれから大事な用事あるんです。申し訳ないですけど、今日はこれでお暇させて頂きます」
「ええ!? そうなの?」
「はい、どうしても外せない用事なので」
「…………そっかぁ。まぁ、それならしょうがないね」
「なんだよ詩音、もう帰っちまうのか?」
「……はぅ、詩ぃちゃん、もうお帰りなのかな? かな?」
「レナさんも、圭ちゃんもごめんなさいです。まだ罰ゲームの途中ですけど、どうしても行かなきゃならないんです」
「そっか……、なら仕方無いよな。でも、今度会った時はもう一度罰ゲームさせてやるからな!」
「はぅ~~! レナも詩ぃちゃんに、沢山ご奉仕してもらいたい~☆」
「あはははは、その時はお手柔らかに」
「残念ですわねぇ、せっかくお会いできましたのに」
「仕方がないのですよ。また今度一緒に遊ぶのです」
「あぅあぅ、今度は部活で一緒に遊びましょうなのです!」
「はい、いずれまた」
「残念ですね、詩音さん。せっかく盛り上がっていたところだったんですが」
「あはは、すいません監督。まぁ、後は私抜きで盛り上がってください」
「はい、それじゃあ次はまた、お店で会いましょう」
「はい。でも監督、こっちばかり手伝っていて、診療所は大丈夫なんですか? 本職も頑張らないと!」
「ははは、手厳しい。詩音さんの言う通りですね、医師の仕事の方も頑張ります」
「ええ、村人の健康をしっかり守ってくださいよ? それじゃあ、お先です」

 手早く着替えを済ませた私は、足早に店を出る。葛西と待ち合わせをした時間はすでに過ぎている。店の外に出ると、すでに黒塗りのベンツが待機していた。車に乗り込むと、私は葛西に声を掛ける。
「すみません葛西、お待たせしました」
「お疲れ様です、詩音さん」
「だいぶ待ちました?」
「いえ、それほどでも。まだ、急ぐほどではありませんから大丈夫です」
「良かった。ちょっと盛り上がっちゃって、抜けるタイミングが遅くなっちゃいました」
「そうですか。魅音さんのご友人方はどうでしたか?」
「みんな面白い人たちばかりでしたよ。どうせなら、もう少し早く会いたかったですね。あと一回、会えるかどうかかなぁ……」
 たった一度会っただけだったが、彼らとは良い友人になれそうな気がした。願わくば、今年の綿流しも、彼らと一緒に遊んでみたかった……。
 そんな私の心境を察してか、葛西は重苦しい表情をする。その葛西の表情を見て、私はわざと明るく振舞う。
「嫌ですね、そんな表情しないでくださいよ! 別に今生の別れってわけじゃないんですから。さあ、そんなことより出発出発! 急がないと夜中になっちゃいますよ?」
「……はい。では、行きましょう、詩音さん」
 ……そして、車は出発する。表向きは学校見学。でも、私にとっては自分を閉じ込める為の、収監手続き……。
 私が寺に閉じ込められる時は、刻一刻と迫っていた…………。





「やれやれ、遅れちゃったな」










「さぁて、どうしようかね? 詩音も帰っちゃったし、なんか罰ゲームって感じでもなくなっちゃったけど?」
「そうだなあ……。ゲームしようにも、メンバーが一人足りねーし……、っと、噂をすれば何とやらだ。オーイ!!」
「ごめんみんな、遅れて」
「遅ぇーーぞ、悟史!」
「あははは! ようやく来たね、悟史くん」
「ごめんごめん、バイトの時間が遅れちゃって」
「もう! どうしてこんな日にバイトなんか入れますの?」
「……むぅ、つい忘れてて……。これでも急いだんだよ?」
「詩音さんは用事があって、もう帰ってしまいましてよ!」
「え、そうなの!? 残念だなぁ……」
「あぅあぅ、ついさっきのことなのです」
「はぅ~、ホントに魅ぃちゃんそっくりだったよ! 魅ぃちゃんが2人いるみたいだったね」
「ホント、噂には聞いていましたけど、あんなにそっくりとは思いませんでしたわ」
「悟史は詩ぃに会えなくて、かわいそかわいそなのです」
「……むぅ、僕も会いたかったな……」
「あははは。まあ、しょうがないよ。悟史のうっかりは、今日に始まったことじゃないからね~」
「ひどいな、魅音。僕だって、そんなにしょっちゅう失敗しているわけじゃないんだよ?」
「自覚がないのはにぃにぃだけですわ。こないだだって、ブロッコリーとカリフラワーの違いが分からなくて悩んでいましたのよ? 私が一緒にいたから良かったものの……」
「…………沙都子。お前、ブロッコリーが何色か分かるか?」
「白ですわ!!」
「お前も間違えてんじゃねーか!!」
「ええ!? そ、そんなはずは……」
「沙都子。ブロフラワーが緑。カリッコリーが白なのです☆」
「え? ブロ……、何……?」
「あぅあぅ……。梨花、あまり沙都子をからかってはいけないのです……」
「ま、とにかくこれで部活メンバー全員が揃ったね。それじゃあ、仕切り直してみようか。改めてゲームを始めるよ!」
「おっしゃぁ! もう一度勝って、今日は一日豪遊してやるぜ!!」
「をーーーほっほっほ! そうはいきませんでしてよ! 今度こそ、圭一さんに一泡吹かせて見せますわ!」
「そうそう、今度こそ私の衣装を圭ちゃんに着させてみせるからね~、くっくっく!」
「はぅーー!!! メイドさんの悟史くんもお持ち帰りぃーーー!!!」
「あははは、お手柔らかに頼むよ」
「あぅあぅ、僕も負けないのです。僕が勝ったら、梨花にシュークリームを食べさせてもらうのです!」
「ならボクが勝ったら、羽入にはキムチパフェを食べてもらうのです。にぱ~☆」
「あぅあぅあぅ……。や、やっぱり他の人に食べさせてもらうのです……」
「よーし、それじゃあ勝負は10分後に開始するよ。それまで、各々自由とする!」

「ねえ、魅音」
「ん? どしたの、悟史?」
「魅音の妹さんって、どんな子?」
「んふふふ~、やっぱり気になる?」
「そりゃあね、今日は僕だけ会えなかったから……」
「ま、そんなに心配しなくてもすぐ会えるよ。また機会あれば、連れてくるから。なんなら、今度は部活に参加してもらおうかな!」
「それはいいね。みんなと一緒にゲームをすれば、きっと仲良くなれるよ」
「今度は詩音に、制服ブルマでも着てもらおうかな~? あはははは!」
「ははは、いきなりそれはキツイんじゃないかな? ねえ、やっぱり魅音にそっくりなの?」
「そりゃあ双子だからね。でも、性格はちょっと違うかな~? えーとね……」
「うん」










 鬱蒼とした森が延々と続く。一体どこまで同じ様な景色が続くのだろうか? いい加減うんざりだ。
「葛西~、いつになったら着くんですか~? 学園の私有地に入ってかなり経つんですけど?」
「もう少しだと思います。いましばらく我慢してください」
「……ったく。たかが一つの学校の敷地が、何でこんなに広いんですか?」
「なにしろ、完全に外部と隔絶されていますからね。生徒はおろか、職員も滅多に学園の外には出ないそうです。その為、生活に必要な物は全て学園敷地内の店で用意しているそうです。学園内に飲食店や衣料品店まであるそうですよ」
「うへぇ~……。外に出さないためにそこまでしますか……」
「ですが、それすらも一部。大部分は、こういった山林です。敷地面積は学校法人としては国内最大級だそうです」
「……なるほどね。万一脱走しても、足がなけりゃ森を出ることもできないってわけですか。よ~く、生徒のこと考えていることで。ありがたくて涙が出ます」
 よしんば脱走できても、この森を抜けることは不可能か……。冗談抜きで監獄だ。こんな所に何年も幽閉されると思うと気が滅入る…………。
「詩音さん、見えてきましたよ」
 葛西に言われ視線を前に向けると、ようやく学園の正門が見えてきた。
「……あれが、聖ルチーア学園か……」

「はじめまして。本学園でシスターを務めています、雨宮と申します。今日はよろしくお願いします」
 雨宮と名乗った女性は、頭から黒のヴェールを被った典型的な修道女の格好をしていた。その格好も、教員ではなくシスターと称するこの学園の体質も、私には受け入れ難いものだった。とはいえ、入学前から目をつけられるのも面倒だ。私は適当に猫かぶっておく。
「はじめまして、園崎詩音です。こちらこそ、よろしくお願いします」
 そう言って私は握手を交わし、形だけでも良い子ちゃんのフリをしておく。
「本日は遠いところからよくお越し下さいました。これから此処があなたの生活の場所となりますので、しっかり見ておいてくださいね」
「はい、お願いします」
「……それと、こちらの方は?」
「ああ、私の付き人みたいなものです。葛西」
「……葛西と申します。以後、お見知りおきを」
「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
 シスターは儀礼的に頭を下げるが、彼女が葛西を快く思っていないのは明らかだった。原則として、此処は男子禁制だ。彼女が葛西を警戒するのは当然と言えば当然だ。
「それでは園崎さん、こちらへ。これから学園を案内します」
「はい」
 彼女に促され、私は学園の正門を潜る。葛西は私に続くよう、門を潜ろうとする。しかし……。
「申し訳ありません。これより先は、男性の立ち入りをご遠慮させて頂きます」
 彼女は私と葛西の間に割って入る。なるほど、男が入れるのはここまで。此処から先が、本当の秘密の花園というわけだ。
「…………はぁ、しかし……」
 葛西はチラリとこちらを見て、私のことを気にする。
「葛西、いいですよ。また夕方に迎えに来てください」
「……分かりました。では、私はこれで」
 葛西はやや心配そうな表情をしていたが、私はそのまま彼を帰らせた。どのみち男子禁制なら、葛西が入れるわけがない。ここから先は、私の問題なのだ。
 やがて車は正門から走り去る……。シスターは車が見えなくなったのを確認すると、ようやく私の方を振り返った。
「それでは行きましょう、園崎さん」
 そして私は踏み入れる。この先何年と私を幽閉する、忌まわしき監獄へ……。



「こちらが中庭です。休み時間は自由に使って頂いて結構です。ここで食事をとったり、勉強をする生徒もいます」
 シスターは私を連れて、学園内の主だった場所を案内して回る。なるほど、お嬢様学校というだけあって綺麗な所だ。でも、どこか嘘のある美…………。
 私はチラリチラリと庭を眺めるが、どこもかしこも美しく整えられている。まるでどこかの庭園のようだ。此処が本当に庭園なら素直に綺麗だと感じるのだろうが、此処は学校なのだ。普通の学校なら雑草が生えていたり、多少草木が伸びていることなど当たり前なのだが此処ではそれがまるでない。不自然なまでに整えられているこの学園の庭は、私は好きになれなかった。
 多少雑草が生えていても、自由に草木が育つ興宮の学校の方が私は好きだ。
「それでは今から理事長にご挨拶に行きます。くれぐれも、失礼のないように」
 シスターに連れられ、私は校舎の中へと入って行く。校舎の奥へ進むと、やがて重厚な扉が見えてきた。
「失礼します」
 シスターは軽くノックをしてから声を掛けると、扉を開け中へと入る。
「理事長、来月から本学園へ通う事になった転入生を連れてまいりました」
「御苦労さまです。どうぞ、御掛けになって下さい」
「はい、失礼します」
 私は理事長に促され、ソファに腰を下ろす。向かいのソファに腰を下ろした理事長を私はさりげなく見る。初老を迎えた程度の目の前の女性は、他のシスターと同じく黒の修道服を身にまとっていた。格好は他のシスターと変わらなかったが、年相応の貫録のようなものは感じた。
「ようこそ、聖ルチーア学園へ。どうですか、本学園の印象は?」
「はい、とても綺麗な所ですね。今から入学するのが楽しみです」
 私は嘘八百を並べる。楽しみなわけがないが、とりあえず今はゴマをすっておけ。
「それは良かった。私たちも日々、この学園がより良いものになるよう心がけていますので。すでにご存じでしょうが、この学園は由緒正しき家柄の女子を、一人前の淑女に育てる為に設立されました。そもそも本学園の成り立ちは―――」

 理事長先生のありがたいお話は延々と続く。結局、私はあくびをかみ殺してその退屈な話を小一時間も聞かされた。
「ああ、もうこんな時間ですか。では、私の方からはこれで終わりです。後は雨宮シスターの指示に従って下さい」
「はい、ありがとうございました」
 ようやく、退屈な話から解放された私は席を立つ。やれやれ、しばらくこの人の顔は見たくないな。
 席を立ち、私は部屋から出ようとした。その時……。
 私がドアノブに手をかけようとした瞬間、扉が開いた。危うく私は、扉を開けた人物とぶつかりそうになった。
「……っと、すいません」
「………………いえ」
 彼女は短くそう言うと、私の横をすり抜ける。長い銀髪の、綺麗な娘だった。私は思わず彼女を振り返る。容姿だけではない。何処となく、歩く動作ひとつとっても、その所作には品が感じられた。なるほど、お嬢様学校というのは伊達ではないようだ……。

「…………理事長先生、今の方は……?」
「来月から学園に来ることになった転入生です。あなたと同じ学年ですから、色々と教えてあげて下さい。それで、今日はどういった用ですか、須磨寺さん?」
「はい、今年度の生徒会の活動報告書ができましたのでお持ちしました。まず始めに―――」



「むこうに見えるのが雑貨屋です。大概の生活用品は取り扱っています。それと、右手に見えるのが衣料品店です。休日は私服の着用が認められていますが、風紀を乱さないものに限ります」
 話には聞いていたが、この学園は呆れるぐらいに広い。何故学園の中に、美容院や飲食店まであるのだ? まるで小さな街のようだ。
 可愛い娘たちの為にわざわざ用意してあげたのか。あるいは、ここから逃げ出さないために餌を撒いたのか……? どちらにしても、此処を作った連中はまともな頭をしていない。是が非でも、娘をここに閉じ込めておきたいようだ。
「それと、この先に公園があります。良かったら見学を―――」
「すいません、雨宮シスター。少しよろしいですか?」
 ふいに、別のシスターが彼女に声をかけた。
「はい、どうしました?」
「お忙しいところ申し訳ありません。少し相談したいことがありまして……」
「分かりました。園崎さん、申し訳ありません。しばらくの間、一人で見学をしていてください。あまり遠くには行かないようお願いします」
「はい」
 そう言って、彼女はシスターと話しこむ。私はこれ幸いと、彼女から離れることにした。



「やれやれ、優等生のフリも疲れますね」
 私は近くのベンチに腰を下ろし、ようやく一息いれる。今日、此処に来てからは息がつまることばかりだ。一日中シスターに見張られ、聞きたくもない講釈を聞かされ、素の自分を出すこともできない。思わずため息が出てしまう。今日一日学園を見て回ったが、やはりこの学園の空気は私の肌には馴染まない。
 此処に来て、あちこちから聞こえてくる『御機嫌よう』という挨拶も、日課だとかいう朝夕のお祈りも、日曜礼拝だって、全部全部虫唾が走る。聖書の暗記だってやってられないし、慈愛の精神なんて言葉は聞いただけでもジンマシンが出る!
 つまるところ、斜に構えて生きる私にとって、ここの生活全てが気に入らないのだ。神への愛なんて知ったことか。私は私の生きたいように生きるんだ!
「…………と言ってもなぁ。本家に逆らったらどんな目に合うのやら…………」
 仮に鬼婆に向かって、『誰が学園なんか行くか! クソ婆ぁ!!』と、啖呵を切ったとして、私の命の保証はあるのだろうか?
 噂によると、園崎本家には、地下拷問室とかいうものがあるらしく、そこでは本家に仇なす者がそれは恐ろしい拷問を受けているとか……。
 まあ、命までは取られないと信じたいが、良くて爪剥ぎぐらいだろうか……? うぅ……、想像するだけで、怖ろしい……。
「…………はぁ。結局、私は寺に閉じ込められるしかないか…………」
 普段は鬼婆の下でしごかれているお姉に同情するが、さすがに今回ばかりはお姉が羨ましかった。お姉はこれからも、雛見沢で何一つ変わらず過ごしていけるんだろうなあ……。
「……あー、止め止め。こんなの私らしくないです」
 そう言って、私は思考を中断させる。ネガティブ思考なんて私の主義に反する。どんな時でも前向きに。それが私、園崎詩音なのだ!
「園崎さーん、お待たせしました」
 やがて遠くから、雨宮シスターが近づいて来た。いつまでもウジウジしていても仕方がない。さっさと見学を終えて帰るとしよう。そして私はベンチから立ちあがった。

「縁寿さま、今の子、転校生か何かですか?」
「え? ごめんなさいマモン、見てなかったわ」
「うー、見慣れない制服を着ていたよ。きっと新しく来る子だね」
「この学園も一部では有名みたいだから。入学させたい親もけっこういるんじゃない?」
「こんな学校に入れさせたいなんて、よっぽどな変わり者ですよ。まともな親だったら絶対入学なんてさせないです」
「本当ね、私も早くこんな所から出たいわ」
「うりゅ、元気出して縁寿。僕たちがいるよ!」
「そうだよ、縁寿。寂しかったら真里亞たちが話し相手になるよ。うーー!」
「マリア卿の言う通りです。縁寿さまには、いつでも私たちがついています」
「うん。ありがとう、みんな」
「それじゃあ縁寿さま、さっきの続きです。“強欲”の“く”!」
「“く”? それじゃあね……」



 夜の高速道路を車は走る。対向車線を走る車のヘッドライトが近づいては離れ、ものすごい勢いで光が流れていく。私はその光には目もくれず、遠くに輝く夜景の灯りを眺めていた……。その光景を美しいとも思わない。これから先のことを考えたくない私は、ただ茫然と、その光景を眺めていた。
 そんな私の様子を心配して、葛西が声を掛けてきた。
「……詩音さん、学園はどんな様子でしたか?」
「…………別に。予想通り、退屈そうな所でしたよ…………」
「……そうですか」
 それ以上、葛西が私に何かを尋ねることはなかった。それがいい。今の私は、誰かとお喋りを楽しむ気分にはなれなかった。
 ……どんな時でも前向きに。そんな言葉で誤魔化したところで、苦しい時は苦しいのだ……。
 どうして、私なのか……? 魅音は、毎日をあんなに楽しい仲間たちと過ごしているじゃないか。どうして同じ双子なのに、私たちにはこれほどの差があるのか……?
 多くは望まない。でも、せめて自分の生き方は自分で決める。それだけで良いのに……。
 私は、私らしく。ただ、それだけなのに……、……私には自分で未来を選択する権利さえないのだ……。
「…………あ~あ……、面白くないなぁ…………」
 せめて、今の自分の不満を声にしようと私はそう呟く。しかし、そんな私の呟きは、行き交う車の音にかき消されるのだった……。





「……え? バイトを辞めたい……?」
 学園から戻ってから数日後。私はエンジェルモートで監督に、今後のバイトのことについて相談することにした。私が話を切り出すと、監督は心底驚いた様な表情を見せた。
「はい、急な話で申し訳ないですけど」
「……それは……、かまいませんが……。……できれば、何故辞めたいのか、理由を聞かせてもらえないでしょうか?」
「はい、実は―――」
 そして、私はこれまでの経緯を監督に話す。私の話を聞いて、監督は驚いたようだったが、納得した様子だった。
「…………そうだったんですか。詩音さんと、魅音さんにそんな事情があったとは……」
「昔から決まっていた事だったんですけどね。最近になって、急に話が浮上しまして」
「……分かりました。そういう事情なら仕方ありませんね。しかし、残念です。詩音さんが来られてからは、店がとても明るくなったんですけどね。スタッフの皆さんも、寂しがられると思います」
「ホントにすみません。無理言って入れてもらったのに、こんなに早く辞めてしまうことになるなんて」
「いえ、そういう事情なら仕方ありません。でも、本当に驚きました。詩音さんが辞めるなんて、夢にも思っていなかったので。あとどのくらい、こちらにおられるんですか?」
「来週には学園に行く予定です。その間に、お世話になった人たちの挨拶回りに行って来ようかと思います」
「……そうですか、寂しくなりますね。できれば、ずっと此処で働いてもらいたかったんですが……」
「私も、こういう事情じゃなかったら続けたかったんですけどね。すみませんけど、後のことはよろしくお願いします」
「分かりました。皆さんには、おいおい伝えておきます」
「……それなんですけど、私が辞めることはギリギリまで伏せてもらえませんか?」
「……それは、かまいませんが?」
「実は、私が学園に行くことはお姉には伏せてあるんです……」
「……え? どうして……?」
「多分、お姉の性格なら私が学園に行くことを反対すると思うんです。でも、そうなるとまた話がややこしくなるので……。今騒いでも、お姉の立場が悪くなるだけなんで、ギリギリまで伏せておきたいんです」
「……分かりました。では、この事は学校のお友達にも伏せておきます」
「はい、お願いします」
「それにしても、詩音さんは本当にお姉さん思いなんですね。自分のことだけでも大変なのに、まだ魅音さんの事を気にかけているなんて」
「あははは、そんなんじゃないですよ。頼りない姉ですから、私がフォローしないとダメなんです。次期頭首なんだから、もっとしっかりしてほしいんですけどね」
「ははは、魅音さんが聞いたらまたケンカになりそうですね」
「平気、平気! お姉なんて、ケンカにだって負けた事ないんですよ?」
 そうして、私達は束の間、笑い合う。こんな生活もあとわずか。この先つらい生活が待っていたとしても、今だけは…………。

「それじゃあ監督、後のことはよろしくお願いします」
「はい、任せてください。でも、あと一度くらいは遊びに来てください。このままさようならじゃ、寂しいですから。お茶とケーキくらいならごちそうしますので」
「はい、その時はぜひ」
 そうして、私は店を離れる。短い間だったけど、此処でのバイトは楽しかったな……。いつの日か、学園から出られる日が来たらまた此処に来よう。そんな風に、感傷にひたっていると、ふいに声を掛けられた。
「あっるぇ~~? どうしたの、詩音。今日はバイトはないはずでしょ?」
「お姉こそ、どうしたんです? バイトがないのはお姉も同じのはずですよ」
「ちょっと興宮に用があってね。ついでに、お店に顔を出しに来たわけよ」
「ふ~ん、私はちょっと監督に用がありまして」
「え~、何々? とうとうセクハラを訴えに?」
「あははは、それはそれで面白いかもです。お姉はしないんですか?」
「も~、ホント訴えてやりたいよ。エンジェルモートの制服を着ろ着ろ、しつこいしさ~。でも、村に診療所を開いてもらった手前、そんなこと言えないしね。まあ、あんまりしつこいからこないだは殴っちゃったけど。あははは!」
「私なんか、初対面でいきなり殴っちゃいましたよ。私をお姉と勘違いして、いきなり制服を着させようとするもんですから」
「あははは、詩音もやるね~!」
 そんな風に、私はお姉とお喋りに興じる。ほんの数日ぶりなのだが、なんだかそれがとても懐かしい気がした。
「ところでお姉、今日はこれから予定あるんですか?」
「うんにゃ、何もないよ」
「なら、久しぶりに私の家に来ませんか? お茶ぐらいならごちそうしますよ」
「あ、行く行く! 久しぶりだな~、詩音のマンション行くの」



「どうぞ、楽にしてください」
「ありがとう。あ、何このソファ、買ったの?」
「ああ、それは葛西が知人から譲ってもらったそうです。それを私が貰ったわけです」
「葛西さんも世話好きだね~。詩音のお守なんて大変だろうに」
「余計なお世話ですぅ。それに、葛西の世話になるつもりはないです。此処の生活費だって自分で稼いでいるんですから。お姉、飲み物は何がいいですか?」
「何でもいいよ~」
「じゃあ、紅茶にしますね。ミルクと砂糖は入れますか?」
「うん、お願い」

 そうして、私たちは久しぶりに姉妹水入らずで、お喋りをする。学校のこと、バイトのことを話すうちに、話題は次第にこの間のデザートフェスタの話になった。
「詩音は残念だったね~。あの後、悟史が来てさらに盛り上がったのになあ」
「悟史?」
「ああ、詩音には話してなかったね。北条悟史。沙都子のお兄さんだよ。ほら、を~ほっほっほっ、って口調の小さい子がいたでしょ、あの子の兄」
「へぇ~。あの子、お兄さんがいたんですね」
「うん。でも、ちょっと、ぽや~っとした兄でね。いつも妹に尻を叩かれているよ。こないだも、デザートフェスタのことを忘れていて、バイトのシフトをそのままにしててね。それで、かなり遅れちゃんたんだよ。詩音がいなくなってすぐ後かな? 悟史が来たのは」
「そうだったんですか、残念です。もう少しいられたら、会えたんですけどね」
「まあ、しょうがないよ。また別の機会に紹介するから」
「……うん、そうですね」
 別の機会。それは、私にはもうないのだ。私は来週にも、学園に引っ越すことになっている……。
「デザートフェスタも盛り上がったけど、やっぱり最大のイベントは綿流しのお祭りかな! なんせ、今年から盛大にするからね。気合の入れ方が違うよ!」
「綿流しは、またみんなで遊ぶんですか?」
「もちろん、デザートフェスタ以上に盛り上げるつもり! 詩音もおいでよ、みんな喜ぶしさ」
 お姉は私を綿流しに誘う。でも、その頃には私はとっくにいなくなっている。ここは適当にはぐらかしておこう。
「そうですね、まあ都合がつけば」
「え~~!? どうにかして予定空けといてよ」
「……いや、でもまだ先のことなんで何とも……」
「大丈夫大丈夫! バイトのシフトならどうにかなるって。詩音も来なよ、絶対楽しいから」
「…………いや、でも……」
「詩音と夏祭りに行くなんて何年ぶりかなー? あ~、楽しみだなあ!」
 お姉は私が綿流しに行くのを前提に、勝手に話を進めている。私は綿流しに行きたくても行けないのだ……。
 知らぬ事とはいえ、お姉の能天気ぶりに私はイラつく。
「……お姉。さっきから勝手に話を進めていますけど、大事なことを忘れていませんか?」
「…………え?」
「私は鬼婆から、雛見沢にはみだりに入らないよう、釘を刺されているんですよ? お姉が私を綿流しに連れて行くのは勝手ですけど、その後鬼婆に目をつけられるのは私なんですから」
「………………あ」
 私にそう言われて、お姉は初めて気が付いたようだ。私の台詞に、お姉は言葉を失った……。
「…………そう……、だよね……。……詩音は……、そうだもんね。……ごめん」
 さっきの浮かれようは何処に行ったのやら。お姉は今にも泣き出しそうな顔をしている……。
「……ごめんね。詩音のことを考えもせず……、軽々しく来いだなんて……。迷惑だよね……」
「……………………」
「…………でも……、おかしいよね、こんなの…………。詩音ばっかり、こんな窮屈な思いをするなんて…………」
 そう言って、お姉は申し訳なさそうな顔をする…………。
 ……お姉は私と違って、一度落ち込むとそこからなかなか抜け出せない。私たち、姉妹のことになると特にだ。
 自分が次期頭首として優遇されていることに対し、負い目を感じている。だから、この手の話になると過敏に反応してしまうのだ。
「……ごめん、詩音……。…………今の話は忘れて」
 そう言い、お姉は席を立とうとする。…………やれやれ、少しきつく言いすぎたか……?
「……まあ、でも……」
「…………え?」
「お姉がそこまで言うのなら、行ってあげなくもないです。それに、鬼婆の言いなりになるのも癪ですしね。その代わり、怒られる時は一緒ですよ?」
「……詩音」
 そうして、私はにっこりと笑う。
「綿流し、楽しみですね」
 そう言い、私はお姉と約束をする。
「……うん。ありがとう、詩音」
 お姉は嬉しそうに……。そして、ちょっぴり恥ずかしそうに、静かに微笑んだ……。
 そんなお姉を見て、私は心の中で彼女に謝っておく……。

 ……ごめん、お姉。約束、守れそうにないや……。





 数日後、私は再びエンジェルモートに行った。監督に、最後の挨拶をするためだ。
「そうですか。もう、行ってしまわれるんですね。寂しい限りです……。今度戻って来るのは、いつ頃になりそうですか?」
「……さぁ、どうでしょうね? 幼稚園から大学までエレベーターですから。下手すりゃ、向こう何年は戻ってこれないかもです」
「……そうですか。出発は今日にも?」
「はい、今夜のうちに発とうと思います。今まで本当にお世話になりました」
「いえいえ。こちらこそ、大変お世話になりました。詩音さんが来てからは、売り上げもうなぎ昇りでしたから。本当にありがとうございました」
「入ってすぐ辞めちゃうのが心苦しいですけどね。後のことは、よろしくお願いします」
「はい、引き継ぎもしっかりしてもらったので大丈夫です。……魅音さんにも、後日お伝えしますので」
「はい、よろしくお願いします」
「…………本当に、話しておかなくてよろしいのですか?」
「……はい、お姉に話しても話がややこしくなりますから。監督の口から伝えてください」
「分かりました。詩音さんがそう言われるのなら。ああ、それとこれを……」
 監督は、そっと握った手を前に出す。私は右手を差し出し、それを受け取る。監督に手渡されたのは、小さなクマのキーホルダー。これは……?
「こないだは、渡すのをすっかり忘れていました。悟史くんから、詩音さんへプレゼントだそうです」
「……悟史くんって、確か沙都子っていう子のお兄さんでしたっけ?」
「はい。デザートフェスタの時に遅れてしまいまして、遅刻をしたお詫びだそうです。あの後、またみんなでゲームをして、その時の景品です」
「……へぇ」
 私はキーホルダーを手にとって、まじまじと見る。小さなクマのキーホルダー。こうして見ると、クマがにっこりと笑いなんだか可愛かった。
「あははは、可愛いらしいですね。確かに、男の子向きのアイテムじゃないかもです」
「貰ってあげてください。彼なりの心遣いです」
「はい。私はもう会えないけど、私の代わりにお礼を言ってもらえますか?」
「はい、喜んでいたと伝えておきます」
 悟史くんか。一度、会ってみたかったな……。クマのキーホルダーを眺めながら、私は少しの間、感傷に浸る。
 やがて、私は席を立つ。監督と会うのもこれで最後だ。
「短い間でしたけど、お世話になりました」
「こちらこそ。詩音さんも、どうかお元気で」
 そうして、私たちは握手を交わす。ちょっと変わった人だったけど、とても面白かった。願わくば、また会えることを……。
「詩音さん、また会いましょう」
 監督のその言葉を聞き、私は一瞬目を丸くした。
 ……いや、監督の言う通りだ。なにも、今生の別れじゃない。
 いつかまた、……例え、何年先だろうと、もう一度此処に来よう。私の居場所へ。
「はい、必ず」



「……あれ? 今の子、ひょっとして……」



「監督、こんにちは」
「おや、悟史くん。どうしたんですか、わざわざエンジェルモートに?」
「はい、野球の練習試合のことで相談したいことがありまして」
「ああ、そうでした。来週は興宮タイタンズとの試合がありましたね。すいません、忘れていました」
「いえ。それより監督、今表で女の子を見かけたんですけど、ひょっとして……」
「おや? ひょっとして、詩音さんに会ったんですか」
「ああ、やっぱり。今の子が魅音の妹さんなんですね。本当にそっくりなんだなあ」
「ええ、私も初めて会った時は魅音さんと間違えてしまいました。詩音さんとは、何かお話をしたんですか?」
「いえ、ちょっと見かけただけです。僕が見た時には、もう車に乗るところでした」
「ははは! 悟史くん、君はいつも間が悪いですね。もう少し早く来れば、ちゃんと会えたんですけどね。そうそう。こないだ頼まれていたキーホルダーですが、ちゃんと詩音さんに渡しておきました。喜んでいましたよ」
「そうですか、良かった。監督、ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
「次に会った時は、自分の口からお詫びを言っておきます。園崎詩音か……。今度はいつ会えるかな?」
「…………そうですね」
 今度2人が会う時……。それは、少なくとも数年は先だろう。ひょっとしたら、何年も先のことになるのかもしれない。
 ……でも、いつかきっと会える。彼女が帰って来るその日まで、この少年を見守っていよう……。
「悟史くん。今度彼女に会ったその時は、とびきりの笑顔で迎えてあげて下さい」
「え? はい!」





 大地を明々と照らしていた太陽は影を潜め、村には夕闇が迫っていた……。わずかに残った夕日も、やがては山陰に掛かり、…………消えていった……。
 夜の帳が下りはじめた村の中を、車は進んでいく……。私が学園に閉じ込められる刻は、否応なしに迫っていた……。
 私は車の中から村を眺める。つまらない村だ。
 物も、人もいやしない。同じ田舎でも、興宮の方がずっと栄えている。寒村と呼ぶに相応しい、小さな村……。
 だから清々した。鬼婆に村を追い出された時は。

 ―――出て行ってやる。こんなしけた村―――

 ずっとそう思っていた。……でも、今は……。
 何処を見ても、幼い頃に遊んだ記憶が甦ってくる……。
 小さい頃、園崎家の確執だとか、そんなの全然関係なかったあの頃……。
 いつもこの村で遊んでいた。親に怒られるまで、一日中村の中を遊び回った。
 あぜ道を走り、草をかき分け、川で泳いだ。
 虫取り、ままごと、かくれんぼ。
 いつだって、村は楽しいことに充ち溢れていた。
 ……でも、もう此処に……、私の居場所はない……。
 …………私の中に、久しく沸き上がる……、負の感情…………。
 今さらこんな事を考えたって、何の解決にもならないのは分かっている……。
 ……でも、一度噴き出た感情は、もうどうにもならなかった…………。



 …………魅音が閉じ込められれば良かったのに…………



 ……そうだ。元々魅音はお姉だけのものじゃなかったのに。私のものでもあったはず。
 …………いや……、……私のものだったのだ。
 ……あいつが、詩音が鯛のお刺身を食べてみたいってわがままを言い出したのが全ての始まり……。
 私が食べさせてもらえることになっていた。でも詩音があんまりにもずるいずるいと泣いて喚くから……、私がちょっとした姉気分で、妹のわがままに応えてあげようと思って……。いっつも魅音ばかりいい目を見てて……、詩音が可哀想だからって思って。それだけだったのに……。一夜だけ替ってあげたはずなのに……。
 ……夜が明けた時。世界が真っ逆さまになり、そしてそのまま今日まで、ひっくり返ったままになった。
 もう私たちは同じ双子ではなかった。鬼が入った方が魅音で、入っていない方が詩音。
 ………………なにそれ…………?
 …………その日から、私は園崎魅音ではなくなった…………。
 ……誰もが私を詩音と言う……。
 ……どうして? 私は魅音だよ……。園崎魅音。……どうしてみんな、私を詩音と言うの?
 ねえ、お母さん。待ってよ、待ってよ……! お母さん聞いてお母さん聞いて!! 私が魅音なの、私が魅音なのッ!!
 お母さんは私たちが見分けられるよね?! ならほら、私が魅音だって分かるでしょ?! だからみんなに私が魅音だって言って……!! 私が魅音なの、私が魅音なの!! 私を詩音と呼ばないで!! 私が魅音なの、私が魅音なのおおぉおおぉ!!!



 ……私が魅音なのに……。寺に閉じ込められるのは詩音なのに……。
 …………どうして、私が閉じ込められるの……? 閉じ込められるのは詩音でしょ……?
 …………私は違う、私は違う…………。





 私が園崎魅音なのッ!!!





「…………詩音さん、大丈夫ですか……?」
「………………大丈夫です」
 葛西の一言で、私が“詩音”だということを思い出す……。
 ……今の私は“園崎詩音”。どれだけ喚こうが、それが現実……。
 …………私はもう魅音ではない…………。
 ……そう、私は“園崎詩音”…………。





 やがて車は村の中を通り抜け、園崎本家へ辿り着く。本家の門前に車を止め、私たちは車を降りた。
「詩音さん、私はここまでです。御頭首より、これより先は詩音さんだけ来るようにと、仰せつかっています」
「……分かりました。葛西はここで待っていて下さい」
 これより先は、親族でも特に重要な人物しか来ていない。今日の親族会議はお姉には伏せられているため、親族でもごく一部の人間しか呼ばれていない。今頃お姉は、興宮の実家でのんびり過ごしていることだろう。
 此処で決まったことは後日、お姉に伝えられるだろう。そこで、お姉と鬼婆がどんなやりとりをするのかは知らないが、私には関係ない。鬼婆はせいぜいお姉を上手く言いくるめるだろう。どのみち、お姉は頭首の命令には逆らえない。どれほど鬼婆の代わりをしていても、所詮は代理。私の学園行きは覆らないのだ……。
「……今さらぐだぐだ言っても仕方無いですね」
 私は腹を決め、門を潜る。そして、屋敷の玄関まで来ると一言発する。
「園崎詩音、参りました」
 此処まで来て逃げる気は毛頭ない。でもせめて、隙を見て鬼婆に一発喰らわせてやる! 私はそう心に決める。しかし……
「……………………?」
 誰も出て来ない。本家ならお手伝いさんの1人や2人ぐらい常にいるのだが、どういうわけか今日に限って誰も出て来ない。今日はたまたまみんなお休みなのだろうか? こんな大事な日に……?
「…………ん?」
 遠くから聞こえてくる人の声。だが、様子がおかしい。声の感じからして、穏やかではなさそうだ。私は靴を脱ぎ、本家に上がり込んだ。
 奥の広間へ向かい、私は足を進める。近づくにつれ、騒ぎが大きく聞こえてきた。
 ドタバタとうるさく響く音。それと同じく、騒がしい人の声。どうやら、只事ではなさそうだ。……それに、時折聞こえるこの声は…………。
 私は広間の前に来ると、勢い良く襖を開いた。





「とり消して!! 詩音の学園行きをいますぐッ!!!」





 そこには、鬼婆に向かって日本刀を振り上げているお姉の姿があった。
「お姉!? 何やってんですかッ!!!」
 お姉を止めようと、羽交い締めにしている母さんに私は加わる。
「だぁほがッ!! 誰に向かって、んな口聞いとるつもりじゃ!!!」
 鬼婆の一喝に、何人かの親族が震えあがる。でも、お姉はそんな鬼婆に対して一歩も引かなかった。
「とり消してッ!! どうして詩音ばかり!!? もういいじゃない! 家を追われて、村を追われて、これ以上何をするっていうの!!?」
「止めな魅音ッ!!!」
「お姉、落ち着いてください!!」
 私と母さんと、2人掛かりでお姉を止める。私たちが止めねば、お姉は本当に鬼婆に斬りかかりそうな勢いだった。
「もういいじゃない!! もう充分でしょ!? どうして詩音ばっかり……!」
 ……そう言って、お姉はポロポロと涙を流す……。
「…………お姉」
 刀を振り上げ、ポロポロと涙を零すお姉。私は、そんなお姉を初めて見た……。
 ……やがて、お姉は力なく刀を放すと、その場に泣き崩れた……。
「…………お母さん。悪いけど、私とお姉、二人っきりにしてもらえますか……?」
「…………ああ」
 そう言って……、お母さんは親族と、鬼婆も一緒に連れて部屋を出ていった……。
 ……そして、部屋には私とお姉だけが残る。
「…………お姉、どうしてこんな馬鹿なことを……?」
 私はお姉に聞いてみる。すると、お姉は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げると、こう言った……。
「…………だって……、……だって約束したのに…………」
「…………え?」
「……綿流しのお祭り……、一緒に行こうって約束したのに……!!」



 ―――綿流し、楽しみですね―――



 ……あの日、お姉と交わした約束。一緒に、綿流しのお祭りに行くと言ったこと……。
 ……果たされることのない約束……。……でも、お姉はあの日から、ずっとその約束を大切にしてきたのだ…………。
 ……馬鹿な人だ……。私なんか、放っておけばいいのに…………。
 ……私なんかいなくても、お姉にはあんなにも楽しい仲間たちがいるじゃないか……。
 射的に型抜き、金魚すくい。楽しいことはいくらでもある。
 ……私のことなんか忘れて、仲間たちとお祭りを楽しめばいい……。
 ……私は、お姉のことなんかまるで考えていなかったのに……。



 ―――魅音が閉じ込められれば良かったのに―――



 …………そんなことを考えていた…………。
 ……それなのに、鬼婆に盾突くなんて…………。
 …………本当に馬鹿…………。

「…………お姉」
 ……私はそっと、彼女を抱きしめる。私の腕の中で、お姉は小さく震えていた……。
「……っく、……えっく……、……楽しみにしていたのに……。一緒に、お祭りに行けるの、楽しみにしていたのに……」
「……うん、一緒に行きたかったですね……」
「…………また一緒に……、お祭り回れると思っていたのに……」
「……うん、覚えています……」
 ……それは、私たちが本当に小さい頃。私たち姉妹が、分け隔てなく育てられていた頃……。夏祭りに、家族一緒に行った思い出……。
 ……そこには私がいて、詩音がいて、お母さんがいて、お父さんがいて……。……ああ、あの頃は、鬼婆も一緒にいたっけ……? ……とても、……とても懐かしい…………。
 ……2人で一緒に金魚すくいをした……。私はそつなく金魚をすくっていくのだけれど、詩音はひとつもとれなくて……。泣きだしそうな詩音に、私は自分の金魚を分けてあげたのだ……。最初は少し遠慮していたけれど、屋台のおじさんに金魚を2つの袋に分けてもらい、それを詩音にあげると、嬉しそうに笑っていた……。



 ―――これで詩音も同じだよ―――

 ―――うん。ありがとう、お姉―――



「……っく……、……もう一度……、一緒に金魚すくいしたかった…………」
「……うん、また一緒にしたかったね……」
「……ひっく……、……一緒に射的もしたかったのに…………」
「……覚えているよ。2人でたくさん景品をとったね……」
「……もう一度、一緒にわたあめ食べたかった……!」
「……食べられるよ……。……いつかきっと…………」





「……つらいね。お役目とはいえ、鬼婆さまもこんなことしたかないだろうに……」
「……あほぅ……。儂が、んなこと思うか…………」
「何言ってるのさ、本当は鬼婆さまだってつらいくせに……」
「…………ふん」
「……ねえ、鬼婆さま。もうこんなことは、あの子たちで終わりにしようじゃないか……」
「……………………」
「私たちは御三家の事実上の筆頭として、この村を支えてきた。その威厳を示すため、御三家の戒律を誰よりも重んじてきた。……でもね、もういいじゃないか……。もうじき21世紀を迎えようとするこの世の中に、いつまでも昔の戒律に縛られることもないじゃないか……。これからの世の中は、あの子たちが作っていくんだ。それを、私たちが過去に縛られて、あの子たちの未来を奪ってどうするのさ? もう、これっきりにしようじゃないか…………」
「…………んなこと儂には関係ないんね…………」
「…………そうかい……」
「……先のことは、新しい頭首に任せればいい……。儂はよう面倒みんわ……」
「……そうだね。あの子が戻ってくる頃までには、新しい頭首さまに託そうじゃないか……」
「……儂は疲れた。老体に、頭首の肩書は堪えるわ……」
「新しい頭首に引き継いでもらえば、婆さまもようやくお役御免だね」
「……ふん、本当なら、とっくにお前がなっておったろうに……」
「ははは、それは悪いことをしたねえ。まあ、いいじゃないか。あと数年頑張れば、魅音がきっちり引き継いでくれるよ」
「だぁほが。教えんといかんことは山ほどある。お前も手伝わんか」
「分かっているさ。私もそのぐらいはしないとね」





 魅音は、私の腕の中でまだ泣いていた。時折嗚咽を漏らしながら、小さく肩を震わすお姉を、私は優しく抱きしめる……。
「…………私たちはどうして魅音と詩音なの……? どうして同じひとりであってはいけないの……?」
「やめなよ。……私たちはもう何度もそれを自問してきたよ。……でも、答えなんか出ない。……私とあなたは詩音と魅音。……それが現実」
「……私ね……、自分が魅音でも詩音でも、……どっちでもいいの……。私たちは私たち、公平な関係でいたいのに……」
「…………仕方がないよ。魅音の背中には鬼が宿っている。……頭首を継ぐ定めが宿っている。……それは仕方がない」
「私いやだ! ……鬼なんかいらない、鬼なんかいらない! 私は鬼じゃない、鬼じゃない! ……詩音と同じ、人間がいい……!」
 魅音は鬼で、……詩音は人間。
 ……同じ双子のはずなのに、……私たちは隔てられている。でも…………。
「……魅音。確かに私たちは隔てられている。でも、それは他人が決めたこと……。私たちが決めたことじゃない。私たちの間には、本当は何の隔たりもないんだよ……?」
「…………でも」
「だから、どちらが魅音とか、詩音とか、そんなことは小さいことなの……。私たちは私たち。同じ双子なんだよ……? だから、私は私。私として生きるだけ……」
「…………詩音」
 そして、私たちは互いの額を合わせる……。
「がんばれ魅音。私も詩音をがんばる」
「…………詩音……。……詩音ッ……!」
 この子は魅音。私は詩音。
 この子は園崎家次期頭首で、私は明日はどこ吹く風の自由人。
 それは差別じゃなく、個性だ。
 もう互いに、相手のことを変に気にすることはやめよう。
 互いに自分の個性で、肩の力を抜いて生きようじゃないか……。
































 そう、これは私の個性だ。誰にも与えられていない、私だけのもの。


「何すんのよアンタ! こんな事してタダで済むと思ってんの!?」


 誰にも私の生き方を縛ることなんかできない。


「どうやら、あなた転入生みたいね。どういう経緯でこの学園に来られたのかは知らないけど、此処ではあまり目立たないほうが賢明だと思うけど?」


 魅音だとか、詩音だとか、そんなことは関係ない。


「あなたのこと、覚えておくわ。ようこそ、聖ルチーア学園へ。歓迎するわ」


 私は私だ。私として生きる。


「私、右代宮縁寿って言います。あなたは?」


 そう、私は―――





「詩音。園崎詩音。今日からこの学園に転入することになりました。よろしくです☆」















ひぐらしのく頃に








































「お母さーん、婆っちゃー、詩音から手紙が来たよーーー!!」
「ようやく来たかい。元気でやっているかね、あの子は?」
「詩音のことだし、大丈夫なんじゃない? ほら、婆っちゃもこっち来なよ」
「すったらん、あんのじゃじゃ馬のことなんか興味ないんね」
「な~に言ってんの、本当は気になるくせに。ほらほら」
「……ふん、そこまで言うなら聞いてやってもいいんね」
「はいはい、じゃあ読むよ~」





 拝啓

 こちらはすっかり暖かくなりました。雛見沢もそろそろ暖かくなる頃かな?
 お姉は元気にしていますか? 私は元気です。
 最近、ようやくこちらの生活にも慣れてきました。相変わらず、退屈な所だけど良いことはありました。
 早速、学園で友達ができました。名前は、右代宮縁寿。すごい名前でしょ?
 転校初日にちょっとした縁で、それから仲良くしています。今では私のルームメイト。
 本当は違う部屋だったんですけど、ちょっとしたコネで替えてもらったというか……。あはは、まあその辺の話はおいおい。
 縁寿とはそれ以来、良くしてもらっています。学園のことについて何も知らない私に、色々と教えてくれます。
 性格はお姉と違って、クールで寡黙な感じ。お姉とは似ても似つかないんだけど、ちょっと頼りなくて、私がサポートしなくちゃいけないところが、少しだけお姉と似ているかもです。
 お互い、頼り頼られ、どうにか学園では無事に過ごしています。
 でも、中にはムカツク奴もいます。こんな性格ですから、転校初日にいきなりそいつとケンカしちゃいました。
 それ以来、そいつには目を付けられているんですけど、何とそいつ、縁寿のいとこなんだそうです。
 いとこなのに、2人の仲は最悪。どうやら複雑な人間関係があるみたいです。詳しいことは知らないけど、私はこれからも縁寿の味方です。友達は大切にしないとね。
 順風満帆ってわけじゃないけど、とりあえずなんとかやっています。まだまだ覚えないといけないことは多いけど、少しずつ慣れていきたいです。これから先も、縁寿と一緒にがんばっていこうと思います。もう少し落ち着いたら、また改めて手紙を書きます。
 それまで、お姉も風邪などひかれませんようお気をつけ下さい。それでは。

                               かしこ






「そっか……。詩音、ちゃんと友達できたんだね。良かった」
「あの子のことだから、なんでもかんでも反発して一人にならないか心配だったけど、大丈夫そうだね」
「うん、仲の良いルームメイトがいて安心した。婆っちゃも、これで安心だね」
「……ま、本家に恥だけかかさんかったらええわ」
「あははは! 婆っちゃも素直じゃないね~」

 詩音は友達ができたか……。良かった、ずっと心配だった。詩音が学園でうまくやっていけるかどうか。
 詩音は人に合わせるのが好きではない。人と対立することになっても、自分が正しいと思った意見は押し通す。もちろん、それがいけないわけじゃないけど、多分学園では詩音のような人間は疎まれる……。だから、今までずっと心配だったけど、手紙を読んで安心した。
 仲の良いルームメイトがいれば、きっとうまくやっていけるだろう。詩音は私よりずっと強い人だから、友達さえいれば、あの中でもやっていける。
 ……がんばれ詩音。私も魅音をがんばる。

 私は縁側から空を見上げる。空はどこまで晴れ渡り、青く青く、澄み渡っていた。
 今日は暑くなりそうだ。きっと、今年の夏も暑くなる。そうしたら綿流しだ。
 詩音が帰って来るまでに、どこの夏祭りにも負けないような、立派な祭りにしてみせる。
 そうしたら、きっと詩音と一緒に綿流しに行くんだ……。
 詩音だけじゃない、みんな一緒に。
 一緒に金魚すくいをして、射的をして。それから、屋台の食べ物を食べ歩こう。
 わたあめ、たこ焼き、かき氷。食べきれないくらい、たくさん買って……。
 それから、奉納演舞を見て、綿流しをして……。
 きっと楽しい。詩音と、みんなと一緒にお祭りに行って、一晩中遊び回ろう。
 だから、それに見合うぐらい、立派なお祭りにしてみせよう。
 夏はすぐにやって来る。今年の綿流しは、きっと盛り上がる。盛大に祭りを開こう。



 ……そう。ひぐらしのなく頃に。










2011.07.03 Sun l うみねこ l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

詩音の元気は葛藤の末のものだったのですね
第11話   
懐かしい物語の香りがしました。後半部の力強い文章に同化していきました。
魅音は鬼を継ぐ者、詩音は寺に閉じ込められる存在・・・

何気ない風景の感じ方に本質が宿っているのを探すことは楽しいですね。
学校の美しさの記述。普通の学校で雑草が生えていたり、多少草木が伸びていることなど当たり前・・・「「「多少雑草が生えていても、自由に草木が育つ興宮の学校の方が好きだ」」」
こんな風に日常の風景を光る目で捉えていきたいと思いました。「「詩」」音のようにね。

そして待ってました!寺に閉じ込められようとする詩音の生の呟き。
詩音が元気に生きている過程の心のドラマがおもしろかったです。

1.言葉で前向きさを装うとする詩音

「あー止め止め、こんなの私らしくないです。」・・・ネガティブ思考なんて私の主義に反する。どんな時でも前向きに。それが私、園崎詩音なのだ! ・・・・・・


2.憂いが止まらない詩音

そんな言葉で誤魔化したところで、苦しい時は苦しいのだ・・・・・・。


3.自分を取り戻そうとする詩音

多くは望まない。せめて自分の生き方は自分で生きる・・・私は、私らしく。ただそれだけなのに・・・・・・私たちは隔てられている。でもそれは他人が決めたこと・・・私たちが決めたことじゃない。私たちの間には本当はなんの隔たりもないんだよ・・・・・・?
だから、私は私。私として生きるだけ・・・・・・

私は明日はどこ吹く風の自由人・・・いいね。もう互いに相手のことを変に気にするのはやめよう。互いに自分の個性で肩の力を抜いて生きようじゃないか・・・。




自己紹介寸前の内言と会話とのハーモニーがおもしろかった。
そうこれは私の個性だ。誰にも与えられていない、私だけのもの。
誰にも私の生き方を縛ることなんかできない。
魅音だとか、詩音だとか、そんなことは関係ない。

4.自分を取り戻した詩音

私は私だ。私として生きる。そう私はーーー 園崎詩音です☆

こうやって、マイナス思考をはねのけているのか・・・詩音はプラスの塊ではない。そう見えるだけ。詩音式のでっかい生き方がかっこいいと思った。


2013.02.03 Sun l 乗組員z. URL l 編集

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