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六軒島の花嫁 第五話が完成しました。
今回自分が担当しました。それではどうぞ。








 カチ、カチ、カチ。

 アンティークと呼べそうな、大きな古時計が秒針を刻む。普段は気にしないような、そんな小さな音も、朝の静寂の中でははっきりと聞き取ることができた。
「…………ん」
 夏妃はその音を聞き目を覚ました。いつの間にか眠っていたらしい。とても眠れそうな気分ではなかったが、昨日の疲労は思ったよりも大きかったらしく、自分でも気付かないうちに眠っていたようだ。
 体をベッドから起こすと、カーテンの隙間から朝の木漏れ日が彼女の顔を照らしていた。だが、それを心地良いとは思わない。昨日嫁いできたばかりで、何もかも初めてであるこの家では、そんな気分にもなれるわけもなかった。しかし、夏妃の胸中にはそれとは別のわだかまりがあった。彼女は昨夜のことを思い出す。

 ……昨日の夜……、夫婦として初めて夜を共にしたあの時、夏妃は蔵臼を拒絶した……。

 初めて彼に会った時の印象は夏妃にとって好ましいものではなかった。傲慢で、利己的。それが、夏妃の蔵臼に対する率直な印象だった。
 しかし、金蔵の部屋を出た時に掛けてもらった言葉は、彼の本心だったと思った。そして、蔵臼が金蔵の部屋に向けるその眼差しを見た時、彼女は思った……。

 ……彼もまた、この家に囚われている人間なのだと……。

 そう思った時、彼女は彼を理解しようと考えた。例え、自ら望んだ結婚ではなくとも、人生の伴侶として、彼を支えて生きて行こうと。



 だが…………。











『…………また、冬花に叱られてしまうな。
―――女房のエスコートもまともにできないようでは、ろくな男になれない―――
………か。ははっ、情けない………』






 その言葉を聞いた瞬間、夏妃が蔵臼に抱いていた想いは霧散した……。





 ―――私に掛けてくれた言葉は、本心ではなかったのですか?―――












六軒島の花嫁 

第五話「それぞれの想い」










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2010.01.17 Sun l うみねこ l コメント (0) トラックバック (0) l top
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