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「誰か私を、………………………死なせて下さい」





 その一言を口にし、周りを見渡す。
 唖然とした子。
 何を言ってるのこの子、という顔の子。
 そして、やや遅れてから、この子大丈夫~?という顔の子が増えていく。
 ひそひそ。ざわざわ。
 そして、くすくす。
 ………殺せと命じて、白昼夢の友人たちには出来なかった。
 ならばと。
 現実のニンゲンたちに殺せと頼んだが、……やはり彼女たちにも出来ない。
 ……ということはつまり、白昼夢も現実も、どちらも同じ。
 この世界も含めて、全てが全てが。
 ……白昼夢だということじゃないのか。
 なら、それでいいじゃないか。
 だって私は、……家族を全て失ったあの日に、もう死んでいるのだから。
 ……その後に続く全ての日々が、……死に損なった私の、走馬灯のような妄想だったのだ。
 それを理解したら、………周りの全ての景色が、わずかに歪み始めた気がした。
 ………あぁ。
 …やっと私は、………覚めるんだな。
 …この白昼夢の世界から、解放されるんだな。
 ふうっと、気が遠のいていく気がする。
 ……それでいい。
 どこまでもどこまでも遠のいて、………私を家族のところまで連れて行って……。
 だから、歪んで色褪せた世界で何が起こっていても、まったく気にならなかった。



「やだあーー!右代宮さん、頭大丈夫?」
「前から変わった子と思っていたけど、とうとうおかしくなっちゃった?」
「きゃははは、ちょっとみんな近づかないほうがいいよ、変なのが移っちゃう」

 彼女たちは相変わらず、口汚く私を罵る言葉を吐き出していた。

 けれど、そんなことはもう私には関係ない。

 どうせこの世界は、私にとって白昼夢。

 ならば、心を凍らせて何も感じなくなればいい。

 そうすればもう、怒りも…、悲しみも…、何も感じなくて済むのだから。

 どうせこの世界には喜びも、楽しいことも、ありはしないもの。

 心なんかあるのだから、こんなに辛く感じるんだ。

 そんなものは捨ててしまえ。

 そして、早く私を解放しよう。

 この白昼夢から目を覚まして、私を家族のところに連れて行こう。



「ちょっとおぉーー、右代宮さん聞いてるの?ホントに頭大丈夫?」










きゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは












 私を嘲笑する声は決して止みはしない。

 その声を聞きまいと、私の心は深い深い闇の中へと沈んでいった………。










 その時、教室の扉が開かれた。
 おかしな騒ぎになっているのを、見回りの教師が見つけたのかもしれない。
 でも、私にとってはどうでもいい。
 仮に、この場で教師が私を庇ったところで、明日から続く私の毎日は何も変わりはしないのだから。
 私が自ら目を覚まさない限り、この白昼夢はずっと続い―――――。




















「痛!な、何するの!離して!!離してよ!!」
 突如、私を取り囲んでいた連中の一人が声を上げた。
 その声を聞いて、ようやく私の意識は現実に引き戻された。
 そこでようやく気付いた。教室に入ってきたのは教師ではなかった。
 年の頃は、私と同じぐらいの女の子。綺麗なストレートの髪は長く伸び、腰の辺りまで届いていた。
 その目は鋭く辺りを見回し、毅然としたその態度はこの場の異様な雰囲気をまるで寄せ付けなかった。
 そしてあろうことか、彼女はリーダー格の女生徒の髪をその拳で引っ張りあげていた。





 私がそうされたように。





 その姿は聖ルチーア学園の制服。この学園の生徒に間違いない。
 けれども、その顔に見覚えがない。極めて閉鎖的なこの学園では、ここでの生活が全てだ。
だから、どの生徒も顔ぐらいはすぐに覚えてしまう。けれど、彼女の顔は全く見覚えがなかった。
 何より、この学園で私の味方をする生徒など一人もいないはず。彼女は………一体?


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2009.08.05 Wed l うみねこ l コメント (6) トラックバック (0) l top
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